第1章と第2章の世界観・登場人物

『時の書―白い人形の世界観・堕落神・霧の人形』



①「始まりは、天の創造主。」


 最初は何もなかった。天の創造主がそこに降りた。創造主は何でもできる。できないことなどない……全知全能。

 


 全知全能である創造主にとって、あらゆるものが小さかった。世界が小さすぎて、中に入ることができない。



 ではどうやって、創造主は……何もないここに降りたのか?


 

 ただ単純に自分を小さくした。



 自分自身から、二つのものを捨てた……光と時を。


 光と時を捨てた創造主は、今は……全知全能ではない。故に、ここに存在できる。



 

 創造主は、捨てた光と時に名を与える。

 

 光の女神フェルフェスティ。時の女神ノルフェスティと……。



 創造主は、すぐに全知全能となった。ここに存在することはできない。高みへと戻る前に、天国と地獄を創った。




②「世界―天国と地獄の二極。その間に三層。」


 天国と地獄。その間には何もない。光の女神フェルフェは、光の魔術を行使した。白い閃光。光が消えたあと、光の残滓ざんしが残った。光の残滓は、精霊となり……上に集まっていく。やがて、天国の真下に、精霊の世界ができた。



 時の女神ノルフェスティは、精霊の世界の真下で、時の魔術を行使した。あらゆる時が解放されて……いろんなものが入り込む。やがて、数えきれない程の世界が交差する様になり、異なる世界―異界と呼ばれる様になる。



 異界の住人は、光の女神と時の女神を信仰した。二つの層に因んで、光の女神のことを精霊の女神、時の女神のことを異界の女神と呼ぶものもいる。



 時の女神ノルフェスティは、天国から堕ちた。


 光の女神フェルフェと天上の神々は、天国から姿を消した。異界の真下に、霧の世界フォールが生まれ……あらゆる世界は、終焉へと向かっていく。




③「霧の世界フォール―第三惑星フィリス」


 白い太陽の周りを回る、緑豊かな惑星。異界の女神が、フィリスと名付けた。神生紀には、12の惑星があった。今は、6つの惑星しかない。惑星の残骸は宇宙空間を漂っている。女神の白い霧が楔となっている為、残骸が惑星に衝突することは起きていない。



 惑星フィリスには、4つの大陸と3つの海がある。


 一番大きな海は、「女神の雫」。



 女神の雫の東(白い太陽が昇る方位)には、「ロンバルト大陸」と「白い霧の大陸」女神の雫の西(白い太陽が沈む方位)には、「聖フィリス大陸」と「名も無き大陸(魔物の支配地)」がある。



 聖フィリス大陸の西にある海は、海の魔物が殆ど生息しておらず、「女神の祝福」と呼ばれている。ロンバルト大陸への安全な航路もあり、人の交流が盛んであった。逆に、惑星フィリスの北極と南極にある海は、「女神の怒り」と呼ばれ、脅威度の高い魔物が、多く確認されていた。



 冒険者ギルド。ロンバルト大陸と聖フィリス大陸にある、百十国は、冒険者制度を採用している。町の中心には、聖フィリス教会と冒険者ギルドがある。そう言われる程、人の生活に馴染んでいるものだった。


 依頼は様々で、貴重な植物や鉱物の採集依頼。盗賊や魔物の討伐依頼など。冒険者ランク―Bランク以上になると、各国の貴族の依頼を受けることもできた。大抵、依頼を断っても、厄介ごとに巻き込まれることになるが……。


 

 冒険者ランクも存在する。下からF、E、D、C、B、A、S。


 Fランクは初心者。殆どが、15歳以下の子供である。受けることができる依頼は、植物と鉱物の採集依頼しかない。冒険者ギルドには指導員がおり、冒険者として必要な知識、戦術を学んでいく。


 上位のランクに上がるには、昇級試験に合格しないといけない。例え脅威度Cランクの魔物や悪魔を倒せたとしても、試験に合格できなければ……Fランクのままである。


 因みに、Bランク以上は昇級試験に合格しても、ランクは上がらない。ギルドの長、ギルドマスターや各国の貴族の承認を得なければいけない。


 Sランクは……2年に一度行われる、百十国祭で、各国の王の承認を得なければならず……過去十年間、誰も選ばれてはいなかった。



 脅威度。冒険者ギルドは、魔物や悪魔を評価して、冒険者に脅威度という形で示している。脅威度も、下からF、E、D、C、B、A、S。


 魔物は人より強いが、数は人の方が多い。Eランクでも数人で対峙しなければならない。Cランクでは驚異的な強さを誇り、統制された集団が必要だった。三大魔王―魔物の王でさえ、Bランク。


 Aランクは、堕落した神々や、女神の娘である、霧の人形。


 Sランクは、ただ一人……悪魔の女神のみである。





④「霧の世界フォールの神生紀文明」

 

 神生紀。異界の女神が現れ、白い霧が生まれ、12の神が誕生した時代。人や魔物の神の加護のもと、人や魔物の文明は、急速に発展した。数多くの宇宙船が飛び……転移装置によって、自由に12の惑星を行き来できた。異界の門を解明し、異界へと辿りついたとも言われている。


 しかし、12の神は栄華を極め……堕落した。神生紀の後期に起こった、「天上戦争」によって、6つの星が破壊される。星という依代を失った、神々は力を失い、女神の白い霧にのみ込まれる。残った神々も、悪魔の女神によって、第三惑星フィリスに封印されたのである。



 惑星フィリスに、封印された神々。

 ・人の神 第二惑星フレイ、第三惑星フィリス、第六惑星オーファン。


 ・魔物の神 第一惑星イグニス、第九惑星グレンデル。

  第十一惑星、名無し(吸血鬼の娘。存在しているが、名は失われている)。


 6つの惑星(第四、第五、第七、第八、第十、第十二)は破壊され、惑星の残骸は、宇宙空間を漂っている。その量は膨大で、女神の白い霧が、楔となっていなければ……破滅の炎が、星を襲っていただろう。


 人や魔物の神が封印され、最初の霧の人形が現れた。最初の人形は、悪魔の大厄災を起こし、神生紀文明を滅ぼした。




⑤「悪魔の大厄災」

 

 黒い霧の中から現れる、腐敗した悪魔は、全てを刈り取っていく。どんな魂も逃がさない。霧が晴れると、なにも残っていない。人や魔物を殺し続けた、悪魔でさえ、自身の魔力が尽きて死ぬ。


 死体と瓦礫。人や魔物、悪魔の死体は腐り、食物が育たない不毛な地となる。惑星フィリスには、12の災いの地があった。6つの災いの地は、堕落神が封印され、その瘴気によって腐った場所。残りの災いの地は、「悪魔の大厄災」によって発生したものである。




⑥「霧の人形」―現在、5体確認されている。


 脅威度―Aランク。「霧の人形―女神の娘。星の核を保有し、女神のスキルを受け継ぐ者。白い体と銀色の髪は同じだが、瞳は違った。燃え盛る様な赤い瞳、爆ぜる様な黄色の瞳。安らぎを与える緑の瞳―宝石の様に見る者を惹きつける。


 人形は、破滅の象徴であり、保有する星の核から、二つの霧を発生させる。女神が創った白い霧は、霧自体は無害で……魔晶石の微粒子であることから利用価値は高い。上級魔術の源とすれば、大いなる力となるだろう。術者の魂は、悪魔に奪われることになるが……。


 解明されていないが、白い霧は、ある条件下で黒い霧―黒い瘴気に変わる。瘴気を生む神殿―堕落神の星の核からも、黒い瘴気が発生する事は確認されているが、「悪魔の大厄災」が起こったことはない。



 「悪魔の大厄災」を起こすのは、霧の人形である。人形が白い霧を黒い瘴気に変え、悪魔を狂わせる。狂った悪魔は腐敗し、全て壊すのだ。人や魔物に等しい災いをもたらす。人形は、人や魔物を罰する為に生まれたものだと考えられている。


 

 最初の人形が現れたのは、天上戦争時である。星が壊れ、人や魔物が大混乱に陥った時、「悪魔の大厄災」を起こし……人や魔物に止めを刺した。黒い霧から現れた腐敗した悪魔は、人や魔物、悪魔さえも殺して……全て壊して、文明を滅ぼした。


 

 現在、人形の姿は確認されていない。霧の人形達は、白い霧の中に帰っていったと考えられている。


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