問題提起篇

1st

「香織!起きなさい!寝坊しちゃわよ!」

「いつも遅刻ギリギリの叶姉には言われたくありませんわ」

「あぁん?どういう意味かなぁ?言ってみ香織」

今こうして私を起こしてくれましたのは私のお姉ちゃんの親友の摂津叶。

私は叶姉と呼んでおります。

私にとって叶姉は第二のお姉ちゃんなんですの。

何故今一緒にいるのかと疑問に思う人もいるでしょうから簡単に説明するとお母さんがお仕事で忙しいから叶姉の家に預けられているのですわ。

「そんなことで腹を立てるなんて胸と身長は成長しても中身は成長してない証ですわよ?叶姉」

「小学五年生の小娘が何抜かしてんだか」

「その辺はスルースキル高いのですね」

こんな風に軽口を叩けるくらい仲が良いのですの。


「そろそろ支度しねぇと学校送るぞ~」

時計で時間を確認すると、七時過ぎ。

あらやだ、本当に遅れてしまいますわ。

慌ててタンスから服を取り出して着替え、おじさん(叶姉の叔父)が用意した朝食のパンを口に入れる。

私が朝食を食べている間に叶姉が髪を櫛でとかしてくれます。

行方不明になる前にお姉ちゃんも私の髪をよく櫛でとかしてくれましわ。

「…………お姉ちゃんがいなくなって……もう二年ですか………」

「…………………そうだね」

叶姉は言葉を選ぶようにして私に訪ねる。

「家出と何か事件に巻き込まれた。どっちだと思う?」

「あんな生活力もなければ行動力のない人に……家出なんて甲斐性あると思えませんけど──────。事件に巻き込まれてるよりはそっちの方がどっかで幸せに暮らしてるかもしれませんって思えますわ」

「そう」

素っ気な返事というよりは重たい返事でした。

叶姉は、お姉ちゃんの行方不明の真相について何か知っているのはなんとなく一緒にいる内に分かりました。

けど、いくら教えてほしいと頼んでも微妙な反応だったり、誤魔化されたりして、結局有耶無耶にされてしまうのです。


『香織が大人になるまで教えられない』

何故大人になるまで待たないといけないのでしょう?とは怖くて訊けない。

「変なこと訊いちゃったね。ゴメン」

黙る私をどう思ったのか謝る叶姉。

別に謝って欲しいわけじゃないんですの。


「香織」

「?」

「深く考えない方がいいよ」

「!?」

心を読まれた?

叶姉は見透かしたようなことを言う時は思わずは鳥肌が立って仕方ありませんわ。


「いってきます」

ランドセルを背負って学校に向かい、叶姉もスクール鞄を背負って中学校に向かう。

今日も叶姉の家に預けられることになっています。

叶姉のことなら今日も晩御飯はオムライスですわ。

学校速く終わらないかな

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