第12話
初めてスリーフィンガーファストボールを投げたとき驚いた。正直プロ野球選手の道が見えたと思った。誠が俺の球を捕れないたびにその気持ちが大きくなる。 そして家の近くの壁でボールを投げているうちに我慢できなくなった。
痛快!その一言に尽きる。このまま野球無双が出来ると、自分が繰り出す魔球を見て実感した。しかし、そんな自分はくずだったと今では恥ずかしい。
ピッチング練習で捕れない球を身体に当てて許してくれる女の子なんてこの世に何人いるだろうか。100球以上この練習に毎日付き合ってくれる捕手がいるだろうか……。そして新品だった防具が数ヶ月でボロボロになる姿に気がつかなかった馬鹿な俺。
誠は凄い。俺の球が捕れた頃、9マスピッチングを求めた。彼女がすぐに魔球を投げさせなかった理由がよく分かった。半日やっただけでコースにびしばし魔球が決まる。もし魔球をすぐに投げたらボールの魔力に慢心して、ここまでのコントロール技術が身につかなかったと思う。
今は持ち玉一つの俺だが、彼女のさらなる隠し球に思いを描く。
「最近なんだか楽しそうだね」
母が笑う。
大盛りのどんぶり飯をかっ込みながら
「両親に感謝みたいな」
俺は答えた。
「気持ち悪いわねェ~」
とまた母が笑う。自然に感謝と言えた自分に戸惑う。お箸の握りをを見ながらまた感謝、感謝と呟く。
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