ご褒美ー2
ユウとエッチするのは二ヶ月ぶりだった。
熱いキスを首すじに落とすユウ。電流が走るような感覚に、身体が反応する。
「服、脱がしていい?」
ユウが私の服に手をかける。
その言葉に私は慌てて制した。
「ユ、ユウっ、まって」
「……なに?」
ジロリと睨まれてしまった。
実は気にかかっていることがあった。それは、先生からの指導。
「足の傷はまだ完治ではありませんからね。無理はしないこと。いいですか? 杏奈さんも、彼をちゃんとみてやってくださいね」
私もそこにいて、念を押された。無理をさせてはいけない。激しい運動もまだ控えるように、と言われた。
私なりに考えた。
激しい運動…………とは? …………エッチだって例外じゃない。
ーーうん。
私は一度おおきく頷くと、彼のほうを向いた。
「え、なに?」
ジッと見つめると、ユウの身体が微動する。
「……ユウ、あのね」
私は意を決して言った。
「今日は……だめ」
「は……だめってなにが?」
ユウの眉間にシワがよっていく。私はつめよると、人差し指を立てた。
「先生が激しい運動しちゃだめって言ってたでしょ?」
「うん」
「だから、今日は……ね?」
訳がわからないと言った顔をするユウ。しばらくしたのち、彼が呟くように言った。
「……それ、まさかエッチのこと言ってるわけ?」
「うんそうだよ。無理しちゃだめって言ってたでしょ?」
ユウがため息をついた。
「なんでそうなるわけ? あれは、僕が総合格闘技をやってるから、先生はその練習のことを、」
「傷口が開いたら大変だよ」
「話聞く気ないよね?」
「とにかく無理しちゃだめ……」
そして、私は一度深い息をすると、勇気を出して言った。
「だからね。……き、今日は、私が……してあげる」
ユウのために気持ちよくしてあげたいと思った。
その意思を伝えると、ユウはちょっと驚いていた。
「本気で言ってるの、それ」
「う、ぅん。私……やってみる……」
そして、彼に手を伸ばした。自分なりに頑張ってみた。
頬に触れてキスをしたり、ユウの身体に触れたりーー。つたないキスマークを付けてみたりもした。
そんな私をユウは無表情で受け止めていた。私はあまりうまくない。彼のように、相手を気持ちよくさせることができない。
気持ち……よく、ないよね……。
私は、ユウに気づかれないほど、ちいさく息を吐いた。
「あぁ、もう無理」
ユウは私を引き寄せると、強引にキスをした。突然のことに驚いて、私は目を見開く。
「っ……ユウ?」
「その顔とか、遠慮がちなキスとか……、不慣れな手つきとか堪んないんだよね。すっごい欲情してくる」
「え」
「僕も杏奈にさわりたい」
ユウを気持ちよくしてあげたかった。でも結局、気持ちよくされたのは私のほうだった。ユウは私をベッドの端に座らせると、優しく触れた。細くて冷たい指が私に触れる。
「ユウ……」
「僕を気持ちよくしてくれようと頑張ったご褒美、いっぱいあげる」
愛を確かめるようになぞる指先。
ーーユウの愛撫は気持ちよすぎる。
「杏奈」
私の身体を知り尽くした彼。あっという間に快楽へ溺れていく。なにも見えない。ユウの艶めいた顔しか見えなかった。
「……ユウ」
「もっとしてほしいって言って」
「……ほしぃ……っ、もっとユウに……して、もらいたぃ……」
「ーーいいよ」
それから、私たちは深く繋がった。私はあっという間に快感へ沈んでいった。身体の熱が温度を上げていく。
私はユウが大好きだ。こうやってなんの不安もなく繋がることができる。それがなにより嬉しくて堪らなかった。
結局、私はアパートを引き払ってないままだ。
ーー両親に挨拶もしていないのに、同居なんて申し訳ない。
ユウの口からそんな言葉がでるなんて思ってもみなかった。彼は本当に私と未来のことを考えてくれている。ただ幸せだった。
私はユウとの繋がりを求めつづけた。彼の吐き出す甘い吐息が胸にかかる。
「………ユウ」
「杏奈、その顔反則。かわいすぎ」
ああ、ユウ。もう好きすぎてどうにかなりそう。
終わった後、ユウは私に覆いかぶさるとキスをした。甘い甘いユウのキス。
とろけそうになるほど、柔らかくて甘いーー。
二ヶ月ぶりのエッチは、とても濃厚で情熱的だった。
あぁ、ユウ。私、あなたがほんとうに好きーー。
ここにあるのは、シアワセの四文字だけ。
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