003  大学生活は現実を壊すⅢ

「あの、話を察するようで悪いですが、俺には一ミリたりともメリットがありませんよね。すべて、先生の言葉で誤魔化ごまかされているような気がするんですが……」

「……な、ない」

「はぁー、それで単刀直入たんとうちょくにゅうで言うと一体、俺は何をすればいいんですか」

 俺は呆れて質問すると、藤原ふじわら先生はボソッと言った。

「人間の心理学」

 ん? 以外にも普通なような気がするが……。これは罠なのか?

 藤原先生はそこから一歩たりとも動こうとしない。なんだかんで、自分が言っていることが恥ずかしいと思っているように見える。

「それで、その心理学というのは何をするんですか?」

 なんとなく、こんな感じだろうと想像しながら聞いてみた。

「まあ、待て。もうすぐ、一人来るからそいつと一緒に説明する。それまで、世間話で時間でもつぶすか。どうだ、最近、何かあったか?」

 なんで、俺が待たないといけないんだよ。最近……、俺が思ったことでいいんだよな。

「そうですね。では、今の若者はSNSで色々と騒ぐんでしょうね。俺はあまり使いませんが……」

 ま、こんなあたりか。俺は大抵、引きこもっているから世間せけんと言われてもね。

「ああ、それか。憎たらしいよな。俺の学生時代は……。イライラしてきた。この話は終わりだ」

 大丈夫ですか。先生、昔の記憶を無かったことにしようとしていませんか。大丈夫ですか。

 先生がイライラを顔に出しているのが、はっきりとこの場で分かる。そして、俺を睨みつけるな。

 それよりも早く、その謎の人物という人間は来ないんですか。俺は家に帰って、ゴロゴロしたいのですが……。

 俺はうずうずしながら、時計の針が一秒ずつ刻まれていくのを見ていた。


 延岡市の山奥にある私立九州明桜めいおう大学。省略すると九明大きゅうめいだいは自然に囲まれた大学である。東京ドームが二個分ぐらいあり、近くには植物園という無駄に広く、休日しか親子連れが来ないというそれはあまりにも寂しい公園である。

 この大学には、一つ優れた施設があり、医学部生が使う研究所が校舎並みに広く、器具が病院並みだと噂されている。

 総生徒数はおそらく千を超すぐらいの人数だろう。この大学にはそれなりの学部があり、大まかに分けると医学部、理工学部、文学部、経済学部、農学部、教育学部に分かれている。それに進学にも力を入れている。まあ、普通の私立大学だ。部活やサークルには変な活動グループがあり、例えば、なろう部や映画部、試験対策部など。その他にもいろいろとあるが数が多すぎてきりがない。

 敷地内しきちないの構図は、西から医学部棟、農学部棟、理工学部棟、文系学部棟が並ぶように建てられており、それを挟むように左に研究所、右に体育館。体育館の隣にグラウンドがある。これだけの設備がそれっているのはどこの大学も同じだろう。

 俺がこの中で一つ上げなかった建物がある。カフェテリアだ。あれはリア充どもが大学生活を楽しむための憩いの場だ。

 リア充たちがグループで食事をしていると、一人で孤独に食べている俺にとってはイライラする。それに妙な注目を受けて食べにくい。あの空間事、異世界へと飛ばしてはくれないだろうか。ハーレムとかリア充は異世界だけで十分だ。現実には必要ない。

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