第55話『希望の魔女ノルン VS 天を狂信する地獄の悪魔デュレス・ヨハン……水の都ラス・フェルトでの決闘①』
青い瞳のノルンは、白い霧の希望に手を伸ばした。
ただ、白い瞳のルーンが、ノルンの魂を食べてしまった為……足らない。青い瞳のノルンがなりたいものになるには、魂が不足していた。
ピッ……ピ、ピッ!……テラの大樹が計算した。
※テラの大樹、テラ・システム。
希望の聖痕(90) → ノルンの希望、不足。
強欲の烙印(10) → ルーンの強欲、増加中。
→テラの大樹が保有している人の魂の数、約21000。グルムドの兵士の魂:約20000。水の都ラス・フェルト、転移の為に必要、消費不可。
でも、まだ人の魂がある。狂信者が殺して、白い人形のウルズに渡した魂が……ラス・フェルトの住人の魂の数、1000。
千人分の魂、水の都の住人の魂を食べれば……霧の人形への成長を促せば……テラの大樹は、ノルンの背中を押した。
『ノルン……逃げないのなら、人の魂を食べて。
逃げない、食べない……駄目。
ノルン……こいつに勝たないといけない。
負けたら、グルムドの兵士の魂……人の魂、全て失う。
ノルンが、こいつに負ける……私は絶対に嫌。
どんな手を使っても……ノルンを勝たせる。
だから、ノルン……人の魂を食べて。
千人分……皆、こいつに殺された。
皆の代わりに……こいつに復讐を。
水の都の住人の魂……全員ではないけど、
殆どの者が……そう思ってる。
だから、ノルン……人の魂を食べて!』
白い人形のノルンはもう迷わない。テラの大樹に促されて、白い霧の希望を掴んだ。白い霧が、白い人形を包み込んでいく……。
狂信者が保有している、三つの天のピース……ヘブンズ・システムが、青い瞳の少女の変化……成長を捉えた。青い瞳のノルンは、霧の人形になろうとしている。
※時の女神の落とし物―天国の鍵(天のピース)。
砕けた、10個の欠片―No.1~No.10。
No.1-テラの大樹、テラ・システム。
No.2-水の都ラス・フェルトにあり?
保持者―フェル・リィリア?
No.3~No.5-聖神フィリス、ヘブンズ・システム。
保持者―狂信者デュレス・ヨハン。
ヘブンズ・システムは、聖神フィリスに伝えた。聖神フィリスを操る、天の創造主にも……ここはあらゆる世界の真上に存在する、天国。
赤色や黄色に、白色の花。色とりどりの花が咲き誇っている。美しい花畑、その花畑に、時の女神の娘がいた。
白い手足に銀色の髪。海の様に透き通る、青い瞳をもつ少女……天国で女神を待ち続けている。
時の女神の娘―天の創造主は驚いた。
狂信者が負ける。青い瞳のノルンと狂信者デュレス・ヨハン、水の都ラス・フェルトでの決闘で……その終わりが見えたから。
《デュレス君、負けるね。
彼が死んでも、僕が再誕させるけど……。
それにしても、ノルン……君は素晴らしい。
成長して、霧の人形になる。
今、白い瞳のルーンが、希望の聖痕を……。
ノルンの魂を食べているから、一時的なものかな?
ヒーローの変身みたいでかっこいいね。
青のお嬢様は、希望の魔女ノルンに……。
さて、どうしようかな。
君が少しの間だけ、希望の魔女になるのはいいけど、
最後は青のお嬢様に戻らないといけない。
ノルン、君には大切な役目がある。
青のお嬢様として……。
天国で、悪魔の女神に会わないといけないのに。
君は本当に予測し辛い……。
念のため、近くで見た方がいいね。
悪魔の女神との距離は、
まだ離れているし……うん、決めた。
ノルン、今から会いにいくよ。
目の前で、決闘を見させてもらうね。》
白い人形と狂信者、水の都ラス・フェルトでの決闘……水の都の外で、白い人形のノルンは、白い霧に包まれていた。霧の中で、人形のノルンは呟く。
『デュレス・ヨハン……。
お前は、私が成長して、
立派な霧の人形になるのを見てみたい。
……そう言ったよね?』
白い霧が晴れていく。白い人形のノルンは、水の都の住人、千人分の魂を食べた……青い瞳の少女は、人の魂を喰らって成長していく。
幼い霧の人形―青のお嬢様の時と比べると、少し背が伸びた。
白い瞳のルーンと同じ身長に……少し大きくなっただけではない。銀のガントレットやグリーブ。そして、腰から生えた白い翼……。
ノルンの極星魔術―希望の聖痕。
白い翼は、白い霧によってできている。姉たちと違って、肩から小さな白い文字は発生していない。腰から白い霧の翼が生えている。
ノルンの希望の翼は、時の魔術―再生の時を呼ぶ。いずれ……この地に、人形の安息の地が現れるだろう。
成長して、騎士の剣を持つノルンは大人ではないけど、15~16歳くらいに見える。大人の女性になろうとしていて、立派な霧の人形だった。
『今、見せてあげるよ……。
その代わり、ここで死んでね?』
白い瞳のルーンは、白い人形の夢の中で叫んだ。
ルーンは、もう一人の自分から眼を離すことができない。だって、ノルンは……人の魂を喰った。逃げずに、狂信者を殺そうとしている。
『!?……ノルン、駄目だよ。
そいつと戦ったら駄目!
