リフォーム開始
そんなこんなで、取り敢えず例の家はアオが購入し、まずはリフォームを名目に地下を調べることになった。
リフォーム業者には、
「地下に防空壕跡があるらしいから、まずはそれを調査して安全かどうか確認してからリフォームを始めてください」
と告げて。
そういう厄介な案件に対しては尻込みする業者が多かったが、五件目にしてようやく引き受けてくれるところが見付かった。
決して有名でもないただの中堅リフォーム会社だったので、正直、品質については当てにしていなかった。万が一、手抜き工事などがあったとしてもそれはそれで構わないと思っていた。その時は二度とそのリフォーム会社は利用しないし、自分の周りの人間がリフォームをするとなればそこには依頼しない方がいいと告げるだけだ。
それで結果としてそのリフォーム会社が潰れようとも、手抜き工事をするような業者は淘汰されるべきだとも思う。
ただし、ネットなどに上げるつもりはなかった。名誉棄損だなんだと言われても敵わないから。
などということはさて置いて、とにかく土台と屋根と柱だけを残して解体する。
念の為、アオも解体現場を見ていた。そこで何か見付かる可能性もゼロじゃなかったからだ。ちなみに
しかし、解体が進んでもこれといって目ぼしい手掛かりもなく、スムーズに終わってしまった。
なのでこの日はマンションに帰る。
「やっぱり、建物の方は何もなかったよ」
「そうですか。となれば地下でしょうか」
「あるとしたらそっちだと思う」
アオとさくらとミハエルがそんな風に話し合っている間、エンディミオンは何をしていたかと言うと、解体現場に忍び込んでいた。
実は最近、少しだけなら監視をサボることがあったのだ。
と言っても、何かあればすぐに駆け付けられる程度しか離れないが。
例の家も、人間が普通に歩いても五分とかからない場所だったので、エンディミオンならその気になれば十数秒で走り抜けられる。
それで、とにかくさくらのために自分でも調べてみようと思ったのである。
気配を消し、するりと目隠しのシートをすり抜けて中に入り、防空壕、ないしは地下室と思しきものがあると考えられている位置に立つと、既に床板もすべて外されて根太の隙間から基礎のコンクリートが見えていた。
そこに降り、やや強めに基礎を何度か踏みつける。
「……ふん……確かに空間があるな……」
しかし今はまだ、基礎部分がそのままなので直接見ることはできない。
そこでエンディミオンは、位置を少しずつ移動しながら、足を何度もコンクリートに叩きつけたのだった。
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