10th
放課後急いで帰宅する。
香織には合鍵渡してるから家に入れないという心配はない。
しかし面倒見ると親友と約束したんだからゆっくりと帰るわけにはいかない。
宿題やってるか、学校とかで問題がないか、友達と上手くやってるかとか、春奈の代わりに訊いたりするのも春奈との約束。
私だけ──────春奈の行方を知っているから。
知っているから春奈いなくても寂しくないように、辛くないように面倒を見る義務が私には存在する。────使命と言っていい。
罪滅ぼしかもしれない────。
香織が大人になったら春奈のことは話す。それも春奈との約束だから。
オムライスだって春奈が香織に頻繁に作ってたから香織は大好きなのだ。
春奈の代わりに香織にオムライスを作る。
遅くならないうちにオムライスの材料を買おう。
この辺り、道に街灯が少ないから夜遅くは暗くなってと本当に真っ暗で何も見えない。自転車もパンクしているから自転車のライトを頼りに行くこともできない。
田舎の方にある町だし設備が都心部に比べて劣るのはしょうがないけど危険だし街灯は増やした方がいいと思うんだけどな。
玄関を開ければ目に入るのは履き捨てられている香織の靴。
「靴はきちんと揃えなさい香織」
「あっ……揃えるの忘れてましたわ」
香織は慌ててプレイしてたゲームを中断して丁寧に靴を揃えた。
「それと荷物置いたら買い物いってくるからお留守番よろしく。もし誰か来ても鍵開けちゃダメだよ」
「分かっておりますわ」
流石に香織が(私や叔父さんは自分の鍵で開けるし)他の人が来ても鍵を開けるとは思わないけど言わないと忘れるところがあるからワザと言った。
じゃあいってくるねと言って家を出る。
財布とエコバックを持って近所のスーパーに向かう。
卵などのオムライスの材料をさっさと籠に入れ精算する。
卵を潰さぬしたりぶつけたりせぬように慎重に家に帰る。
日が暮れる前に買い物を済ませることができてよかった。
玄関の扉を開けようと鍵を取り出し、鍵穴に挿して──────気付く。
「鍵が────開いてる?」
私は家を出る前に鍵を閉めたのは確認した。香織が鍵を開けるわけない──────じゃあ誰だ?
香織の靴はある。遊びに行ったという線はなさそうだ。
「香織?」
返事がない。
「………………香織?いるんでしょ?いるんだよね?」
返事は返ってこない。
一歩一歩、勇気を出しながら進んでいく。
自分の家なのに全然そうは思えなかった。
全く知らない人の家を無断で入ってしまったような気分。
「うっ………何この臭い…………」
鼻を嫌な意味で刺激するキツイ臭い。
嫌な想像が頭を支配する。
────────香織が────いやいや普通に聞こえてないだけかもしれない。
階段を慎重に上る。
実際、一分にも満たない時間なんだろうけど体感として十五分くらい時間をかけて階段を上った気がする。
心臓がバクバクとうるさく鼓動をあげる。
階段を上りきった私は香織の部屋として使っている部屋の扉を開ける。
「ひ、酷い!香織…………どうして……」
腹から血を流し倒れている香織が視界を埋め尽くす。
慌てて香織に駆け寄る。
僅かだけど香織はまだ息がある。
このままじゃ危ない。
「急いで救急車に電話しないと」
震える指先でスマホに119と入力し電話を掛ける。
誰かが電話に出ると、今いる場所の住所と香織の状態を叫ぶように連呼していた気がする。
ここからの記憶はあまりないけどどうやら香織は一時的に意識を失っているが命に別状はないようで安心した。
警察にも電話して軽く事情聴取されたが、直ぐに解放された。
あんな取り乱した状態でよくもここまでできたもんだ。
我ながら自分に自分で感心しそうになった。
まぁ香織のことは全然よくないけど。
香織は脇腹を刺されている。
一体誰がなんのために刺したんだ?
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