何だかんだ一番遊んでるTRPG「ダブルクロス3rd」について
気付いたら、TRPGを遊び始めて幾星霜、短くない月日が経過しつつある。
初心者と言っては怒られて当然程度の経験点をTRPGから頂いている筆者であるが、中でも一番経験点を頂いているシステムは、やはりこのダブルクロス3rdであろう。
ダブルクロスは現代異能バトル系のTRPGであり、異能に目覚めたPC達が人知れずああだこうだスタイリッシュに戦うと言った趣旨のTRPGである。
要するに中二病マインドを全開に回転させて、ゴリゴリ書き連ねた設定とデータでバシバシエネミーを殴るタイプのTRPGである。
だが、このダブルクロスは御世辞にも出来の良いゲームとは言えない。
ハッキリいって遊び辛い。
まず、ルルブが読み辛い。
これは基本ルルブが文庫本サイズであるシステムの宿命といえないでもないが、兎にも角にも参照性が悪く、しかもシステムが独特なせいで一度では飲み込み辛い。固有名詞や特殊な用語も無暗矢鱈と多い上、どれもこれも説明が十分とは言えない。
次に判定が面倒臭い。
単純な加算システムではないため、サイコロを振った数を合計して数値を求めるといった事は通常判定では行わない。そういったことはダメージや各種効果などを求める時にやるのだが、ここもまたややこしい。どっちも覚えなければいけない。しかもPCの特技ことエフェクトも組み合わせて使用が出来るせいで覚える事が非常に多くなっており、初心者がいきなりシートを組むのはかなり難しい。
しかも、バランスが全く宜しくない。
ここまでゴリゴリに数字についてああだこうだ覚えなければならないというのに、このダブルクロスはハッキリいって『ゲーム』としては遊べないといっても過言ではない。それくらいに数字周りの処理が大雑把であり、駆け引きや計算といった戦略的プレイとは縁遠いシステムである。ボードゲーム的な遊びを期待しているに人は全くお勧めできない。普通のハック&スラッシュやビデオゲーム的な戦闘や駆け引きを楽しみたい場合は別のシステムをやったほうがいいだろう。異能バトルがメインにも関わらず、この有様である。
それくらいに、このダブルクロスというシステムは歪である。
ハッキリいって、ゲームとしては全く褒められたものではないと筆者は常々思っている。
それでも、筆者はこのダブルクロスというTRPGが大好きである。
出来る事なら、様々なGMやPLのシナリオとプレイを遍く共にしたいと思うほどに。
理由を説明しよう。
まず、何より、テーマが良い。
ダブルクロスは現代異能バトルではあるのだが、異能礼賛や人間賛歌といった類の作品ではない。むしろ、それらを否定する作品である。
異能はシンドローム……つまりは病気扱いである。異能はあくまでレネゲイドウィルスと呼ばれる未知のウィルスによって発症する症例の一部であり、日常を脅かす恐怖として描かれている。そのため、ダブルクロスの異能者ことオーヴァード達は、歓迎される存在ではない。表社会から隔絶され、己が異能者であるという事を隠しながら生きる事を強いられる。無論、この病気に治療法はなく、一度オーヴァードになったら最後、一生異能という病気を抱えて生きるか、さらに症状が進んだ化物……ジャームとなって人間性を失うかのいずれかである。明るい未来など望むべくもない。
そう、あくまでダブルクロスは異能に対して肯定的ではなく、否定的な作品なのである。このネガティブなテーマが根底にあるからこそ、異能に対してのアプローチが面白くなる。異能という単語に対しての考察と苦悩を作品として描くことが出来るのである。これこそが、ダブルクロスの肝であり、筆者がダブルクロスというゲームを好む最大の理由である。
次に、システムが良い。
先程までボロクソに言ったように、ゲームとしては丸で褒められたものではないし、判定方法も煩雑で全く宜しいとは言えたものではないのだが、それは普通にゲームとして遊ぶ場合の話である。TRPGとゲームは別である。ゲームはTRPGの一部の要素ではあるが、全てではない。筆者はそう考えているし、その考えに基づいて、このダブルクロスというTRPGを評価している。
まず、戦闘が大雑把でどんぶり勘定なおかげで、数字に対してあまりカリカリする必要がない。なんだったら、パーティメンバーに一人くらいは一個も追加エフェクトを覚えていないPCがいたって何とかなるくらいである。つまり、数字を気にしなければ、戦術面や戦略面で相対的に見る分にはビルド格差が生まれにくい。それくらいに戦闘が大雑把なお陰で、思う存分異能バトルごっこを楽しめるのである。数字をアクセントとして、演出としての戦闘を楽しめる。必殺技発表会をみんなで楽しめるシステムといえば、一部の方は垂涎ものなのではなかろうか? 少なくとも筆者はそうである。だから、ダブルクロスが好きなのである。数字を気にする人も、数字を気にしない人も楽しめるシステムと言えないでもない。
つまり、このダブルクロスというTRPGは、異能に否定的な世界観で現代異能バトルごっこを楽しむのに全く適当なシステムなのである。
ボードゲームを楽しみたい人には向かないだろう。
数字面は大雑把過ぎて戦術や戦略とは無縁といっても過言ではないシステムである。
心理的駆け引きもほぼ存在しない。というか、それはなるべく廃して話し合う方がいい。
ハック&スラッシュを楽しみたい人にも向いているとはいえない。
成長すればするほど、病状が悪化すると言う事でもあるのでロストにも近づく。
一番スコアが多いのは病状が浅い初期作成PCだったなんて事もザラである。
だが、現代異能バトルでド派手に必殺技演出をしたり、ガッツリRPとシナリオメイクをして楽しみたいという人には、是非とも推薦したいシステムである。
現代伝奇や現代異能が好きな人達、そしてそういった作品を書いた事がある方々には……是非とも、一度遊んで貰いたい。
もし、この記事を読んでダブルクロスに興味を持ってくれたのなら、一度ルールブックを手に取ってみて欲しい。
筆者は諸氏等と同じ卓を囲める日を、切に願っている。
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