023 時には夢を見たいと思うことがあるⅦ
「それでは夏目さんの解決をしましょうか」
「ああ、それでどうするの? 何か策でもあるのか?」
「ええ、でも、これはあなた。天道君が一番協力しないといけないわ」
「何で俺が?」
いやいや、俺みたいな女子の事なんか分からない男が何をするって言うんだ。あれか、二人で何か
「あなた、高校時代。テニスで県のベスト4まで行ったことあるでしょ。それに日本選手権では惜しくも決勝で敗退。だからよ」
怖い。この女。何で俺の過去まで知っているの? やばいよ、ストーカーだよ。そんなに調べてどうするの? 本当に寒気がしてきた。
ふふんと自慢げに言う
「なんで、お前が俺の黒歴史の過去を知っているの。俺のファンなの?」
「いいえ、ネットであなたの名前を探したら載っていたからよ。そう、偶々よ」
力強く圧力をかけて冬月はさらりとスルーしながら言う。
うわー!夏目の言葉を借りるとするなら引くわーと言いたい。
「そうなの。天道君ってそんなに凄い選手だったの。でも、なんで……」
「ああ、それは俺にもいろいろとあるんだよ。それ以上、詮索したらぶっ殺すぞ」
「天道君、いいわね」
俺が夏目に言うと、冬月は微笑んで何の説明もなしに俺の方を見てくる。
この微笑み、結構腹立つ……。
「それで協力はいいけどさ。何すんの?」
「天道君には夏目さんの試合相手になってもらうわ。元々、男子のテニスは女子よりも激しく、威力がある。そこをつくのよ」
冬月が俺の質問に分かりやすく簡潔に説明してくれた。
「なるほど。それはいい案だがそれで解決になるのか? もっと
「……天道君の意見もいいと思うよ。でも……それは私にとってはあまり意味がないと思うし、それに時間がかかるじゃん。それに比べて……冬月さんの意見はなんとなくだけど、何か掴めそうな気がするの……」
夏目は真剣な目で俺と冬月を交互に見ながら答える。
ま、俺の意見は集中力がアップするのには持て来いの内容だけど、これはまた次の機会に回せばいいか。
テニスはセンスも差があるから別に今更どうこうしようと小さい頃からの積み重ねでカバーできるから本当に勝負の世界って怖いよね。俺も散々いやって言うほど
「ふっ。でも、俺と試合したところでは何もつかめないぞ」
少し笑った後、俺は夏目に睨みつけるように見た。
「え、え……?」
夏目は少し驚いて言葉を失う。首を傾げながらズボンを握り、冬月の方を向いて上目遣いで見ている。
「ちょ、夏目さん。顔が近い。少し離れてもらえるかしら」
「あ、ごめん。でも、そんなこと言われたらつい……ね。それは何か欠点があるの? 何か、険しいそうに私を見てくるし」
「そうなの。なら、早く話しなさい。早期発見は
そんなに
「いや、ただ何となくそう思っただけだから。本当にそれだけだから……すまん、何も考えてなかった」
そう言って俺は冬月たちを見た。冬月は呆れている表情、夏目も同じ表情だった。そして、冬月は俺が謝った数十秒後に口を開く。
「何もないなら
「う、うん」
冬月につられて、夏目は頷くだけで少し苦笑いをしながら見てくる。二人同時にそんな風に俺の方を見てくる。
そこまで俺の事を変な目で見るなよ……。モチベーションが下がるじゃん。
「ま、そんなわけだが話はそれくらいでいいか。三人とも」
今まで空気のように存在していた藤原先生が後ろから声をかけてきた。まるで
て、まだいたのかよ……。心細いならこっちに来ればいいのに。小学生の子供が皆の輪の中に入れずに一人隅っこにいる感じみたいなことになっているような。
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