時の間「白い瞳のルーン・グローリアの冒険日記①」

 これは、黒髪の吸血鬼の少女、グローリアの日記です。彼女は、を思い出しながら、ペンを走らせていきます。


 第七の刻―時の封印。……水の都ラス・フェルトの広場、日の光ではない青い光を浴びながら、湧き上がる思いを書いていきます。



 これは、少し先のお話です。


 ここは霧の異界ケイオスにある迷い星テラ、唯一の人間の都ラス・フェルト。この都の住人たちは、最初はとても驚いていました。猫の耳と尻尾が生えた獣人や、蝙蝠こうもりの様な羽と、怪しく光る赤い眼をもつ吸血鬼たちに……初めて見る魔物。距離をとろうとするのは普通ですよね。



 でも、この都には、心の強い人たちが住んでいます。住人たちは、強くて優しい心をもっています。たぶん、ノルンのお陰……ノルンが、この都を救ってくれたからだよ?



 ラス・フェルトの住人たちは、同じ人間ではないのに、私たちと仲良くなろうと努力してくれています。水の都を維持していくには、必要なものがいっぱいいります。都を守る為に……ノルンが守ってくれた都を残す為に、得体の知らない魔物にも、手を伸ばそうとしてくれています。



 確かに水の都で一緒に住むこと、すぐに共に行動することはできません。今の状況では不可能です……私たち、吸血鬼にとって、人の血は好物です。お腹が減ると、食べたくなります。


 

 私たちは、絶対に間違えていけません。ラス・フェルトの人間たちの様に努力しないと……養母様おかあさまの命令は絶対です。


 堕落神―養母様おかあさまは、水の都の住人を、絶対に食べてはいけないとおっしゃりました……人の血を吸いたくなっても、別のもので我慢しないといけません。生き残れる別の方法を考えないといけません。


 この都、希望の都では人や魔物、そんな小さなことを気にしている暇はありません。終焉の時の中で、迷い星テラの中で最後まで生き残ろうとしている、大切な仲間です……そうだよね、ノルン。



 女神の終焉の時は、女神が歩んだ道そのもの。


 第七の刻―時の封印によって、ノルンは、過去の天上戦争時の堕落神と同じ状況になってしまいました。女神の時は、一番目の原始の刻から始まり……十二番目の帰天きてんの刻で終わります。我儘な悪いノルンが、そう言っていました。


 元始の刻、時の化身として生まれて……帰天きてんの刻で、天国に帰ってくる。そして、創造主が用意した最後の選択の時、母と娘の決闘が行われる。



 ノルン、これは貴方の為に書いています。貴方の目の前で。


 ノルン、私の声が聞こえていますか? 私は貴方に触れたい。貴方の傍にいたい。でも、この青い水晶が邪魔をします。


 あの時、ノルンは二人いました。うん、やっぱり二人いた。どっちもノルンです。ドッペルゲンガー……同じ服を着たら、私でも迷うかも。


 時の女神の娘ノルン―全知全能なる天の神と、悪魔の女神の娘ノルン―白き人形、希望の魔女。この二人は識別して分けることができないくらい、難しくややこしい。


 だから、二人の新しい呼び名を決めようと思うの。ウルズお姉ちゃんにも相談したら、笑顔で考えてあげるって言ってくれたよ。


 まだ決まっていないけど、今は我儘な悪い子のノルンと可愛いお人形さんのノルンと呼ぶね? 私の可愛いお人形さん……その手に持っているのは、我儘な悪い子の白いローブだよね。


 嫌いな邪神フィリスが着ているものと同じみたい。それをすぐに捨てたいんだけど、この水晶を壊せなくて……ごめんね。可愛いお人形さん、私が必ず助ける。必ずここから出してあげる。


 だから、もう少しだけ、ここで待っていて。



 女神の終焉の時。我儘な悪い子は、女神の時を世界に示した。元始の刻―時の化身。第二の刻―惑星招来。第三の刻―審判の時。第四と第五の刻があって……第六の刻―騎士の軍勢。



 天上戦争。我儘な天の神によって、戦いの火蓋ひぶたが切られた。



 第二の刻―惑星招来。堕落神の星々や私たちが知らない、異界の星々―天国の鍵(天のピース)があると思われる、星々も巻き込まれた。


 それに加えて、真上にある精霊の世界から、一つの星が落ちてきたの。精霊だけが住む、珍しい星。



 迷い星テラも含めたら、全部で11の惑星。養母様おかあさまが、見知らぬ宇宙船を見つけたって言ってた。古代エルフ文明のものらしいけど……我儘な悪い子は、本当にめんどくさいことするよね。



 迷い星フィリスは、近くにいないの。後から登場するつもり?


 邪神だけ、地獄に留まって……罪のない人々を解放してくれたらいいのに。ミトラさんやフレイ様がいるから、何とかしてくれると思うけど。



 ねえ、可愛いお人形のノルン。女神に頼まれたことを覚えてる?

 

 迷い星フィリスにある6つの災いの地に、ノルンと同じ様に苦しんでいる者がいて……彼らを苦しみから解放できれば、ノルンも痛みから解放される。


 可愛いお人形さんは、再生の時を呼べる様になったから……痛みから解放されつつある。少しずつ叶い始めているのかな? 



 可愛いお人形さんの再生の時。あれは女神の真似だよね? 


 元始の刻(始まりの時)―白き人形は動き出す。

 第二の刻―白き人形は、再生の聖痕と対面する。


 第三の刻―青のお嬢様は、白き人形に課せられた役目を知る。

 第四の刻―悪魔の女神に導かれ、白き人形は役目を知る。

 

 第五の刻―地獄での選択の時、再生の聖痕は役目を果たす。



 そして、第六の刻―白き人形は希望の魔女となり、再生の時を刻む。



 今はまだ半分だけど……これから諦めずに進んでいけば、十二番目―帰天の刻までいけるよね? 可愛いお人形さん、私は信じているよ。



 それにしても、可愛いお人形さんが、女神の時:第七の刻―時の封印で、堕落神と同じ目に遭うなんて……我儘なノルンは本当に悪い子だよ。



 ねえ、可愛いお人形さんが守った、この都は……水の都ラス・フェルトは、私が必ず守ってみせる。愚か者、狂王の兵士が攻めてきても、私が撃退する。


 ウルズお姉ちゃんの時の魔術―傲慢な女神の時の逆転リバース。一時的だけど、白い人形に戻れたよ。悪魔の女神の霧が力を貸してくれるの。


 私だって戦える。私は大丈夫、もう勝手なことはしないから……もう離れたりしない。私は、必ずここに帰ってくる。また、可愛いお人形さんに会いにくるからね。それじゃあ、また後で。ノルン……また、明日。



 ラス・フェルトの住人に幸あれ。魔物の吸血鬼や獣人にも幸あれ。私と養母様おかあさま、そして、可愛いお人形さんのノルンと、悪魔の女神様が幸せに、一緒に暮らせます様に……。


                          ルーン・グローリア。

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