第101話『過去と未来が交差する、魔王ヴェルグラの地底都市ー攻防戦④』

 ピッ……ピ、ピッ! テラ・システム、希望の魔女の命令コマンド実行中……未来改変。白い瞳のルーン・グローリアの冒険日記②-狂王の地底都市ヴェルグランド、冒険日記の時を解放しました。



 “聖痕の少女、ルーンとゆかいな仲間たち”。


 パーティメンバーは、白い瞳のルーン・グローリア。メイドのフィナ。軍国の冒険者のミランダ・フォーチュン、ロベルト・フィルド、ミルヴァ・カ―ネル。あと、三大魔王の二人―幽鬼シャノンと炎鬼クルド。


 七つの元徳と大罪の保持者は、ルーン・グローリアのみ。メイドのフィナは、Code3.第三の刻―審判の時から存在を確認。この2名は除外。



 希望の聖痕による上書き、失敗。


 希望の聖痕、パーティメンバーに効果を発揮せず……ピッ……ピ、ピッ! 傲慢な霧の女神ウルズ、傲慢の烙印を行使。



 希望の聖痕に、傲慢の烙印を重ねて……パーティメンバー、軍国の冒険者のミランダ・フォーチュン、ロベルト・フィルド、ミルヴァ・カ―ネル。三大魔王の炎鬼クルド。この4名に効果を発揮!



 傲慢な霧の女神ウルズは複製品リプリケートを作製しました。パーティメンバー:ミランダやロベルト、ミルヴァ、クルドの複製品リプリケートを。



 ※Code8~.第八の刻―最初の霧の人形。この時代に、幽鬼シャノンの存在を確認。異界にある迷い星テラにいる為、複製品リプリケートを作製せず。


 幽鬼シャノンは、今回の過去の遠征には不参加となる。




 ※メイドのフィナ、白い霧の中に存在を確認。


 




 女神の転移者、ゆかいな仲間たち。傲慢な霧の女神ウルズによって作製された、ミランダやロベルト、ミルヴァ、クルドの4名の複製品リプリケート



 Code8. 


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 ピッ……ピ、ピッ! “現在の時刻、02:00”。

 2時間経過……悪魔の大厄災まで、残り4時間。



 ここは魔王ヴェルグラの地底都市―下層の大空洞、魔晶の木々が群生するエリア。若葉色の光が闇を照らし、古代エルフ文明の遺跡を淡く照らしています。



 神秘的な森の中を彷徨う、人や魔物の複製品リプリケートたち。


 傲慢な霧の女神ウルズによって作製された、ミランダやロベルト、ミルヴァ、クルドの4名の複製品リプリケートたちは捜しています。



「おい、シャノン! ふざけてないで出てこいよ。

 これは、冗談にもならないぞ!」



 彼は三大魔王の1人、炎鬼クルド。燃え滾る赤い眼のオーク。いわゆるチャラ男の複製品リプリケートですね。


 彼の後ろには、3名の人間の複製品リプリケートたち。軍国の冒険者のミランダ・フォーチュン、ロベルト・フィルド、ミルヴァ・カ―ネル。彼女たちも、Code8~.第八の刻の過去の時代には、まだ生まれていません。



 未来改変を行う為に、希望の魔女と傲慢な霧の女神によって作製されました。


 彼女たち、複製品リプリケートたちは、ルーン・グローリアの冒険日記をもとに創られています。なので、冒険日記に登場する人物の記憶もそのまま……未来での遠征。彼女たちの目的も、そのまま変わっておらず、愚かな魔王の暗殺。三大魔王-狂王ヴェルグラを殺すことです。



 未来の出来事。狂王の地底都市ヴェルグランドへの潜入。


 幽鬼シャノンの転移魔術と堕落神―名無しの招魂魔術による支援によって、2時間程で最深部に到達予定でしたが……幽鬼の転移魔術で、下層の大空洞に到達時に、幽鬼シャノンと白い瞳のルーン・グローリア、メイドのフィナは姿を消しました。



