《鏡の魔女》

「これって本当に正解とかあんのかな」

どういうこと? と女は振り返る。

「所詮子供向けっしょ? あと、別に間違えたからって、ただクリアできないだけでしょ。私達は遊びに来ただけだよ。謎解きしに来たんじゃないし。ゲームなんかやめて他のとこ行こうよ」

「えーでもせっかくここまで来たのにぃ」

持ってきた宝石をごろごろと手で弄んだ。

「ここまで来たって、あんたあの人達の後ついてきただけでしょ。私達だけだったら絶対クリアできてないよ」

「まぁそうだけど」

「適当に宝石置いて出よう」

「あ、でもこれ置いていくのもったいなくない? 欲しいなぁ」

「馬鹿じゃないの、あんた。大量に用意してあるものに価値とかないでしょ」

むぅと頬を膨らませて、軽く相手を睨んだ。

「安物でもいいんだもーん」

「……せめて一個ぐらいにしたら?」

「じゃあ……ピンクと紫……いや、こっちも素敵だなぁ」

呆れたようにため息を吐くと、適当に残りを台の上に乗せてしまった。

「ほら、行くよ……あれ?」

そこで出口がないことに気づいた女が壁を叩いた。もう一人は入ってきた扉を開けようとする。

「出られない!」

「ほらー! 適当にやったせいだよー」

「あんたが盗もうとしたのが悪いんじゃないの?」

その言葉に反論しようとしていた女の声は、突然現れた少女によって遮られた。

――欲に溺れる……卑しい……汚い……人間。

「ちょ、ちょっと何これ?」

――石に価値など無い。それに意味を持たせるのは、人しかいない。

少女の高い笑い声が部屋中に響いた。二人は身を寄せ合って震えている。

――でもいいの。そんな人間がまだいるから、私は終わらないの。ありがとう、復讐を、制裁をするチャンスをくれて……。

「……なんか、熱くない?」

「嘘、でしょ……」

部屋の壁側から、じわじわと炎が燃え上がっていた。

――光はいらない。私は強いの。あの人より……だから、今度は……。

これはただのアトラクションだとか、ゲームのはずだという言葉は声にならなかった。体が炎に包まれている。暗い、黒い下へと二人は落ちていった。

――終わってなんてあげない。私の大事なものは帰ってこないんだから。

鏡の中で人形を持った少女は、いつまでも笑っていた。

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