速く逃げて……。
お願いだから、逃げてよ!』
白い瞳のルーンは、悪魔の女神の極界魔術―再生の聖痕であり……神聖文字(神生紀の文字に魔力が付与されている)に魂が宿った、変わった存在。
変わった存在……ノルンにそう言われた。
人形の夢の中にいたら、白い人形の体を操ることができない。白い瞳のルーンは、ノルンを止めることができなかった。
狂信者はとても喜んでいる。
白い霧の翼もつ者、天使が眼の前にいたから……天使を殺せる。悪魔として、これ以上の喜びはない。濁って、穢れた魂が、ノルンとの決闘を楽しんでいた。
《ノルン、貴方は最高だ!
私の主は、聖神フィリス様。
全ての頂点であり、天の創造主です!
天の創造主と悪魔の女神。
どちらがより偉大で、
最高神に相応しいか……貴方に説きましょう。
さあ、始めましょう!
ラス・フェルトでの決闘を!!》
白い霧の翼を羽ばたかせて、白い人形のノルンは斬りかかる。青い瞳の少女を殺した男、狂信者デュレス・ヨハンはまだ笑っていた。
狂信者の左腕から、漆黒の鎖が解放されて……複数の黒い鎖が、ノルンを襲う。白い人形の少女は、騎士神オーファンの魔力を得て加速した。狂信者に一気に肉薄。全力で騎士の剣を振り下ろした。
狂信者は、後方に下がりながら、漆黒の鎖を操って……ノルンの騎士の剣をはじく。白い人形の少女は下がらない。狂信者の黒い鎖を避けながら、前へ。さらに踏み込む。白い翼を強く羽ばたいて……騎士の剣を横から一閃!
狂信者の血が舞った。
白い瞳のルーンは、人形の夢の中で呟いた。
『ノルン、危ないのに……。
人の魂を食べて……こんなにも強くなって。』
白い人形を守るテラの大樹が、ルーンも促した。使えるもの、全て使わないといけない。白い人形のノルンが、狂信者に勝てる様に……。
『ルーン……ウルズに会いに行って。
白い人形のウルズ、今……夢の中にいるの。
白い人形の夢……人形の安息の地。
白い人形のウルズ……負傷している。
再生の聖痕なら……ウルズを助けられる。』
白い人形と狂信者の決闘を……人形の夢の中から、白い瞳のルーンが見ている。白い人形のノルンに、魔力が流れ込んできていた。星の外から、テラの大樹が運んでいる様で……白い瞳のルーンは、テラの大樹に聞いた。
『テラの大樹……どこから、魔力を運んできているの?
これ……千人分の人の魂だけじゃないよね?』
『私の星……迷い星テラから。
星に残っていた分……テラの魔力、限りがある。
ノルンと……惑星テラを強く結んだ。
千人分の魂……ノルンが食べた。
人の魔力で道を造った……人の魂を犠牲にした。』
今、ノルンの魂は不足している……希望の聖痕(90)。ルーンの強欲の烙印が増加しているので、千人分の人の魂を食べても、希望の聖痕は増えなかった。
天の創造主は、未来を見て知っている。
ノルンの魂―希望の聖痕が不足している。白い人形のノルンの成長は、一時的なもの。消費できる人の魂がなくなれば、元の姿……白い翼をもたない、青のお嬢様に戻ってしまう。
もし、白い人形のノルンが、青のお嬢様に戻らないことがあれば……時の女神の娘―天の創造主が、強制的に戻すことになる。
白い人形は、まだ……天の創造主には勝てないから。
※テラの大樹、テラ・システム。
希望の聖痕(90) → ノルンの希望、↓減少。
強欲の烙印(10) → ルーンの強欲、↑増加。
テラの大樹は考慮した。『ルーンの強欲の烙印……使えるかもしれない……可能なら、残しておきたい……まだ不足している……別の方法で補う。』
希望の聖痕は増えなかったけど……ノルンは人の魂を食べて成長した。効果はある……無意味ではない。
テラの大樹は、ノルンが食べた千人分の魂……その魔力を使って、一時的に星間循環システムを造り上げた。
不足している魂を、千人分の人の魂と迷い星テラの魔力で補ったのだ。
迷い星テラと白い人形の少女が深く結びつく。
でも、テラ・システムは、まだまだ未熟……星間循環システムを、いつまで維持できるか分からなかった。
念には念を入れて、テラの大樹は白い瞳のルーンも促す。
『ノルンは負けない……絶対に勝たせる。
ルーン……ノルンを助けて。』
『うん……もちろん!
