『再生と終焉の時の中で……白い人形の再生の旅は、まだまだ道半ばです。』

 ①悪魔の女神の終焉の時は、女神が歩んだ道そのものです。


『Code1.元始の刻―時の化身。』

 天の創造主は、捨てた光と時に名を与えた。


『Code2.第二の刻―惑星招来。』

 時の女神ノルフェスティは、精霊の世界の真下で、時の魔術を行使した。あらゆる時が解放されて、いろんなものが入り込む。やがて、数えきれない程の世界が交差する様になり、異なる世界―異界と呼ばれる様になった。


 のちに、堕落神となるフレイの依り代……砂の惑星も、時の魔術に導かれて、異界に存在している。



『Code3.第三の刻―審判の時。』

 時の女神は、天国から堕ちた。姿を消した、愛する娘ノルンを捜して……聖人フィリスも、共に落ちていく。


 異界の真下に、霧の世界フォールが生まれて、あらゆる世界は終焉へと向かっていく。フレイの砂の惑星やフィリスの迷い星も……全ての堕落神の依り代―悪魔の女神に選ばれた12の惑星は、異界から落ちて落下星となった。



『Code4.第四の刻-???』、『Code5.第五の刻-???』

 神生紀。異界の女神が現れ、白い霧が生まれて、12の神が誕生した時代。人や魔物の神の加護のもと、人や魔物の文明は急速に発展した。数多くの宇宙船が飛び……転移装置によって、自由に12の惑星を行き来できた。異界の門を解明し、異界へと辿りついたとも言われている。



『Code6.第六の刻―騎士の軍勢。』

 12の神は栄華を極めて、堕落した。神生紀の後期に起こった、「天上戦争」によって、6つの星が破壊される。堕落神……人と魔物は鎧を身に着けて、罪を重ねて、愚かな戦いを続ける。オーファンの騎士たちは、人の為に魔物と殺し合った。



『Code7.第七の刻―時の封印。』

 星という依代を失った神々は力を失い、女神の白い霧にのみ込まれる。残った神々も、悪魔の女神によって、第三惑星フィリスに封印された。



『Code8~.第八の刻~第十一の刻―???』 

 人や魔物の神が封印されて、最初の霧の人形が現れた。最初の人形は、悪魔の大厄災を起こし、神生紀文明を滅ぼした。


 悪魔の女神は時の魔術の影響を受けて、徐々に正気を失っていく。悪魔の女神は影を創り、計画を立てた。これは最後の悪あがき……時は流れて、遂に白い人形が動き出す。地獄の門は開かれて、正気を失った悪魔の女神が眼を覚まします。




『Code12.第十二の刻、帰天きてんの刻―終焉の時。』

 元始の刻、時の化身として生まれて……帰天きてんの刻で、天国に帰ってくる。そして、創造主が用意した最後の選択の時、母と娘の決闘が行われます。




 ②白い人形-希望の魔女の再生の時は、人形が必死に歩んだ道を示します。



『Code1.元始の刻(始まりの時)―白き人形は動き出す。』

 悪魔の女神の望みを叶える為に、病弱な人形ノルンは霧の城の中庭にやってきた。気がつくと、そこは真っ黒の闇の中……暗闇の中で、青く光る水晶の像、堕落神―騎士神オーファンと遭遇する。

 

 女神は呟いた。女神の言葉が、闇の中に響いていく。『契約は完了した。堕落神―騎士神オーファン、我が娘の眷属とする。』



『Code2.第二の刻―白き人形は、再生の聖痕と対面する。』

 騎士神オーファンによって、第六惑星に転移。鉄とガラスでできた、ドーム状の大きな屋根の下で、白い光が降り注ぎ、木々は生い茂る。ドームの中を小鳥が飛び交い、花の上を蝶が舞う。色とりどりの草花が咲き誇る、見渡す限りの花畑で、時の呪い―再生の聖痕と出会った。


