011 時には大罪を犯すⅡ
「そういや、
藤原先生はいきなり俺が入学してきた理由を聞いてくる。
「単純に実家から近いからですよ。その他に理由もありませんし」
「じゃあ、なんで情報科なんだ?」
「一人でもプログラムが出来るし、他人と助け合いなどしなくていいから。それに家でも仕事ができるから」
「なるほど。なら、もし、企業に就職しなければならなくなったらどうするんだ?一人では何のできんぞ。天才的プログラマーじゃないと……」
「そうですね。でも、その技術を売り込めば俺でも生きていけますし……」
先生は呆れて、額に手を当てた。
「そろそろ時間だ。早くいけ。後、一つだけ。やはりお前らは似た者同士だよ」
「それはどういう意味ですか?」
「そう言うことだよ」
先生は笑顔で楽しそうにどこかへ行ってしまう。俺は足を止めて先生の後ろ姿を見えなくなるまでずっと眺めていた。
言葉の意味がさっぱりわからん……。
三時限目が終わると時刻は午後二時四十分を回っていた。俺は
俺はその中に飛び込んでエレベーターの所まで人込みを避けながら進んでいく。
文系学部棟の四階にエレベーターで上がると、一階とは違い生徒は一人もいなく、廊下は奥まで透き通って見えた。
流石に廊下に誰かがいるだろうとは想像していたが四階までわざわざ足を運ぶ生徒なんていないだろう。俺は平然と廊下を歩きながら、目的地の研究室まで行く。
たどり着くと、ドアを開けようと鍵穴に鍵を入れるが、そこで立ち止まった。
そう言えば、あいつはとっくにもう、来ているのだろうか。その間、残り二時間。気まずい雰囲気の中何を話せばいいのだろうか。
要するに、どうすればいいのか分からないのである。この場面で俺向けの放送が鳴ったらすぐにそっちへと逃げたいと思う。「面倒くさい。ああ、面倒くさい」という俳句を書いた奴がいたら審査の結果、対象にでもするんだけどな……。
俺は色々とドアの手前で考えるが仕方なく鍵を開けると、冬月は先に来ており、何やら教科書でも読んでいた。
ドアを閉めると彼女は一言も言わずに教科書と向き合っている。
……。無視、されているな……。
俺は彼女の向かい側のソファーに座ると、まだ、俺に気づかずに無視してくる。
俺も挨拶はしないでパソコンを開き、プログラミングの設計を暇つぶしに眺めた。
「入って来て、挨拶の一言もないのはあなた人間?」
「いや、いや俺が入ってくるときにこちらを振り向かなかっただろうが……」
相変わらず変わっていませんね。その態度……。分かっていましたけど……。
九州
この際はっきり一言言っておいた方がいいな。
「普通、気づいた方から挨拶するものだろ」
「それなら、あなたが最初ではないのかしら。ドアを開けた時、あなたが最初に私の姿を見たはずよ」
「すみませんね」
俺は真面目に言ったのだが、冬月は俺が謝ると、くすくすと微笑んだ。
これの笑顔を見た俺はむっとして、
「『
自分でも何を言っているのか良く分からなく、難しい言葉を並べてなんとなく言っているだけだった。
冬月は俺に向かて、
「天道君って、何訳の分からない言葉を使って、まあ、そんな風に言えるわね」
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