第12話 朝秋村での文
道取りは長かった。
お梅はなぜか裸足だった、だから自分の下駄を履いた。
もう一つ、お梅の足は私の足より小さかった。その分下駄がお梅の足に合わなく、その分足の痛みがひどかった。下駄を脱ぎ捨て、道を裸足で歩く。道の上に転がっている小石が足に刺さり下駄で出来た傷も少々痛かった。まだ私が小さな
「懐かしいな」夕焼けの中一人でつぶやいた。
自分の声がお梅と重なった。夕焼けの中、
確かに、旅人が口を揃えて「
「こんなところで、死んではいけないのだ。」とあの時言った言葉をもう一度口にした。
あの日は記念日のような感覚だった、いや記念日だったのだ。記憶を、自分の脳に刻まれている歴史を思い返す。今日はあの日の記念日だった。日が落ちた時思い出した。
星が夜の原っぱを駆け抜ける白狐のように流れた。
道を踏みしめるたび味わう小さな怖さを感じた。「夜空から落ちてゆくのではではないか」という怖さ。空を歩くような幻を想像した。ある意味、幻想的だ。
「うわっ!!」足を踏みはずし、転んだ。
幸いなんの怪我もしなかったが、ちょうど村の眼の前まで来た。それも、村人の目の前で転んだ。
『あぁ、』と一人で固まった。
村の人たちは「なんだなんだ」とびっくりし、転んだ私を見た。一人は尻餅をつき、もう一人は叫んだ。
「血だ、血だ!!」女子には悲鳴を上げられた。
やばい、言い訳をしなければと歯を食いしばり、演技をした。
「助けてください、山賊に襲われたんです!!」お腹を抱え、一芝居を見せた。あ幸い、私には荷物というものがなかった。それゆえ、血痕もこのお梅の体からあふれたものだった。
足をくじいたのも事実であったし、小石が刺さった足に「ゆっくり歩いた」という印象よりも「走って逃げた」という印象が強かった。上手くごまかせると願った。
願い通り、村の人々は私をかくまった。
とある女の百姓が私を彼女の家に招き入れた、そこに彼女の夫と子供二人が私を暖かく迎い入れてくれた。
「山賊に襲われたんだって?聞いたよ。確かによくこの村の綺麗な夕焼けを見るために旅人が訪れるんだ。そこで荷物を狙ってくる山賊がいるんだよ。たしか『
「とうちゃん、たしか
「その話をしてはいけません。」と会話を挟んだのは女百姓、
「えぇえ」と子供と父親が嘆く、仲良しのようだ。
「すみませんね、こんな騒がしい家族で。えぇっと、お梅さんでしたっけ…?」
「えぇ、呼び捨てでも構いません。今日は本当にありがとうございます。」
「いえいえ、こちらこそ。子供達も珍しいお客様に喜んでいて、しかもこんなに美人の方!どうぞゆっくりしていってくださいね、今夜はちょっと冷えますから。」
子供達が眠そうにしている目をこすり、
「じゃ、私たちはもう別の部屋にて寝ているのでなにかが必要でしたら遠慮なく教えてください。では、おやすみなさい。」子供一人づつ抱えた静恵とその夫はそっと部屋を出た。
私も「おやすみなさい」と一言つき、紙を取り出した。
呪われた村、
多分呪われた村は、
歴兄への文で問おう、そう判断した。
「拝啓、歴兄様へ。
この度、
そして、できるだけこの手紙は『
人界で私は13
ここでは奇跡的に
ですが、13年目。
歴史の鬼の兄様ならばもうご存知だとは思いますが、私には何故娘様が村長を殺し私を殺そうとする不思議な行動を起こそうと思ったのかが不明なのです。なので、もしこの文を読み返事をくださいますのであれば、どうかこの不明点を教えてくださいませ。
ここで本題なのですが、13年前私は
ですが、実際13年もそこにいた私はそんなことを聞いたこともありません。この山賊云々のことは
筆を下ろし、紙をたたみ、筒に入れた。
誰にも感づかれないように小さく隙間を開け、手紙を入れた。
明かりを消した後の夜の静けさと星の光はまだ幻想的で、
小さくため息をついた後、気を失うように眠りについた。
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