11th
香織の件で警察が調べているから家には帰れない。
急いで駆けつけてくれた叔父さんがビジネスホテルを予約してくれたから寝床は大丈夫だけど────────やっぱり問題は家に侵入して香織を刺したのが誰なのかだ。
絶対に見つけて殺し────じゃなくてボコボコしてやる。
「叶ちゃん、今日はもう寝た方がいいよ」
ずっと起きて考え事をしている私を心配する叔父さんの声。
私は首を縦に振って頷く。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
朝に起きれば身体がダルい。
眠ったのに眠れてないそんな感じ。
気分も最悪。
「叶ちゃん、今日は学校休みな」
私は無言で首を縦に振って頷く。
──────思ったよりショックが大きい。
今無理に動いたら倒れそう。
「香織………大丈夫かな………?」
「叔父さんは仕事にいってくるね。お昼はホテルで食べてね」
私の独り言を無視ししてくれるのも叔父さんなりの気遣いだろう。
本当に今だけはそっとしておいて欲しい。
叔父さんが仕事に行った後、暫くは動けなかった。
正午過ぎぐらいに身体はようやく言うことを聞いた。
私服のジャージに着替える。
「外の空気吸ってこよ」
ホテルから出て適当に外を闊歩する。
「明日、香織のお見舞いに行こう。何かお見舞いの品に買ってこよう」
適当なお店に入り香織へのお見舞いの品は準備できた。
きっと明日になれば目を覚ますわ。
「………………徹?」
適当に歩き続けていると徹ぽい人が視界に入る。
今日は学校ある日だし、休んでなければまだ学校にいる時間、サボるような奴じゃんないし─────変だな。
昨日の香織の件があるせいで妙に神経質になっている私は徹らしき人物の後を追う。
人混みを利用して徹らしき人物に発見されないようにしながら後を追う。
たどり着いた先は香織の入院している病院。
ここまでくれば分かるけど徹らしき人物は徹だった。
徹が病院内に入りたどり着いた場所は香織の病室。
「──────何も───ですね。か───無事──ね」
どうしよう聞き耳をたてるが徹の声はあまり聞こえない。
あっマズイ戻ってくる!
慌てて通路の奥に引っ込み隠れる。
徹が通路から見えなくなるまで隠れ、見えなくなるのを確認したら香織の病室に入る。
特に異常はない。
「お見舞いって感じじゃないし一体香織の病室になんの用が…………」
徹への不信感が募っていく。
「徹に直接確認しに行こう」
何か事情があるかもしれない。
病室を出る。
徹の家に向かう──────途中の路地で後ろから口を押さえつけられる。
そのまま後ろに引っ張られ仰向け状態で倒れるが本来頭に来る衝撃はこない。
誰かの─────徹の太ももによって地面に衝突するのが避けられたからだ。
この状態じゃハッキリとは分からないが徹は地面に正座して、右手で私の口を押さえ、左手に逆手の状態で包丁を握っている。
「─────ごめんなさい」
私の首に包丁が振り下ろされる。
「む゛ぐ゛!」
徹の手が震えているせいで中途半端に首に刺さった包丁から逃れようと必死に身体を揺さぶり、もがく。
包丁がじわじわと首に侵入する。
「う゛あぁ……」
口を押さえつけている手を外そうと掴む。
だんだん、身体に力が入らなくなってくる。
水滴が落ちてくる。
その水滴は徹の涙なのを理解できるほど意識はなかった。
意識がなくなる直前見たのは苦しそうな顔の徹。
だらりと力なく手が地面に落ちていく。
あぁ死ぬんだ。
あと数秒でただの屍と変わり果てる私。
随分とエグい死にかた。
……………
………………………
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