第18話 またかよー

「こまった」

「にー」

「みぃちゃんはどっちだと思う?」

「にー」


 道が二つになっていてどっちに行けばいいのかわかりません。

 今までも道はわかれていて、そういうときは大きいほうのけんどうを歩いていたけど、これはどっちも同じくらいのけんどうです。


 わたしもみぃちゃんも立ち止まって考えました。

 なんとなく、左は山っぽくて、おじいちゃんの家みたいなふんいきです。それに動物園は動物がいるので山のほうにある気もするので、左に行ってみることにしました。


「みぃちゃん、こっちがおじいちゃんの家だよ」

「にー」


 わたしは魔女のお菓子屋さんで買った数字のチョコレートを取り出して、黄色をひとつ食べました。

「みぃちゃんはなに色がいいの?」

「にー」

 茶色を指さした気がします。それにさっきは茶色い玄米茶のボタンを押したので、みぃちゃんは茶色が好きなんだね。

 茶色のチョコレートをあげると口の中でカリカリッと鳴りました。

「元気でたね」


 わたしたちは山の道を進みます。

 遠くはずっと緑の山で、右の方は工事中です。だれもいないけど、土の山があって、ショベルカーがあって大きいなあと思いました。

 ひょっとしてこの土で山を作っているのかなあ。


 工事中を通り過ぎると車があんまり通ってこないのでちょっとだけ白線をはみだしてもひかれません。でも念のために白線の内側を歩いていると、ガードレールの下はがけでした。

「わー」

 思わず声が出るくらいの高さで、落ちたらもう戻ってこれないんじゃないかと足がふるえました。

「みぃちゃんはこわくないの?」

 みぃちゃんは平気な顔で歩いて行きます。

「ガードレールがあるから大丈夫だよね」


 わたしも勇気を出して歩きました。目を閉じて歩こうと思ったけど、見えないで歩くとがけから落ちるかもしれません。

「にー」

「にー」

 わたしはみぃちゃんのまねをして歩くことにしました。

「にー」


 道路がくねくね曲がって、右に曲がるとつぎは左です。たまに道路の上に土があってタイヤの跡があって、また左にくねくね曲がります。


 右にあったがけは山になっていたり、またがけになったりまた山になったりしています。


 なんだか山のおばけにだまされて歩いているんじゃないかと思うけど、たまに車が通るのでちゃんと人間もいるんだとちょっと安心しました。


 そしてまた歩道がありません。白線も山にかくれています。

「またかよー」

 ついお母さんのまねをしてしまいました。お母さんがアニメの『プリンスハイツへようこそ』のどうじんしを見ながら「王子と芋男じゃねーんだよ芋男と王子なんだよ」って叫んで「またかよー」って言います。それのまねです。


 少し向こう側に、家の屋根が見えました。

 かわらの屋根なのでおじいちゃんの家に見えたけど、こんなところにおじいちゃんの家はないので、でもいなかだと思うのでひょっとしてもう近くまで来たのかな。

 ちょっとうれしくなって、それと車がなん台か停まっているのが見えたので、お店っぽいなと思いました。

「あそこでひと休みしようか」

「にー」

 車も来なかったので、みぃちゃんを抱っこして道路を渡りました。


 着いてみると家のわりに大きくて、駐車場も広くて、きっとお店だろうと思いました。

 トイレのマークを見つけたので入ってみるとトイレも広くてきれいでした。

「みぃちゃんはあいかわらずトイレをしないなあ」

 そう言いながらお店の中に入ってみることにしました。

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