ノルンはもう負けない。
今から反撃! 私たちは……必ず勝つ!』
人形の夢の中で、白い瞳のルーンは駆けた……白い霧の中を進んでいく。遠くに、白い霧と大樹の城があった。
白い人形のノルンは、テラの大樹の三つのシステムを全て起動。
テラ・システム―フェンリル、クロノス、ノルニル。騎士神オーファンの魔力に、テラの大樹の魔力も加わった。ノルンの依り代である、迷い星テラの魔力も……。
白い人形のノルンは加速する。
千人分の人の魔力を消費して……漆黒の鎖を飛び越える。迫りくる鎖を避けて、避けて、避け続ける。
白い霧の翼を羽ばたかせて、驚異的な反射神経で、漆黒の鎖をかわしていく。
ここに何もできずに、ただ泣いていた少女―青のお嬢様はいない。千人分の人の魂を喰らって、成長した……霧の人形がいた。
白い霧の翼を羽ばたかせる霧の人形は、騎士の剣を持ち、騎士神オーファンの力を受け継いでいる。
彼女は、6番目の霧の人形……希望の魔女ノルン、脅威度Aランク。
希望の魔女は、騎士の剣を振り続けた。
狂信者の腹部や首、太ももに深い傷ができ、血が噴き出している。脅威度で言えば、Fランク以下だった少女は、脅威度Aランクの領域に辿り着いた。
希望の魔女は止まらない。
今の状況は、狂信者が不利だった……にもかかわらず、彼は笑っている。
ここで、奇妙なことが起こった。狂信者の体が、ドロドロの黒い液体に包まれ始めた……これは招魂魔術。彼の体の中に隠れていた、真っ黒な魂が外にでてきた。
彼はドロドロの黒い悪魔となり、真っ赤な眼を開ける。
その姿は地獄の悪魔。狂信者は本性をさらけ出した。濁って、歪んで……壊れた魂も止まらない。
希望の魔女ノルンは驚かない。『正体をさらけ出した……今の姿の方がしっくりくる……ドロドロの黒い液体、赤い眼……これが、私が否定すべき悪魔の姿!』
漆黒の鎖が、黒い悪魔の肩からもとびだした。20本以上の黒い鎖が、鞭の様に動き、暴れまわる!
希望の魔女は、白い霧の中から5~6本の槍を呼びだした。
キィン! 狂信者の全身が、ドロドロの黒い液体に覆われて、漆黒の鎖の様に固くなっている。
希望の魔女の槍が弾かれてしまった。
暴れまわる漆黒の鎖が、希望の魔女ノルンに近づく!
希望の魔女は、システム―フェンリルで、鉄の盾を呼んだ。黒い鎖を、鉄の盾が受け止め……その隙に、狂信者から離れた。
狂信者デュレス・ヨハンは、正真正銘の悪魔。“魂を盗む、
彼は、天を狂信する地獄の悪魔。
狂信者デュレス・ヨハン、脅威度Aランク。
七つの元徳の一つ、信仰……狂信者デュレス・ヨハンは信仰の聖痕によって、主との結びつきが強くなった。
聖神フィリスや時の女神の娘―天の創造主と……。
創造主の膨大な魔力を授かり、狂信者は勝利を確信した。《白き翼……素晴らしい……貴方は素晴らしい! 貴方に、ぜひ説きたい!》
《聖神フィリス様の偉大さを……。
主は全ての父であり、全ての母だ。
主は天の創造主、その偉大さを!》
狂信する悪魔デュレス・ヨハンの右腕、聖神フィリスの神聖文字が怪しく光る。狂信する悪魔は、ドロドロの黒い右腕を天にかざした。
《ノルン、貴方に説こう!
女神から解放された、主の力を!
天を見よ、主は……常に我らと共におられる!》
惑星ラスを照らす太陽。
聖神フィリスの神聖文字が解放されると、太陽の光がより強くなった……白い光となり、惑星ラスに向かってくる。
聖神フィリスの極星魔術―白き太陽。
宙から……無数の光弾が、希望の魔女を襲った。
ゴォゴゴゴゴゴゴゴ—! 光弾は降り注ぐ。なだらかな丘はなくなり……光弾の落下地点には、無数のクレーターができていた。
奇跡的に、水の都ラス・フェルトは無事。水の都から逃げた、グルムドの兵士たちは巻き込まれてしまっただろう。
太陽の光弾は、鳥や犬……木や花、そして人も襲った。宙から降る無数の光は、惑星ラスの生命を燃やし尽くしていく。
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