第15話 みんなキラキラ
海を見ながら歩いていると、海の見える公園がありました。
駐車場とトイレがあったので、ひとまずトイレを済まして出るとみぃちゃんがトイレの裏から出てきました。そういえばみぃちゃんはトイレをしないのかな。
「みぃちゃんもトイレに行く?」
みぃちゃんのわき腹を抱っこして持ち上げて聞くと、みぃちゃんは目をそらしました。我慢はよくありません。
「トイレは恥ずかしがらなくてもいいんだよ」
「にー」
みぃちゃんはトイレをしないのかもしれない。
そんなことはさておいて、とても大きなトラックを見つけました。駐車場に停まっているけど、車じゃなくて家みたいです。
なんか電気のライトがたくさんついていて、これがぜんぶキラキラ光ったらきれいだろうなと思いました。
こういう車がたくさん走っていたら、夜でも暗くないかも。
「おい」
最初はわたしに言われたのかわからなかったけど、二回も声が聞こえたので振り返ってみたけど、どこから聞こえたかわからなくてきょろきょろしたら、また「おい」と聞こえました。
上のほうから聞こえたので、神さまかなと思って見上げても姿は見えません。
でも声は聞こえます。
「この道を行くんか」
わたしにしか聞こえないのかな。
たぶん雲の上からだと思って、オレンジ色の雲に届くように大きな声で返事をしました。
「はい!」
「車が多いけん、気をつけてな」
「はい!」
やっぱり神さまがわたしを心配してくれて見守ってくれているんだと思って、言われた通りに気をつけて歩こうと思いました。
左に海が見えます。ガードレールはあるけど、試しにちょっとだけ下をのぞいてみると、すごく高くて足が白くなりました。
「みぃちゃん、落ちないように気をつけてね」
みぃちゃんはときどき立ち止まって海を見て、下ものぞこうとしているので心配になりました。でもわたしが歩いてちょっと離れてもちゃんと後をついてきます。
「みぃちゃんは偉いね」
みぃちゃんは偉いけど、わたしは本当は偉くありません。なぜならば左側を歩いているからです。右側を歩かないといけないのに。このままじゃわたしが悪いお手本になってしまいます。
「車が来なくなったら、右側に行くからね」
でも車がいなくなって渡ろうとするとまた向こうから車はやってきて、いつまで経っても渡れません。こくどうは車が多いので、みんないなかに行きたいんだなあと仕方なくそのまま歩きました。
もちろん白線をはみださないように注意しています。みぃちゃんはたまにはみ出すので注意します。
朝日で海の波がキラキラしてずっと見ていたい。
白線もガードレールも真っ白でピカピカしてずっと伸びています。
ところがなんてこった。
眼の前に草がこんもり出てきていて進めません。
白線をはみだして行けば進めるけど、うしろから車が来るので、ここで行き止まりになってしまいました。
「こまった」
草は竹みたいな草がたくさんあります。葉っぱも多いのでもぐることもできません。
わたしが立ち止まるとみぃちゃんも立ち止まりました。
車はたまに来なくなるけど、このまま止まっていたらいつまで経ってもおじいちゃんの家に着けません。
わたしは覚悟を決めました。
「渡るよ!」
みぃちゃんをしっかりと抱っこして、車がいなくなるのを待ちました。車が通りすぎてからすぐに走れば次の車が来る前に渡れると思って、タイミングを見ました。
でもこわい。今だと思っても、向こうから車が来るし、みぃちゃんがちょっと暴れて腕からずれるので抱っこしなおしていると、また次の車が見えます。
なんだかお腹の下が熱くなってまた泣きそうになりそうです。
波の音がざーんって聞こえて、車の音が静かになりました。
「いま渡るよ!」
わたしは走ろうと道路に出ました。すると大きなトラックが来ていて、びっくりして渡ろうとしていた足が止まって、どういていいかわからずに道路のとちゅうで止まってしまいました。
ひかれる、と思ったらみぃちゃんを守らないとって思って、ぎゅって抱きしめました。
でもいつまで経ってもひかれません。
「おい」
またどこからか聞こえたので、キョロキョロして、また神さまだと思いました。
「いま渡れ」
向こうから来ていたトラックを見ると、停まっていました。
「今だよ、みぃちゃん」
わたしは神さまを信じてみぃちゃんを抱っこしながら走って渡りました。
道路の右側まで渡り切ると、トラックが走り出しました。
ピカピカのトラックのうしろ姿が朝日でキラキラしていました。
「神さまがトラックを止めてくれたんだね」
「にー」
「ちゃんとお礼をしようね」
「にー」
「ありがとうございます」
わたしが上を見てキラキラした雲にお礼を言うと、みぃちゃんも上を見て「にー」ってお礼を言いました。
道路の右側からでも海はちょっとだけ見えて、遠くに船が歩いていて、波がキラキラしていました。
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