第39話 いいこなんだよ
おじいちゃんとおばあちゃんに、おうちを出てからのことを聞かれたので、なにがあったのかを思い出しながら話しました。
こくどうを歩いたり、けんどうを歩いたり、山を歩いたり、バスに乗ったり、畑で迷ったりです。
とちゅうでいろんなひとに会ったことも話しました。
ファミレスでみぃちゃんを探してくれたお兄さんたちとか、かがくかんのかんちょうさんとか、けんちょうのお姉さんとか、魔女のお菓子屋さんとか、神さまとか、キラキラしたお姉さんたちとか、バスのうんてんしゅさんとかです。
他にもいっぱいいろんなことがあったんだけど、ぜんぶはなかなか思い出せない。
いっぱい話すと、おじいちゃんとおばあちゃんは「あらあら」とか「ふむふむ」とか言ってぜんぶ聞いてくれました。
わたしは喋りっぱなしでのどがかわいてオレンジジュースを飲むと、みぃちゃんはわたしの足元で眠っていました。
「おうちを出て、おじいちゃんの家に来ようと思ったの?」
「うん」
「それは、みぃちゃんとおうちで一緒に暮らせないから?」
「うん」
わたしは家出をした前の日の、お父さんとお母さんを思い出しました。
話をぜんぜん聞いてくれなくて、みぃちゃんをおうちに入れてくれる気もなくて、とにかく反対しか言われませんでした。
「わたしとみぃちゃんはおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に暮らします」
わたしは礼儀正しく言いました。
おじいちゃんとおばあちゃんは顔を見合わせました。
なにも言ってこないので、賛成なのかなと思ったけど、二人とも黙っているのでちょっと心配になってきました。
「ここで暮らすと、お父さんとお母さんと暮らせなくなるんやよ?」
「みぃちゃんと暮らせるほうがいいもん」
「学校も転校しないといけんのよ?」
「転校するからいいもん」
「おともだちとももう一緒に遊べんよ?」
「お手紙書くもん」
おじいちゃんとおばあちゃんは、また顔を見合わせて黙っています。
「ちゃんとみぃちゃんの世話するから」
「ちゃんと学校にも行くから」
「ちゃんと勉強もして、おうちのお手伝いもするから」
ぽとりぽとりと、ひざの上にこぼれてきました。
ほっぺたがかゆくなって、喋ろうとしても声がうまく出ません。
わたしはいつの間にか、泣いていました。
ちゃんとみぃちゃんになんでも教えて、つくえに乗ったら駄目とか、わたしがお小遣いでごはんを買ってきたり、がっこうにいってべんきょうもしてテストもいいてんをとって、おうちのおてつだいもしてしょうらいはおじいちゃんとおばあちゃんのめんどうもみて、っていっぱいいおうとしたけどのどのおくがつまってことばになりません。プリキュワのグミをまとめてたべたときみたいに。
「もうすぐ、お父さんとお母さんが迎えに来るから、そしたらもう一回話し合おうか」
わたしは「やだ!」と言おうとしたけど、泣き声になってちゃんと言えません。
「みぃちゃんはいいこだから、いいこなんだよ」
足元のみぃちゃんはわたしが泣いているのに気づいて、よじ登って来ました。
ひざに乗って、立ち上がって、手でほっぺたをなでてくれます。
わたしはみぃちゃんの背中をぎゅっとして、泣くのをがまんしようとしたけど、けっきょくいっぱい泣いてしまいました。
ごめんねみぃちゃん、わたしがしっかりしないといけないのに。
泣きつかれたころ、お父さんとお母さんが車でやってきました。
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