第5話 その手伝い

 昼近く、一人の職員が報告のためギルドマスターの部屋を訪れました。


「失礼します」

「おう、んでどうだった?」

「まずいです、イレギュラーです」


 イレギュラー、迷宮では各階層ごとに出現する魔物は決まっていると言われています、しかし極稀にその階層では出現しない魔物が現れることがあります。


「で何が出た」

「5階層にフレイムリザードが」

「…マジかよ」

「…はい」

「状況は?」

「とりあえず迷宮のへの立ち入りは禁止としました。また5階層に居たPTが4階層へ戻り、5階層と繋がっているあたりで下の様子を伺いながら降りる者がないよう注意しているようです」

「そいつら大丈夫なのか?」

「はい、ヤバくなったら逃げると言っていたそうです」

「そうか、んで今日腕の立つやつ等はどうしてる?」

「10階層より下に潜っているようです」

「タイミングわりぃな。…しかたねえ、俺が行く」

「マスター」

「ま、心配すんな。フレイムリザードだろ? 手伝い連れてちょっと行ってくる」

「手伝い、ですか?」

「ああ」


 そのころ受付にいた少女はというと、「今日はなんか慌しいなあ」とか思いながら業務をこなしていました。

 とそこへ。


「おい、仕事だ」

「へっ? 仕事ならやってるし。てかギルマスなんで冒険者の装備してるの?」


 冒険者の装備を身につけ、背中に大きな剣を背負ったギルドマスターが少女に声を掛けます。


「ちょっと手伝え」


 そういうと大柄なギルドマスターは少女をヒョイと脇に抱え、ギルドの出口へと向かいます。


「ちょっ、なんなのよ」

「いいからこいって」

「降ろしてってば。助けて~、攫われる~、きゃーロリコンよ~」

「ちょっ、変な事いうんじゃねーよ」


「何ロリコンですと、なればあれは同士か。いやしかしお嬢は合法ロリ、真の同士とは言えませんな」

「貴殿は何を言っているのかね。少女は全て愛でるもの、合法とはいえ少女は少女、等しく愛でるものではないのかね?」


「おい合法ロリとか言ったヤツ。お前の○○○もげる呪いかけてやるからなっ! そこの紳士もだからなーっ!」


 少女がそう叫ぶと、「ひっ」という声とともに何人かが股間を抑えました。


「うえっ、2人だけじゃないし。ここ変なヤツ多いよギルマス」

「それお前のせいでもあるからな? それと女の子がそんな事叫ぶんじゃねーよ」

「ギルマスにも呪いかけてやる」

「いやマジでやめろって」


 少女を抱えたギルドマスターは迷宮へと急ぎます。


 冒険者装備に身を包み、少女を脇に抱えながら走るギルドマスターと、脇に抱えられながら何かぶつぶつ呟いている少女を見た町の人々は何事かとそれを見ます。

 迷宮へ着いたギルドマスターは入り口にいた職員にいくつかの指示をすると、入り口にいた数人の冒険者には目もくれず迷宮の中へと入って行きました。


「今のギルマスとお嬢だよな?」

「すげぇ急いでたけど何やってんのあの人」

「今迷宮やべーんじゃなかったっけ?」

「だよなあ。なあ、今迷宮やばいんだろ?」


 一人の冒険者が職員に話しかけます。


「緊急事態です。ですので皆さんは中に入らないようにと」

「いや今ギルマス迷宮に入ったじゃん。しかもお嬢抱えたまま」

「それについてですが」

「何?」

「何も聞くな。だそうです」

「いや何ソレ?」

「私からはこれ以上は」

「いやだってさぁ」


 冒険者達は職員に詰め寄りながら、不安と不満を抱えたまま迷宮の入り口を見ていました。

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