第1話の3
3
化沼高校の二階。一年B組の教室。窓から転校生の見園玲加が道路一つ隔てた日曜大工の店カンセキを見下ろしている。ただ見下ろしているわけではない。異常を感じるセンサが稼働した。たしかに異様だ。広い駐車場に黒い竜巻が発生している。ただの竜巻ではない。円筒状なのだ。そして、その中心から殺気がもれている。
これだったのね。ピピピッとわたしの感覚を刺激したの……。そうわかると、玲加は教室をとびたした。廊下を走っていた。
「見園どこへいくの」
「玲加どこへいくのよ」
血相かえて飛びだす玲加にクラスメイトから声がとぶ。
長い黒髪が初春の風になびいていた。美しい。玲加の姿は校庭を走っている。校門を出た。黒い竜巻はない。円筒状の異空間がある。飛びこむ。
「やつぱり、美智子おばさまだぁ。」
「神代寺の歴女クラブの玲加さんじゃないないの」
「なにおとぼけだぇ。スケットを呼ぶということは、徹底抗戦の気が前とみたよ、麻生の千年ババァ」
「美智子おばさまのこと……。ババァなんて呼ばないで。許しませんよ」
「ひとまずひく。あとが怖いからね。覚悟しておくんだね」
BVは身をひるがえして、円筒状のバリアの外にジャンプした。黒い風の尾をひいて走り去った。
「こんなに早く来てくれるとは思わなかった」
と美麻がうれしそうだ。
「うちに下宿したらいい」
転校してきたばかりで、まだ土地カンのない玲加にわたしは勧めた。
カミサンはバラの鉢、ゴールドバニーを買ってごきげんだ。
玲加はカバン一つで早退してきた。
「転校の手続きがすんだら、すぐ伺うつもりでした」
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