消化管の機能と構造Ⅲ

絨毛を構成する吸収上皮細胞は24時間で新しい細胞に入れ替わる

吸収上皮細胞は25μmの大型円柱上皮細胞で、細胞の上面には刷子縁というエオジンに好染する幅1μmほどの縁取りが見られる。陰窩で増殖した吸収上皮細胞は、(絨毛の先端まで2~4日かけてエスカレーター式に移動)し脱落する。(絨毛の根部から先端までは24時間)しかかからない。杯細胞は吸収上皮細胞の間に散在。多数の粘液顆粒を含むため細胞は膨らむ。パネート細胞(Paneth cell) は、小腸に特有の細胞である。陰窩の底に数個かたまって存在する。2種類の顆粒を持つ。一つは(リゾチーム)を含み腸内細菌叢をコントロールしている。もう一つは(ライソゾーム)を含んでいる。



絨毛の内部にはリンパ管と毛細血管がある

絨毛は、小腸内腔に突出した高さ1mm前後の指状の突起である。絨毛の芯をなす粘膜固有層の中心に、あたかも組織の裂け目のように見える空隙がある。これを(中心リンパ管といい、脂肪を回収する)ための装置。

上皮細胞の直下には毛細血管が発達し、中心リンパ管の外側を網のように覆う。細胞間腔の(糖やアミノ酸は、毛細血管に回収)。この毛細血管内皮は有窓性。



微絨毛の膜が最終的な消化吸収の場である

微絨毛の表面は(糖鎖の厚い層)が覆う。これを糖衣とよぶ。糖衣は負に荷電しているため、物質に対し選択的濾過能を有する。

微絨毛の膜には、消化の最終過程を担う二糖類分解酵素、オリゴペプチダーゼなどが組み込まれており、これらの酵素により栄養素はその最小単位である(単糖、アミノ酸に分解)。この過程を膜消化という。単糖、アミノ酸は直ちに(細胞内に取り込まれ)、細胞側面あるいは底面から細胞間腔に放出され、毛細血管に入る。

(中性脂肪は、膵液中のリパーゼ)により脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解され、胆汁酸塩と混じりミセルとなって微絨毛表面に達する。微絨毛の膜はリン脂質でできているから、ミセル内の(脂質は単純拡散により膜を通過し)細胞内に吸収。その後、滑面小胞体で再合成され、ゴルジ装置で修飾を受けて、カイロミクロンやリポ蛋白粒子となり細胞間腔に放出され中心リンパ管に入る。



小腸の運動は局所収縮と伝播(でんぱ)性収縮の二つに分けられる

(局所収縮運動)はほとんど伝播性のない収縮であり、おもに輪走筋の収縮が強いときに認める。くびれによって小腸の内容物は小さく分けられるとともに、内容物は前後に動いて消化液と混合。くびれは、だいたい0.5~1センチメートルの間隔で生じ、ヒトの十二指腸では毎分11~14回繰り返される。

(伝播性収縮は蠕動(ぜんどう))といわれるもので、環状の収縮部が小腸の上方から下方へと伝わる。この運動によって、内容物は肛門側へ移動していく。この蠕動は、毎分12回ほど。



大腸は盲腸、結腸、直腸に区分

大腸は、回腸に続く消化管であり、盲腸 → 結腸(上行結腸 → 横行結腸 → 下行結腸 → S状結腸) →直腸 → 肛門に終わる。(結腸は水分を吸収)して糞便として固め、直腸へ押し出す。小腸で消化・吸収されなかった炭水化物、特に(セルロース)は、腸内細菌の働きで低脂肪酸に変えられ大腸粘膜から吸収。



大腸上皮には杯細胞が多数存在し、大腸の内腔を潤滑

大腸の主な機能は、回腸から送られてきた消化不能な内容物から、(水と電解質を吸収)して、糞便としてまとめる排出させる。大腸の細胞は消化酵素は産生しない。



回盲部は、小腸と大腸の境

回腸の末端が盲腸内に突出して(回盲弁)となり、逆流を防いでいる。食事をとることで胃回腸反射により、1日約1,500mLの腸内容が盲腸に送られる。回盲弁は能動的に開閉するものではなく、回腸からの腸内容物の(圧力で開き、逆流を防ぐ役割)。

回盲部で回腸が腸間膜とともに盲腸・結腸に入り込んでしまうことがある。これを(腸重積症)といい、乳幼児に起こりやすい。

虫垂は、回腸の背面を通る虫垂間膜により吊り下げられる。組織構造は結腸に似ているが、虫垂の大きな特徴は、(胚中心をもつリンパ小節が多数見られる)。

体に必要ない組織と考えられてきたが、腸に(免疫細胞)を供給し、腸内細菌のバランスを保っていると言われている。何らかの原因で化膿した病変が(虫垂炎)。



直腸の下1/3は、漿膜を欠き周囲組織と直に接する

直腸の下部は、いったん膨らみ、その後狭くなる。この狭い領域を(肛門管)といい、約4cm。肛門管は粘膜(円柱上皮)から皮膚(扁平上皮)への移行部位である。

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