教訓として
さくらは法律上は<未婚の母>ということになるが、しかし決して孤立しているわけではなかった。実際の父親であるエンディミオンはいるし、これ以上ない強い味方であるアオとミハエルもいる。両親もバックアップすると言ってくれている。
アオは言う。
「こうなると、『父親がいない』というのは、あくまで体裁上の問題でしかないな。
今時、片親世帯など珍しくもない。
『<イジメ>の原因になる!』
と言う人間もいるが、そもそもそんなことを理由にイジメる方が悪いのだ。
『イジメられる方にも原因がある』
とか言う人間はただの甘ったれでしかない。
『日本は加害者に甘い!』
などと言っている一方で『イジメられる方にも原因がある』とか言っているなら、それこそただのダブルスタンダードというものだろう。万引きが<窃盗>であるのと同じで、イジメ加害者はれっきとした犯罪加害者なのだから。
『イジメられる方にも原因がある』などと言いたいのであれば、正々堂々、司法の場で申し開きをすればいい。その主張に合理性があるならば、聞き入れてももらえるだろう。
私は決めたぞ。片親であることを理由にさくらの子をイジメるような輩がいれば、容赦なく刑事告訴してやると。
『子供のケンカに大人が口を出すとか!』
だと? 対等な<ケンカ>と、<イジメ>は別物だ。
何より、子供が間違った対処の仕方をしているなら大人がそれについて指導しなければ、何のために大人がいるのか分からないではないか。大人が犯罪に目を瞑っていて子供に善悪の区別が身につくと思うのか?
ただしそれと同時に、もし、さくらの子がイジメの加害者になるようであれば、その時はもちろん容赦はしないがな」
アオの言葉に、さくらも頷く。
「はい。是非そうしてあげてください。子供が人の道に外れるようなことをしたのであれば、それについてはしっかりと咎めてあげないといけないと思います。
子供を受け止めるというのは、何か罪を犯した時にそれについて目を瞑ることではないと私も思います。子供と一緒にその現実と向き合い罪を背負うことだと私は思うんです」
「応よ。その覚悟があるのならきっと大丈夫だ。その覚悟を持ってきちんと子供と接するのであれば、そもそも誰かをイジメたりするような人間には育たないと思う。
私の両親は、そうじゃなかった。兄が今、パワハラで部下を使い潰していることについて目を瞑ってる。そんな姿勢が兄をあんな人間に育てたという事実から目を背けてる。自分の間違いに向き合う勇気があの人達にはないのだ。だからこそ、パワハラという間違った手段をとっている自分と向き合うことのできない人間に、兄は育ってしまったのだと思う。
私はそんな自分の親の失敗を教訓として活かしたい」
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