030 時には夢を見たいと思うことがあるXIV
「え、いきなり優勝目指すの? それに私、ダブルスは基本苦手だし、もっとも男子とのペアなんか組んだことない」
と疑問を言い出した後、不満と文句しか言わない。それから、俺の方をじっと睨みつけてくる。
「大丈夫だ。俺もシングルス派だ。ダブルスなんてあまりやったことはない。安心しろ」
「安心できないから」
「まあ、ともあれ郷に入っては
「そこはしっかりしているんだ」
夏目は呆れてしぶしぶと財布を取り出して、俺に料金を支払うとトーナメント表を受け取って俺たちの名前を探し始めた。
「え——と、男女混合ミックスダブルスはAブロックからFブロックまでで一ブロックに四組入っているんだ」
「そうだ。そして、決勝トーナメントに進めるのは各ブロック二組まで俺たちはCブロックに入っているがまあ、他のペアを見たところ余裕で予選は通過できるだろう。問題は本選だ。お前が失敗しないこと。俺から言えるのはこれだけだ」
俺は
「準備運動はしっかりやっておけよ」
そう言って俺は自動販売機の方へ向かった。
「ちょっと、待ちなさい」
冬月は俺を呼び止める。
「……なんだよ」
「私も着いて行くわ」
冬月は俺の
「それで何を企んでいるの?」
「別に何も……」
自動販売機の前で缶コーヒーを飲みながら手すりに寄り掛かる。それにしても駐車場には人が多く。近くのグラウンドでは少年サッカーの試合があるらしい。
「別に何もじゃないでしょ。何か考えがあるからこんな手の込んだ計画を企んだでしょ。いいから話しなさい」
睨みつけながら俺を見る冬月は今にも殴り掛かりそうな勢いだった。どうやら、怪しいと疑っていたらしい。
「この大会で夏目には自信を無くしてもらう」
冬月は不機嫌そうに舌打ちしながら
「何でそんなことをするの? あなたに任せた私がバカだったわ」
「まあ、待て。話は終わっていない。自信を無くしてもらうのは間違ってはいないが責任感、つまり、彼女自身にプレッシャーを与え続ける。俺が存在することでな」
俺は腕を組み、目をつぶりながら話す。
「では、ダブルスとは何なのか。冬月は知っているか?」
「……」
冬月が無言で首を横に振る。その時、彼女の髪からふんわりとしたシャンプーのいい匂いがした。冬月のくせに……。
「ダブルスペアは一人は完璧に仕事をして、一人は足手まとい。いわゆる弱肉強食だ。ペアの一人がダメだとどんどん落ち込んでいき人より多く頭の回転が速くなる。どうすればいいか。
ふっと冬月は少し笑った。俺の話のどこにツボがあったのだろうか。おかしなことを言ったのだろうか。
俺は彼女の顔を見た。少し微笑みながら次に口を開き何かを言い出す。
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