 聖痕―白い瞳の人形は、ノルンに手を差し伸べる。青のお嬢様の痛みを和らげてくれる。それだけでも十分。不思議な痛みを和らげてもらう為、ノルンは聖痕の少女の手を握って……こうして一つの体に、二人の少女が共存する。聖痕を刻まれた少女の冒険が始まった。



『Code3.第三の刻―青のお嬢様は、白き人形に課せられた役目を知る。』

 白い人形の夢の中にいると、青のお嬢様の感情が薄れていく。『12年間、誰も本当のことを教えてくれなかった。聖ちゃんも、お母さんも……もう訳が分からないよ。お母さん、どうして……。』消える前に、全てを忘れる前に、お母さんに聞きたいことがある。『どうして……私に聖痕を刻んだの?』


 『お願いだから、入れ替わってよ!? どうしても、お母さんに会わないといけない。お母さんに聞きたいことがあるの!』


 ノルンと聖痕の少女が入れ替わると、青のお嬢様の体に埋もれていた感情が爆発した。『そんなの嫌! 私は、お母さんに頼まれた。願いを叶えたら、痛みから解放されるって。でも、痛みの原因は、お母さんが刻んだものだった! もう、意味が分からないよ! 何で、私に……本当に好きだったから!? 役目って言うけど……そんなの酷いよ! 蜘蛛たちだって、お前に操られる為に……今まで生きてきたわけじゃない!』


 何もできない、病弱なノルンは夢の中から目撃する。再生の聖痕、大好きな母の愛を……母の呪いを。悪魔の女神の魔力が尽きない限り、聖痕は対象を蘇生させる。対象の肉体の損傷が激しい場合や、肉体が消滅した場合は……白い霧から、新たに肉体を創り出す。対象の意思は関係ない。創り出すのは、悪魔の女神だから。対象の魂が消えない限り、何度でも、何度でも新しい肉体を創り出す。悪魔たちが献上した、人や魔物の魂を犠牲にして。


 女神の膨大な魔力によって、“再生の聖痕”―女神の極界魔術が発動。聖痕の少女は眼をつぶっている。眼のふちから、涙が落ちそうになっていった。『お母さん、どうして?……私を生んだの?』


 聖痕の少女が、そのように思っているのだろうか。人形の生みの親、悪魔の女神は答えた。『あなたが、望んだからよ。あなたが守りたいと願った。最後の霧の人形を……あなたが、願ったのよ。人や魔物の魂を犠牲にしてでも、愛しい娘を守りたいと願った。なら、役目を果たしなさい。この世界が終末を迎えるまで。あなたには……その責任がある。』そして、時は動き出す。



『Code4.第四の刻―悪魔の女神に導かれ、白き人形は役目を知る。』

 悪魔の女神は深い眠りにつく。これが、自分の意思で行う最後の魔術。『愛しいノルン、聖痕のルーン。どうか、苦しみを乗り越えて……私は、いつかきっと……貴方たちを殺そうとする。その時は、躊躇せずに……持てる力を全て出して、私を殺しなさい。貴方たちが、時から解放され……幸せに生きる。それが、私の望み。』


 聖神フィリスは、悪魔の女神に選択を迫る。『白い霧の奥底から出て……愛しいノルンを助けて、深い眠りに落ちる。そう決めた。希望を残すにはそれしかない。』


 『私の影アシエル。貴方は、納得できないと思うけど……。』


 『ええ、納得できません。』


 白い霧の中に、目や口のない霧の女性がいる。女神の影アシエルは、女神に質問をぶつけた。恐らく、普通に話すことができるのは、これが最後。お互い分かっていた。


 『ノルフェスティ様、どうしてですか? こんなことをしても……貴方はいずれ、全てを壊す。貴方の行動は、無意味です。貴方が、あの娘を殺すのですから、あの娘を助けることはできません。


