033 時には夢を見たいと思うことがあるXVII
本選が始まったとき、俺達は一回戦は
ゲームカウントは1—2で劣勢。30—40、相手のブレイクポイントだった。
サーバーの夏目は一球目、ネットに引っかかりフォルト。二球目、少し間を置きながら威力を落として入れるだけのサーブを打った。
ボールはサービスボックスに入るがそれを相手の男性が勢いよくクロス側にいる夏目の方に向かって強打を打ち込み。
まだ、サーブの体勢から持ち直しばかりの夏目はフォームを崩しながら無理やりラケットにあってようとするが、フレームに当たり変な返し方になってボールは上へ高く上がり、やがて落下してくる。
ネットは超えずに、地面に落ちた後バックスピンをして戻っていった。
「ゲームカウント
審判は声をあげてコールする。
やっと来たか……。
俺はその時、思った。後ろにいる夏目がどういう気持ちで今いるのだろうか。これから彼女自身どう立ち直すのか。少し、焦りもした・
「夏目。大丈夫か?」
ベンチに戻ると死んだ目の魚のような表情をしている
「あ、うん。まあ、なんとか……」
言葉数も少なければ、息も上がっている。
やっぱり、相当効いているな。これはちょっとやりすぎたか?でも、これから、逆転しない限り夏目は一生負け組のままだ。それでは冬月や先生に合わせる顔がない……。ここは何か励ましの言葉でもかけておくか。
「ど、どんまいだ。まあ、確かに人には失敗だったある。でもな、それでうじうじしていたら一歩も前で進まない。この後が大事だ。過去の事は仕方が無い。切り替えろ」
夏目は少し涙目になっている。そんなに俺は悪いことでも言ったのか?ああ、もう。面倒くせぇー。
俺は頭をかきながら話を続けた。
「失敗がなんだ。自分を信じろ。肩の力を抜け。俺のことは気にせずに自分のプレーに集中しろ。勝ちにこだわるな」
夏目は頭にタオルをかぶり、こちらを見る。少し、太陽の光でどういう様子なのか分からない。
「天道君は私が失敗しても大丈夫だと思っているの?」
「まあ、本心を言えば『何やっているんだよ。馬鹿じゃねーの』くらいは思っているな」
「う、う————」
夏目は少し落ち込む。
「そんなに落ち込むな。実際はお前に失敗してもらうために仕組んだことだしな。失敗には誰にだってある。読み間違えるとか色々とあるだろ。でも、それをしっかりと分かっていればいいんだよ。同じ失敗をしなければな……」
「わかった。でも、納得いかない」
夏目は俺に向かって文句を言う。
「何がだよ……」
「こんなひねくれた仕組みの事だよ」
「その話は後にしろ。試合が始まるぞ」
俺はあやふやにしながらラケットを持って、コートに出た。そして、相手のサービスゲームから試合が再開される。
試合は
俺たちは市の準決勝で敗退し、ベスト4止まりだった。
優勝は俺たちに勝ったペアで最後の閉会式に賞状とタオルを主催者側から受け取り全日程がすべて終了した。
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