6th
放課後の帰り道、いつも通る横断歩道。
今日は通りたくなかった。ざわざわと気持ち悪い胸騒ぎがしたから。
別の道で帰宅した。
別の道を通ったせいで予想以上に遅くなってしまった。
家に帰ると
「叶姉見てくださいまし」
香織がテレビを指さす。
テレビに視線を向ければ嫌な胸騒ぎがして避けて通った横断歩道が事故に遭ったというニュースが流れている。
「叶姉がいつも通っている通学路ですわよね?────大丈夫でしたの?」
「大丈夫だからこうして家に帰って来てるんでしょ」
「その……女子中学生が被害に遭ったってニュースで出ていたので………」
不安になちゃったのか。
春奈のこともあって余計に敏感になっているのかも……。
「アンタの叶姉はアンタより先に死にはしないわよ」
香織を安心させるように、香織の頭をトントンと軽く撫でながら囁く。
「そうですわ。叶姉は強いんですから簡単には死にませんわよ!」
おーほほほと笑う香織を見ていつもの香織だと安心する。
春奈の代わりに私がお姉ちゃんしないと。任されたんだから。
「叶姉、今日の晩御飯はなんですの?後おじさんは遅くなるってさっき連絡がありましたわ。先に晩御飯は食べててって言っておりましたわ」
冷蔵庫の中を確認する。
これだけあれば
「香織の大好きなオムライス作れるぞ」
「今日の晩御飯はオムライスですわ!」
喜ぶ姿は年相応の少女。子供は笑っているのが一番だね。
「あっ……」
「どうかしましか?」
「ケチャップが足りねぇ………買いに行ってくるわ……」
「別にもう遅いですし今日はオムライスじゃなくても…………」
「大丈夫大丈夫。まだ六時だしコンビニ行ってくるからお留守番よろしく」
適当に制服の上にジャージの上着を羽織る。
自転車で最寄りのコンビニに向かいケチャップを買う。
さあて後は帰るだけというときに、帰り道の途中の公園のベンチで寝ている神崎を発見する。
何やってんだあの男は…………。
そういえば初めて会っときもこんな感じだったな。
「何やってんのよ」
「うん?摂津ちゃんか………驚いたわ」
「ベンチで寝ているお前の方が驚きだわ!」
「あはは」
少し躊躇ったが訊く。
「なんでベンチで寝てるのよ」
理由は想像つく。
「お母さんがね……帰ってくるんだ……だから帰りたくない……」
か細い声で答える神崎。
やっぱり……予想した通り……。
徹の忠告が脳裏に浮かぶが見つけてしまった以上無視できるほど人ができていない私は提案してしまう。
「今日だけ私の家に来なよ」
「お人好しだね摂津ちゃん」
「単にこのまま放っておいたら私の気分が悪くなるからってだけ」
と、反論する。
「アハハ、そういうのはお人好しって、優しいって言われるんだよ」
優しくなんてない。
本当にこのまま放置して次の日お前が死んだら気分が良くないからこうしてるだけであって優しさではなく罪悪感から逃れたいだけ。
「僕みたいな奴は普通は面倒だから放置するのにね……」
「罪悪感感じてくれるなんて素直に嬉しいよ」
なんて言う彼に掛ける言葉が見付からず微笑みで返した。
ようは笑って誤魔化した。
誤魔化しの笑みに純粋な笑みで返す神崎。
「…………………世の中世知辛いねぇ」
十四の小娘である私は大人びたこと月に向かって吐き捨てた。
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