 ノルフェスティ様、時の女神の娘は亡くなっています。天国からいなくなった時に……あの娘は、時の女神の娘ではありません。どうして、我々を見捨てるのですか? どうして、私たちではなく、あの娘なのですか? どうして、貴方が創った世界を憎むのですか?』


 『……ええ、世界が憎い。霧の世界だけでなく、地獄も、異界も、精霊の世界も……天国も、全てが憎い。私の娘を否定した、全ての世界が憎いからよ。』



 女神は正気を失っている。天国から堕ちた時に……女神はこれ以上、アシエルの問いに答えない。愛しいノルンのもとへ向かった。



 『お母さんは? 私、お母さんに聞きたいことがあるの。だから、教えて! お母さんは、今……どこにいるの!?』


 悪魔の女神は、崩壊する世界で眠りにつく。白き人形のノルンとルーンは、異界に辿り着き、悪魔の女神を捜す。そして、役目を果たすだろう。白き人形の役目を……異界の女神として。


 白き人形が進む先に、何が待っているのか……女神の子らは、為したいことではなく、為すべきことを為すだろう。悪魔の女神に代わって……。



『Code5.第五の刻―地獄での選択の時、再生の聖痕は役目を果たす。』

 聖痕の少女は、悪魔の女神の娘ノルンと共に生きてきた。ひ弱な子が、霧の城で必死に生きていたこと。城の外、霧の外へ出たいという強い思いを持っていたこと。聖痕の少女は全て知っている。この子がどれ程願っているか……大好きな母と一緒に暮らしたい。ただ、それだけなのに。この子は優しい母と一緒に暮らしたいだけ。でも、この子の普通の願いは叶えてあげられない。


 水の都ラス・フェルトには、希望の魔女がいる。だから、聖痕の少女―私がいなくても……もう大丈夫。大丈夫だよね? あの子はとても強くなった。立派に成長してくれた。だから、そんな目で見ないでよ。どうして、泣きそうな顔をしているの? 私は、異界の門を呼んだ。私を止める声が聞こえる。でも、私はやめない。ここでやめたら、本当に全てが消えてしまう。私の守りたいものが、全部……天の創造主に奪われてしまう。


 『ノルン、勝手なことして……ごめんね。』


 『ルーン、やめて! お願いだから、やめてよ!』


 あの子が泣いている。私が何をするか、あの子に教えていないのに……あの子は気づいたのかな? いつも隠し事をしてごめんね。今日、私が終わらせる。私が、創造主からあの子を守ってみせる。だから、どうか、この星で幸せに暮らしてね? 大好きだよ、ノルン。


 私はお母さんから頼まれた。私の役目、再生の聖痕が為すべきことを為さないといけない。私はノルンを守らないといけない。青のお嬢様、二人のノルンを……私は、息を大きく吸ってから叫んだ。


 『天の創造主の神具よ、私の声を聞け! 私は強欲の魔女。悪魔の女神に従い、創造主に仇を為すもの。創造主の神具よ、己の存在意義を示せ! 己の存在意義を示さず、何もしないのなら……私は、元徳の希望に選ばれた聖女を殺す。』


 あらゆる世界の底にある地獄へ。傷ついた少女と共に……再生の聖痕は、悪魔の女神の呪い。この呪いは、時の女神の娘にも効果を発揮する。再生の聖痕は、時の女神の娘を癒せるだろうか? 時の女神の娘ノルンー天の創造主は逃げずに、地獄の下層―灼熱の海で……その時をただ待っている。



『Code6.第六の刻―白き人形は希望の魔女となり、再生の時を刻む。』

 私は白い人形。悪魔の女神の娘。銀色の髪に白い手足。透き通る海の様な青い瞳をもつ少女……大好きな母が、私を生んでくれた。この姿は、私だけのもの。


 病弱で体は弱かった。痛みですぐに気絶していた。何もできない弱い自分が嫌いで、とても苦しんだ。それでも、私はわたし。どんなに苦しくても、必死に生きるしかない。生きていれば、必ず変化は起きる。親不孝なことしてきたから、親孝行しないとね。私は母の城から出て、大切なことに気づいたけど、まだ1ヶ月も経っていないね。本当に短い時間。再生と終焉の時の中で……。


