望まれない遺物

「でかい金属の塊……こいつは、不発弾か……!?」


地中を振動によって探っていて探知したそれを、エンディミオンは不発弾と判断した。樽に似た形状で、かなりの質量だと察知できたことで、他に思い当たるものがなかったのだ。


『明らかにドラム缶とか程度のものじゃない。ドラム缶なら長期間地中に埋まっていれば大体錆びてボロボロになるだろうからな。しかしこいつはしっかりしてる。


古い地下埋設管の可能性もあるが、不発弾だと判断して対処した方がいいだろう……


だが念の為……』


そう考えてエンディミオンは、現在はこちらと同じく空き家となっている隣家との僅かな隙間にもぐりこんで、そこの地面を手で掘り返し始めた。


そして五十センチほど掘り返したところで指先に何かが触れるのを感じて手を止め、そこからは慎重に土を払いのけるかのように穴を広げた。


『まあ、確認は人間にやらせるか……


実際に不発弾かどうかは分からないが、得体の知れんものが埋まってるのは確かだしな』


それからエンディミオンは公衆電話を見付け、そこから警察へと電話を入れた。


「○○区××町、工事中の住宅の地下に、不発弾らしきものが埋まってる」


と。


すると当然のように騒ぎとなり、連絡を受けた警察官が工事中の住宅の敷地内に掘られた穴の中に黒い金属の塊を発見、不発弾の可能性が高いとして自衛隊に出動が要請され、爆発物処理班が出動。当該の物体を、第二次大戦中に空襲の際に投下された一トン爆弾と断定。ただちに周辺住人を避難させた上で処理が開始された。


その知らせは、もちろん、現在の所有者であるアオのところにも入る。


「不発弾…!? ええ……っっ!?」


言葉を失ったアオだったが、不発弾が出たとなれば警察の指示に従うしかなく、


「お願いします」


と、不発弾処理にかかる一切を承諾した。


だがそれは、不発弾処理に関連してかかる費用の一部をアオが負担することになるという意味でもあった。


幸か不幸か隣家も解体を待つ空き家だったために処理そのものはスムーズに進んだが、その際に行われた安全対策によりアオが買った家は半分以上が完全に基礎部分から破壊され、<リフォーム>という形で工事を進めることは不可能になってしまった。


しかも、自衛隊が行った不発弾処理作業そのものの費用は請求されなかったものの、万が一爆発した場合に周囲に被害が及ばないようにする為に行われた、土嚢を積み上げたり等の<工事>をはじめとした諸々の費用はアオに請求されたのであった。


ここでようやく、アオとさくらは気が付くことになったのだった。


「前の所有者が急いで手放そうとした理由って、もしかして……?」


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