第2話の5

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 十時過ぎていた。モールの広い駐車場には車がびっしりと止められていた。

「化沼にこんな都会的なショッピングモールがあるなんて、オドロキ」

 さきにおりた玲加が感激している。わたしはカミサンの声に誘われて小説を中断して夜のパトロールに参加したのだ。

「玲加。なにか感じない? よく耳を澄まして」

「ウソォ。狼の遠吠え」

「やはり、きこえるのね」

「すごく、はっきりきこえている」

 わたしには、残念だがなにもききとることはできなかった。だがこの新しくできた広大な建物全体が狼のように思われた。エントランスは狼のアギト。ひとびとは喜々としてその大きな口のなかに吸いこまれていく。わたしたちは、店内には入らず裏に回ってみた。納入業者専用の駐車スペースになっている。

「なにものだ。ここは部外者は出入り禁止だ」

 ガードマンがとんできた。

「どうなってるんだ」いつものコースをはずれてモールにきた説明をもとめた。

「あとでねあとでね」

 玲加が緊迫した声でささやくようにいった。

「部外者はでていてくれ」

「なにかもめごとか」

 さらにガードマンが増えた。たかがモールの業者専用の駐車場にまぎれこんだくらいで、どうしてこうもセキュリティが厳重なのだ。

「はいはい、退散しますよ。外にトイレがあるかとおもってね」

「店内にある」

 なにがなんだか事情を知らされていないのでわたしにはわからない。

 わたしたちは逃げるようにモールの正面にもどった。

「洋子が誘拐されたらしいの。犯人からは連絡はないけど、まちがいなく人狼の仕業よ。洋子のお父さんからの連絡なの。なにかあったらわたしにまず携帯入れるようにいわれていたみたい」

「だったら彼女の家に行って、お父さんから状況をきくのが……」

「GPS携帯をもたせてといたのよ。ああいうことがあったあとだから」

「位置情報を発信できる機能付きのやつだな」

「そのとおりよ。そしてその信号はこのモールを示しているの」

 三人はモールの中にはいっていた。まだ閉店までにはまがある。車で来た若い客で混雑していた。


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