執事風の男


その場はいったんお開きになった。


だが、エースがまだ狙われているのは間違いないし、それならなるべくみんな一緒にいた方が良い、という流れになった。が、今すぐ寝てしまいたいキリが、どーしても自分の部屋で寝たいとゴネたため、結局キリの部屋でもう一度集まることになった。


バートツ以外のメンバーで。


ジョーが、どうしてもバートツと一緒にいることを嫌がったのだ。

キリの部屋へと向かう廊下、キリの付き人の女性の案内で歩きながら、ジョーが珍しくクーリスに愚痴をこぼしている。

ちなみにエース達は、荷物を取ってくるからと、いったんそれぞれの部屋へと戻っていた。


「さっきの話し合い、なんか意味あったのかよ」

「情報や状況は整理できただろう」

「あんなの、もう知ってることばっかじゃねーか。なのに、なんのつもりかエラソーに場を仕切ろうとしやがってよ」


 それがそんなに問題か? と言いかけたが、火に油を注ぎそうだったので止めた。


「とくに、オレ様が一番知りたかったことを全く話題に出さなかったのが気にいらねー」

「なんだ? 他に分からないことがあったか?」


 クーリスが先ほどの状況を思い浮かべながら聞く。分からないことは多いが、話題に出なかったものがあるだろうか?

 ちょうどこのとき、キリの部屋に着いた。付き人の女性が扉を開け、皆を中にうながす。

 部屋の中は、出た時と変わりなかった。

 中に入ると、ジョーはソファに腰を下ろし、クーリスは自分の装備を点検した。キリは早速ベッドへと向かい、付き人の女性がそのベッドを整える。


「で、知りたかったことはなんだ?」


 クーリスの言葉に、ジョーは身を乗り出すようにして答える。


「最後のエース《探偵》の居場所だよ! この期に及んでどこに隠れてやがんのか! あと《超能力者》エースが今までどこでなにやってやがったのか! そのことについて一切ふれねーんだからな!」


 今分かっているエースの居場所は、ジョーの城に一人、生死不明の五人、殺された二人に生きている二人で計十人。なるほど、一人だけ分からない。


「あぁ、言い忘れていたが、それはもう分かっているんだ」


 は? と拍子抜けしたような顔をするジョー。


「《探偵》はこの城の中で、姿を隠している。バートツとの探索の途中で実際に会ったから間違いない」

「オイオイ、テメーふざけてんのか? そんな大事なことをなんで今まで黙ってた!?」

「すまない、言い出すタイミングが無くてな」


 それを聞いたジョーはプッツンキレる……かと思いきや、逆にいぶかしげにクーリスのことを見た。


「どうした? ホントに、いったい何があったんだ? あのバートツに何かろくでもないことを吹き込まれたのか?」

「いや、ちょっと考え事をしていただけだ。」

「考え事って、さっきからそればっかじゃねーか。大丈夫か、お前完全にオカシイぞ?」


 ああ、そうだな、と空返事を返すクーリス。

 こりゃダメだわ、とクーリスを相手にするのを諦めたジョー。だが、胸のモヤモヤが治まらず、今度は付き人の女性に話しかける。


「アンタらも大変なんじゃねーの? あんなバートツみたいな上司に使われてっとさ」


 すると、キリの寝る布団を整えた女性は振り返って、首をかしげるようにして言う。


「あの方は、私たちの上司ではありませんよ?」

「あーそうだっけ? メキサラとそれ以外、くらいしか上下の差は無いんだっけか」


 女性は、ちょっと困ったような笑顔でそれを否定した。


「いえ、そうではなく、バートツ様は皆さんと同じ、お客様ですよ。てっきり元々お知り合いなのかと思っていたのですけれど」


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