第38話 なんでもなーい
お風呂に入ってさっぱりしたわたしとみぃちゃんは、リビングに戻りました。
するとチーンと鳴って、おじいちゃんが食パンをトースターから出しました。
みぃちゃんは鼻をひくひくさせてイスに飛び乗ると、つくえの上にジャンプしてトースト目がけてとことこ歩きます。
おじいちゃんはお皿を持ち上げてみぃちゃんをかわすと、みぃちゃんはおじいちゃんの腕にしがみ付いてはなれません。
「むむむ」
おじいちゃんは両手を伸ばしてお皿を上げて困っていたので、わたしはみぃちゃんを抱っこしました。
「つくえに登ったらいけないんだよ!」
「にー」
みぃちゃんは残念そうにしています。
「みぃちゃんは元気だねえ」
おじいちゃんは困っていたけど、笑って許してくれました。
「佐々木さんが猫を飼ってたね。キャットフードをもらえんやろか」
「私が行って頼んでみるわ」
そう言っておばあちゃんは佐々木さんの家に行くと、ビニール袋にカリカリを入れて帰ってきました。
わたしは湯のみに水をいれました。本当はおじいちゃんにあげるつもりで、とうげいたいけんで作った湯のみだけど、もうみぃちゃんのでいいかなと思っています。
おばあちゃんがお皿にカリカリを入れると、みぃちゃんはむしゃむしゃと食べ始めて、カリカリと音が鳴ってます。
「私たちも朝ごはんにしましょうか」
おばあちゃんは、台所から玉ねぎのスープを持ってきました。
わたしが大好きなスープです。
「いただきます」
みんなで朝ごはんです。
おばあちゃんはむかし、ごはんを作る仕事をしていたので料理が得意なので、おばあちゃんのごはんはおいしくて大好きです。
玉ねぎのスープは、薄い玉ねぎがやわらかいけど口の中で噛むとシャキシャキして、お菓子じゃないのに甘くて、スープも飲み込むとあったかくてお腹の中にするりと入って体中があったまります。
「お茶をくれんかね」
「はいはい」
おじいちゃんは、おばあちゃんが台所にお茶をいれている間に、わたしにウインクしました。これはおじいちゃんとわたしの内緒の合図です。
おじいちゃんは、トーストにマーマレードをたっぷりとつけました。
わたしもマーマレードをたっぷりとつけます。
おじいちゃんはにこっと笑って、わたしもにこっと笑って、トーストを折り曲げました。
「なあに、にこにこして」
おばあちゃんが戻ってくると「なんでもないよ」とおじいちゃんが言います。わたしも「なんでもなーい」と言います。
トーストを折り曲げると、マーマレードが隠れるので、たくさんつけてもばれません。
ふわふわのオムレツも食べて、おじいちゃんはほっぺたにケチャップがついていたので取ってあげました。
「ごちそうさまでした」
「にー」
みぃちゃんもちゃんと言えたね。
お皿を片付けて、おじいちゃんは新聞を読み始めると、またみぃちゃんが新聞紙に飛びつきました。
おじいちゃんは「むむむ」と言いながら、新聞紙でみぃちゃんを包もうとしたりして遊びだしました。なんだか楽しそうです。
おじいちゃんもみぃちゃんのこと好きになったみたいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます