program.4 紅月の世界に叛逆を

◇ ◇ ◇

 ――ここは、どこだ?


 終わったな。散々な結果だが、この程度の障害で躓いていてはこれから先が思いやられる。初陣にしては及第点といったところか。


 ――だれ、だ?


 誰かだ? んなわかりきったことを。『俺』は、『アンタ』だ。他の何者でも……いや、同じというのは正確じゃないか。何せ、『俺』と『アンタ』は根っこの所で違っている。

『アンタ』は、どうしようもないほど率直でお人好し。『俺』は、どうしようもないほど冷めた現実主義者。

 な? 同じ存在と言うにはあまりにも真逆の人間だ。


 ――。


 まあそう深く考えることでもない。こうして『アンタ』の前に出てきたのだって、何も俺の意思じゃない。


 ――やっぱり、そういうことなのか?


 ああ、『アンタ』の考えている通りだ。記憶、戻ったろ? なら疑う必要はない。


 ――お前は、それでいいのか?


 いいもなにも、『俺』には決定権なんてない。決めるのは『アンタ』。

 だから『俺』が『アンタ』をどうすることも無い。


 ――それでも。


 ったく。自分のこととは言え、損な性格してるよな『アンタ』は。『俺』はなんとも思っちゃいない。それでいいだろう?


 ――。


 すぐに受け入れろとは、流石に言わないさ。ただ、おかしな話だけど『俺』は『アンタ』に感謝してるんだ。


 ――感謝?


 ああ。『俺』一人では一生叶えられない願い。その一歩目を踏み出せたんだ。こんな死に行く世界では夢に見ることさえできない願いを、な。


 ――願いって?


 言わなくても、『アンタ』は『俺』だ。もうわかっているだろ? 


 ――わかった。もうこれ以上は言わない。


 是非、そうしてくれ。次いつこうしてまた会えるかはわからないんだからな。

 だから生きろ。それがお前にできる唯一の存在証明だ。

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