「フィナお嬢ちゃんもいねえ……シャノン、どこに行ったんだよ!?」



 ミランダやロベルト、ミルヴァ、クルドの4名の複製品リプリケートたちは歩き続けています。そして、2時間経過……まだ、彼らは、大空洞の魔晶の森の中。魔晶の木々の中で彷徨っていました。



『ねえ、あんた、もしかして、私たちのことを嵌めたの?』



 これは、ミランダですね。レイピアの使い手で、黒い瞳、黒髪で肩にかかるぐらい。ジト目でじーと、炎鬼クルドを見ています。



「あのな、おかしいだろ!? 俺も嵌めた側なら、ここにいねえよ!

 シャノンに嵌められたんだ……俺も、お前らも……。」



『クルドさん……同じ魔物なのに、かわいそう。』



 小さい声で話したのは、ミルヴァです。黒い瞳、黒髪は長く腰まである。緑の葉っぱが刺繍された、薄い赤いローブを着ています。彼女の声は小さいので、耳を傾けてあげてください。



「お前らも嵌められているからね? 俺も、お前らも一緒だよ?」



「いや、違う。魔物同士、同族から裏切られる方がー。」



「お前は、いちいちそんなこと言わなくていいんだよ!」



 冒険者のロベルトと炎鬼クルドは喧嘩? 取っ組み合いを始めました。ミランダとミルヴァは、魔晶の木の根っこに座って、傍観しています。



『ねえ、ミルヴァ、魔物の地底都市の下層で……。

 魔晶の木は綺麗だけど、知らない場所で、裏切られて終わり。


 こんな終わりで良かった? 私は嫌だな……。』




『私は、ミランダたちと一緒にいられたから良かったよ?』




『ふーん、そっか……じゃあ、ミルヴァが最後までそう思えるように。

 最後は、笑顔で終われるように……。


 私は最後まで戦うから、絶対に私の傍から離れないでね?』




『うん、ミランダの傍から離れない……。』



 ミランダとミルヴァは、昔の冒険話で談笑しています。彼女たちの笑い声が聞こえてきたり、ロベルトとクルドが殴り合っていたりと……ほら、こんなにも仲がいい、ゆかいな仲間たちです……ね?




「皆さん、仲がいいですね。羨ましい限りです。」



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 私は、ミトラ・エル・フィリア。私は皆に声をかけました。


 白いローブを着て、金色の長い髪を後頭部で、赤いリボンで一つにまとめて垂らしています。



 皆、私を見てくれました。不思議に思って、誰も話さず沈黙が続きます。ミランダはレイピアを持って、ミルヴァの前に。ロベルトやクルドも、姿勢を正して、警戒している。



「ふむ、すぐに近づくという愚かなことはせんか。

 まだ、遠征時の覚悟は消えてない……なら、このまま続けても問題ないな?」



 聖母のミトラ。私と同化している聖母フレイ様が、言葉を発しました。ゆかいな仲間たちに伝えます。



「よいか、よく聞け。ミランダ、ミルヴァ、ロベルト、クルド。

 シャノンは裏切っておらん。遠征の目的が変わったのだ。



 狂信者デュレス・ヨハンが、下層の大空洞におる。

 狂信者から信仰の聖痕を奪うことが、最重要だ。」



 そう、今回の遠征、その目的が大きく変わったのです。狂信者デュレス・ヨハン。この場所で、この時代で彼を殺さないといけません。



 聖フィリス教。この間違った教えを、邪神フィリスを信仰する、哀れな人間が現れない様にしなくてはいけません。


 未来で、狂信者が生まれてこない様にするために……。




「悪魔の大厄災が起きるまで……ここからは別行動になる。

 クルド、お主は軍神イグニスの相手をしてもらうぞ。



 人間の冒険者たちよ、お主たちはグローリアと一緒に行動だ。

 魔王ヴェルグラは殺さん。新たな人魔協定を結べるきっかけになればよい。



 さあ、行くぞ。クルド、お主は逃げるな。

 ここで逃げたら、赤い眼の娘からも逃げられるぞ?」

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