第22話 さーん、にー、いーち
みぃちゃんがわたしの鼻を踏んづけて目が覚めました。
ぶにってしてちょっと気持ちよかった。
まだゴーッゴーッと音がするので、まだ雨が降っていると思ったけど、正体は雨の音じゃなくてすぐそばの川の音でした。
茶色いチョコレートみたいな川が、ホットケーキの生地をフライパンに入れるときみたいにぐねぐねして流れています。この先はフライパンかなあ。
さっきまで降っていた雨はすっかりやんでいました。
木の葉っぱがキラキラしてきれいだなと見ていました。
黒い雲のすき間から太陽が出てきていてなんだかすごく明るくなってる。
雨のしずくが葉っぱからキラキラ落ちていてきれい。
「行こうかみぃちゃん」
「にー」
リュックサックに荷物をぜんぶ入れて背負ったら、みぃちゃんは座ってごろごろ転がりました。
「ちがうよ、行くんだよ」
わたしが歩くとみぃちゃんは「しまったまちがえた」と言ったみたいについて来ます。
ぽたぽたと雨宿りしていた岩から雨の残りが落ちてきて首の後ろに当たって「ひゃー」って言って、どっちに進もうか考えました。
まさかフライパンじゃないと思うけど、川の流れていくほうは行きたくないなとなんとなく思って、その逆に行くことにしました。
大きな木の枝からもぽたぽた雨の残りが落ちていて、当たらないようによけて歩きまます。地面はずっと先まで、ぬれた落ち葉でいっぱいで、じょりじょり鳴らしながら進みました。なんだかくつがぬれていてくつしたも気持ち悪かったけどここはがまん。
「がんばって歩こうね」
「にー」
がまんできずに、くつを脱ぎました。
平らな石の上に座って、くつしたをぬいでぞうきんみたいに絞るとぽたぽたくつした雨を落として、でももうはくのはいやだなと思って、リュックサックから魔女のお菓子屋さんのビニール袋に入れてリュックサックに入れてくつをはきました。
立ち上がると、こんどはお尻がぬれてしまっていてかゆい。
わたしはよく授業中に消しゴムを落とすので拾おうとしたらえんぴつも落とすから、もうどうしようもない気持ちになります。
落ち葉の教室を進んでいると、けっこう石とか岩がにょきにょき生えてて、また岩かって思ったら、それは岩じゃなくて階段でした。
石でできた階段です。
階段は上に続いていて、登ってみようと思いました。どこに続いているんだろう。
雨にぬれていたのですべらないようにいちだんいちだん登っていく事にしました。
ちょっとはじっこに緑のコケも生えていて、うっかり踏むとすべって転びそうです。
「すべらないように気をつけてね」
みぃちゃんに注意したら、わたしがすべりました。
尻もちをついてまたお尻がぬれて「またかよー」っていう口ぐせをしてしまいました。
お母さんにピーティーエーのプリントを渡すと言うあれです。
「ピーティーエーも大変なんだよ」
「にー」
みぃちゃんのピーティーエーならわたしは行ってみたいと思います。ピーティーエーってなんだろう。
気を取り直して石の階段を登ります。これはなに色なんだろう。絵の具をぜんぶ混ぜたような色の階段です。みぃちゃんはとことこ登っていてすごいなあと思いました。
とちゅうで休憩しようと思ったけど、ここで座るとまたお尻がぬれるので立ったまま後ろを見ると階段がずっと下まで伸びていてその先にカフェオレみたいな川がずんずんとつげきしていてすごい迫力です。甘かったらいいのに。
数えたら、あと三段です。残りの数字を声に出して登りきりました。
「さーん」
「にー」
「いーち」
いちだん数えまちがえていたので、もう一回言いました。
「いーち」
「やったねみぃちゃん」
「にー」
わたしはリュックサックを下ろして数字のチョコレートを出して食べました。茶色がよかったけど茶色はもうなかったのでオレンジを食べました。いまの太陽と同じ色です。でもみぃちゃんにはあげません。
「いじわるじゃないよ」
「にーにー」
チョコレートはみぃちゃんに食べさせたらいけません。でもみぃちゃんがほしそうにするので、数字のチョコレートをリュックサックに入れたら、みぃちゃんも一緒についてきてリュックサックにみぃちゃんがずぼって入ってさかさまになってお尻ごと入ったので、このまま背負おうかなとちょっと思ったら、みぃちゃんが顔だけにょきって出したので、やっぱりこのまま背負おうとしたらみぃちゃんがぜんぶにょきにょき出てきて肩に乗って飛び下りました。ちょっと残念。
みぃちゃんがぶるぶる体を振ったら水がわたしのすねに掛かって「ひゃー」って言ったけど、こんなことしている場合じゃないなと思いました。
落ち葉の山から階段を登った先は、アスファルトの道路でした。
雨にぬれて白線がくっきりと水に浮かんでいるみたいです。
真っ白なガードレールもずっと先まで伸びてカーブしていて、その向こうには、もやのかかった山がうっすらと見えます。
右か左か迷ったけど、みぃちゃんのしっぽが左のほうを向いていたので左に進むことにしました。
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