第17話 宝もの

 わたしは魔女のお菓子屋さんから歩いたけど、すぐに戻りました。自動販売機があったので『お茶をくれい』を買おうと思ったからです。


 手を伸ばしてお金を入れてお茶をくれいのボタンを押そうとしたら、いちばん上にあって指が届きません。

「みぃちゃん出番だよ」

 わたしはみぃちゃんをうしろから抱っこしてボタンを押してもらおうと考えました。

 みぃちゃんは手足をバタバタさせてがんばっています。

「その左!ちがうよ左だよ!」


 ガコンっていって出てきました。


 取り出したら、茶色い玄米茶でした。


 みぃちゃんは体をぶるぶるってして得意気です。

「しょうがないかあ」

 木の長いイスを見つけたので、そこで休憩することにします。


 わたしはリュックサックから湯のみを取り出して玄米茶を入れて、ペットボトルの自分の分を飲むと、ほろ苦い味がしました。みぃちゃんは玄米茶が好きなのかなあ。

 でもみぃちゃんは湯のみの玄米茶を見ているだけなので「飲まないの?」と聞くと「にー」って返事をしてペロッとなめました。


 わたしはいま買ったピンクの四角いお菓子を出して開けると、みぃちゃんがひざに登ってきてほしそうに手を出してきたので、中に入っていたつまようじでひとつとって膝に置いたら食べ出しました。なんかひざをベロベロされてくすぐったくなります。

 わたしもつまようじでひとつ食べると甘くておいしい。


 つい三つ食べて、もい一回みぃちゃんがほしそうにひざに登ろうとしてきたのでもうひとつあげて、のこりを食べて、さいごのひとつはみぃちゃんにあげました。


「おいしかったね」

 みぃちゃんもおいしそうに食べ終えると、湯のみの玄米茶をペロペロ飲み始めました。

 湯のみに頭をつっこんでいたので、届かないのかなと思って湯のみをかたむけてあげるとみぃちゃんの頭がぜんぶ入って、手をはなしたらみぃちゃんの頭が湯のみにすっぽり入って、みぃちゃんが湯のみになりました。

 おもしろくて笑っていたけど、みぃちゃんは手をコネコネさせて湯のみを取ろうとしているので引っ張って取ってあげると、顔をブルブルさせて手でふいていました。


「休憩おわり。そろそろ行くよ」

「にー」

 なんだか元気が出てきて、わたしはまた歩き始めました。もちろんみぃちゃんもついてきます。


 けんどうは、歩道に段があって安心しました。でもたまに段がなくなって、白線もせまくて歩けなくなっていて困ります。わたしは白線をはみでないようにギリギリをゆっくり歩いているとみぃちゃんはとっとこ先に進むので「待ってー」って言って追いかけて行きました。


 歩道と車の道路の間にさくがあったら安心して歩いていたら、みぃちゃんが急に知らない人の家のほうに入っていって、庭を手でほりました。

「みぃちゃん勝手に入っちゃ駄目なんだよ!」

 それでもみぃちゃんは土をほっています。


 ひょっとしてなにか宝ものが出てきたりして。

「みぃちゃん駄目だよ」

 宝ものが出てくるかもしれない。

「本当は駄目なんだよ」

 宝ものってなんだろう。ネックレスとかかなあ。

「駄目だけど、見つけたら帰っておいで」


 みぃちゃんはしばらく知らない人の家の庭をほると座りました。

「みいちゃん、どうしたの?」

 みぃちゃんは動きません。目を閉じて動きません。

 どうしたんだろうと思っていると、みぃちゃんは動いてまた庭をほりました。

 またほるのかなと思っていたら、こっちに戻ってきました。

「宝ものはなかったんだね」

「にー」

 ちょっと残念。

「宝ものを見つけたらこの家の人にもあげないとね」

「にー」

 みぃちゃんはいい子だな。

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