 何もできなかった私からすれば、一生一度の大冒険だったよ? これからも歩むことができれば……私だけの時―再生の時を刻んでいく。最後に振り返った時に、私の再生の旅といえるものになっていればいいな。


 私は自分のことを信じられる様になりました。自分のことを愛せる様になりました。それができる様になったのは、大切な人が傍にいてくれたから……人じゃないけど、細かいことは気にしない。聖痕の少女、聖ちゃん。白い瞳のルーン。


 今までずっと、貴方が傍にいてくれたからです。ずっと傍にいて欲しかったのに……ルーン、私に酷いことをしたよね? 私に相談せずに、勝手に決めた。私の傍から離れた。とても悲しかった。私は、一人になりたくないのに。ルーン、謝っても許さないよ? 絶対に許さない。私も、勝手に決めたから……ルーンが二度と離れない様に、私たちの同化を進めることにしたの。


 『わ、わたし……力ないからね!? しっかり抱えていてね!?

 高いところから落ちるのは嫌だよ~。』


 『大丈夫だって……もう離さないから、絶対に。』


 私は、黒髪の吸血鬼の少女を優しく抱きしめる。絶対に二度と離さない。ルーン、貴方の姿が変わっても……吸血鬼になっても、ルーンはルーンだよ。私の大切な人。吸血鬼だから、最愛の魔物だね。



 『悪魔の女神の極界魔術。

  帰天きてんの刻―終焉の時。』



 悪魔の女神に導かれ、白き人形は役目を知る。美しい女神は、自分の娘を捜して……正気を失った悪魔の女神は、崩壊する世界を彷徨っている。白き人形のノルンとルーンは、霧の異界ケイオスに辿り着き……大好きな母を、悪魔の女神を捜す。そして、役目を果たすだろう。


 愛しい魔物、白い瞳のルーン・グローリアと共に、傲慢の霧の女神ウルズと共に、白き人形の役目を……異界の女神として。 


 でも、それはもう少し先のお話。白い人形のノルンは、希望の魔女になれたけど……まだ、異界の女神にはなれていない。母の様な強さを手に入れていないから。残念だけど、時の女神の娘ノルン―天の創造主には勝てない。今はまだ勝てないけど……白き人形が進む先に、何が待っているのか。いつか、女神の子らは為したいことではなく、為すべきことを為すだろう。


 大好きな母、悪魔の女神に代わって……うん、お母さん。大丈夫、私は強くなったよ。現実を受け入れて、いつか、きっとお母さんを助けるから。だから、待っていてよ。私たち親子は、待つのは得意でしょう? 



 『極星極界魔術・

  帰天きてんの刻―再生の時。』



 私の時の魔術が、私たちの存在を認めてくれている。私には大きな夢がある。私は弱肉強食や自然淘汰が嫌いだ。私は奇跡を信じている。誰も傷つかない、誰も不幸にならない。誰もが幸せになれる世界を創りたい。私とルーン、白い人形の夢。ううん、違う。私たちだけの夢ではないはず……皆だって、魂のどこかで、そんな世界になればいいと思っているよね? それなら、これは生きとし生けるものの夢にもなれる。そう思いたい。


 希望の魔女は、再生の時を刻む、白く光り輝く輪を操るもの。私の再生の時で、迷い星テラの時を正常に戻す。減速してしまった、迷い星の時の流れを加速させて……迷い星の魔力に反応して、白き輪が大きくなっていく。



 私は冷酷な天の創造主を癒す。いつか必ず、時の女神の娘―全知全能(欠落)を癒すのだ。


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