021 時には夢を見たいと思うことがあるⅤ
俺は
「いやー、なんとなくむかついたから。それに天道君って女子の扱い方下手でしょ。それだと嫌われるし」
うるせいやい。この女、だって聞いていれば……だから、体育会系の女子は嫌いなんだよ。気が強いし、我も強いからな。我一番ならなければと言う女子、高校時代、クラスに居たわ。名前は確か……
「俺は他人がどう思っていようとどうでもいいんだよ。むしろ、仲良くされる方が困る」
「うわー、引くわー。何なの、ネガティブエージェントなの。私、寒気がしたんですけど……」
夏目は
「ネガティブエージェント……。ふふふ」
いや、そこは俺を助けるところだろ。どうやら、冬月の頭の中にはもう一つ、余計な単語がインプットされたらしい。
「その言葉、いい表現ね。気に入ったわ」
と、口元を手で押さえながら笑いをこらえているように見えた。ああ、腹立つ。
「それにしても、初対面の癖にその扱いはひどくないか? もう何、傷ついた的な」
「いやいや、ただ本心を言っただけだし。嘘は言ってないから」
「ま、本当のことだから否定はできないわね」
ええ、冬月さん。あなたまでそちら側まで回られると冷たさが倍増するのでやめてもらえますかね……。
「
「いや、女運のないあんたに言われたくねーよ」
「何か言ったか? 天道」
笑顔から急変して、その表情は笑っているように見えるがその中身は鬼の表情が浮かび上がってくる。
……んー。これはこれで冬月並みの怖さですね……。このまま怒らせた状態でいたら俺、死ぬな。
やっぱり、怖い。
汗は少しずつ額から首へと流れていき、俺は一つの決心がついた。これは本人に直接言わないといけないのだろう。
「すみませんでした」
「ま、これぐらいで許してやるとするか。天道。言葉には
藤原先生はどこか遠い目をしていた。自分が過去に何かしらの傷を負った体験でもしたのだろう。俺でもその態度からある程度の事は想像できる。何かとんでもないことを口弾んだんだろうな。この人の事だし……。
「天道君も将来的には……。でも、その前に現実を見た方が私的にはいいと思うのだけれど。どうかしら」
言いやがったよ。この女、なんで毎回毎回、口を開けば出てくるのは突き刺さる発言。その冷たさなんだ。俺は言いたい、お前はもう少し人に対する優しさを覚えろと……。
主人公達がヤンキーばかりだったけど、一人の泣き虫先生で人生が変わったっていう実話を基にしたドラマ知らない?あれ絶対に冬月に見せるべきだよ。
夏目は溜息をついて、手を
「それで、私の相談どうなったの。何か、話が違う方向へ行っているような気がするんですけど……」
と、俺達の会話に横からグサッと来る言葉が飛び込んできた。
「ああ、すまん。すまん。すっかり忘れていた」
忘れていたのかよ。あんたが連れてきた奴だろ。今まで何していたんだよ。俺も今まで忘れていたけど……。
冬月も「ああ」と、口を漏らしながら思い出したかのようにハッとする。
「私も今まで忘れていたわ。私がした事が……」
そう言いながら、顔を下に向き、頭を抱える。冬月が意外と落ちこむところを始めてみた俺は驚いた。
「お前にも忘れることがあるんだな」
優しい目線で俺は冬月に言う。まるで俺が冬月に口げんかで勝ったかのように喜ばしかった。
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