第32話 うわっちぇえーい
トンネルをぬけると、みぃちゃんが顔を出しました。
リュックサックを下ろしてみぃちゃんを出したら「にー」と言って「やっと出られた」とぶるんと体をゆらして三角形になりました。
「やったねみぃちゃん」
「にー」
わたしはみぃちゃんと手を取り合ってトンネルから出たことをよろこぶと、みぃちゃんとダンスを踊っているみたいになりました。
おもしろくなって、しばらくぷにぷにした手をにぎって踊っていると元気が出てきました。
「みぃちゃんもう少しがんばるよ」
「にー」
わたしはリュックサックを背負って前を見ました。
目の前には道路が続いているけど、山に囲まれています。
トンネルに入る前は建物がたくさん並んでいたけど、トンネルをぬけたこっち側は建物はあまりありません。
緑の木がいっぱい見えて、遠くには山が広がっています。
しばらく歩いて行くと、畑も見えました。
いなかです。
おじいちゃんの家はこのいなかにあります。
「みぃちゃん、もう少しだよ」
「にー」
「本当の本当にもう少しなんだよ」
「にー」
みぃちゃんが道路のむしを見てぴょんと跳んだので、わたしもまねをしてぴょんと跳びました。
道路はずっと続いて、車が行列になっているけど、建物があまりないのでその他の道路も見えて、そこには車はほとんど走っていません。
わたしはもうしばらく車の多いほうの道路を進むことにしました。
こっちだった気がするのと、今までのトンネルがずっと暗かったのでちょっとにぎやかなほうが気がまぎれると思ったからです。
「まぶしいねえ」
「にー」
「太陽はいいねえ」
「にー」
ぽかぽかして眠くなるけど、今はまだまっすぐに歩道を進みます。
通りすぎていく車も、なんだかぽかぽかして見えます。
「うわっちぇえーい!」
わたしはびっくりしました。
みぃちゃんもびっくりして目を丸くしています。
「うぇいうぇいうぇい!」
また変な声が聞こえました。
コキーンという高い音も聞こえます。
みぃちゃんの見つめている先には、緑色をしたあみがあって、それがどこまでもずっと広がっていて、すごく高いところまで張ってあります。
変な声もその向こうからするようです。
そのあみを見ながらずっと歩道を進んで行くと、みんな同じ白い服を来た人たちがなにか走ったり、ボールを投げたりしています。
よく見るとボールを棒で飛ばして、それを拾ったりしています。
わたしは教えてあげました。みぃちゃんは不思議そうに見ていたからです。
「あれはねえ、めじゃーりーぐだよ」
「にー」
みぃちゃんは「なるほど」と言って立ち止まると、あみに手をかけました。
「うわっちぇえーい!」
でも、なんて言っているかわかりません。
みぃちゃんはボールがほしいのかな。
そういえば魔女のお菓子屋さんにボールが売っていたので、買ってあげればよかったかなと思ったけど、ボールが道路に飛んでいって、みぃちゃんが追いかけていって、車が来たらひかれるので、ボールはおじいちゃんの家に着いてから買ってあげようと思いました。
「みぃちゃん、行くよ」
みぃちゃんはめじゃーりーぐが好きなのかな。
テレビでよくやっているから、みぃちゃんにテレビを見せてあげようと思いました。
「うわっちぇえーい!」
みぃちゃんには、なんて言ってるのかわかるのかな。
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