018 時には夢を見たいと思うことがあるⅡ
「あなた、そのくらいの量で大丈夫なの? 倒れたりしないの? 男子って、結構な量を食べるのかと思っていたのだけれど……」
どんな想像だよ。男子皆が体育会系みたいな量を食べるわけがないだろ。草食で女子並みの量しか摂取しない奴なんているんだよ。ま、俺はその日の気分によって決めるけどな……。今朝なんて、妹の作ってくれた朝食なんてしっかりと最後まで食べたぞ。
「皆がお前の思っているほど、ガッツリ食べる系じゃないんだよ。それに俺はそんなんじゃない」
「それは悪かったわね。でも、それだけだったら午後の授業は体がもたないんじゃないかしら」
冬月は俺が持っているものを指さして、
「どうせ、情報科と言ってもただパソコンを触って座っているだけだからそんなに体力を使わないからな」
「そうね。大学の授業って長いうえに座っているだけだから体力は使わないけど、結構それが疲れるのよね」
「ああ、たまに腰が痛くなる時があるしな」
「ええ、まったく」
俺は前の人がレジから離れると、持ってきた食料をカウンターに置く。すると、後ろから俺が買う予定のないものがカウンターに置かれた。
「……」
「さっき、私をびっくりさせたから会計よろしく」
冬月はそう言って、そのままコンビニの外に出た。戸惑った俺は後ろを振り返ると長い行列が並んでおり、仕方なく店員に「これも追加で」とお願いし、お金を払った。
コンビニの自動ドアが開くと、小さな木下のベンチで本を読みながら冬月は待っていた。それを遠くから見ると世界の中心で聖女がそこで本を読んでいるように見えた。
「ほれ、三百五十六円」
「何? その呪文。私に呪いでもかける気?」
「ちげーよ。料金を払えって言っているんだ。びっくりさせたぐらいで人におごらせるなよ」
冬月はむっとした表情で言い返す。
「そう。でも、今回はあなたが悪いんだから訴えられても裁判では負けるわよ。それをこの金額で口止め料としてあげているのにもっと金額上げようかしら」
「もういいです……」
俺はそのまま、冬月に二袋のうち一袋を前に突き出して渡した。冬月はそれを受け取るとベンチをポンポンと叩いて、俺に横に座れと言っているようだった。
俺は言われるままに、冬月の隣に座りツナサンドの袋を開け口の中に入れる。
「そう言えばここ最近、研究室行っても何もないのよね。先生曰く、今度何かやらかしてくれるらしいけど。面倒なことにはならないでほしいわね」
「まあ、あの先生のことだから想像できるな」
「そうね。でも、それでもあの人は無駄なことはしないと私は思っているのだけれど」
「この前のあれを見て、そう思うか?」
「まったく、思わないわ。でも、先生はそういう人だからしょうがないんじゃないかしら」
あの先生、一見真面目に見えるが意外な一面もあるし、自分の研究室で自分の趣味のギャルゲーやっていたりしているからな。それに今度連れてくる人も俺達みたいな曲者だろうと思うし……。
「それでお前はコンビニで昼飯でも買っていたんだ? お前の性格からすると朝から作って弁当を持ってきそうな気がしたからな」
「ちょっとね。珍しく寝坊してしまったのよ。私としたことが夜中の三時まで夢中になって本を読んでしまったことが原因だったのかしら」
はぁ——と、冬月は息を漏らし疲れげな溜息をついた。
「その本って、今持っているそれか?」
「いえ、これは違うわ。これは今日新しく読み始めた本なの。天道君ってどういう本を読むのかしら」
「推理小説やライトノベルくらいかな。たまに直木賞や芥川賞の作品を読むくらいかな」
「意外と読書家なのね。ちゃんとその年の二大賞を読んでいるって男子にしては意外と珍しいことね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます