第2話 そのギルド

「やべっ、ギルマス出てきた」

「そりゃ出てくるよなあ」


 ドアから顔を見せた男はこのギルドのギルドマスターのようです。


「うるせーぞまったく。何の騒ぎだおい?」


 ギルドマスターはドアからこちらに出てくると、近くの職員に向かって何事かと尋ねます。尋ねられた職員は少し諦めの混じった顔である方向を指差しました。そこには椅子に上がり高笑いしている少女がいます。

 またかという顔をしながら、ギルドマスターは少女に近付いていきます。


「騒ぎ起こすなっていつも言ってんだろうがっ!」

「うっさいハゲ」

「誰がハゲだコラ、これは剃ってんだって何べん言わせんだっ」

「うっさいヒゲ」

「ヒゲは別にいいだろうがヒゲは。つーかいいかげんその魔法止めねぇと給料払わねーぞコラ」

「…………、チッ」


 その言葉を聴いた少女は、指をパチンと鳴らすと魔法の発動を止めました。


「…はあ、何だってんだまったく。おい、誰か説明してくれや」

「うーいギルマス、説明しまーっす」


 ギルドマスターが周りに説明を求めると、一人の冒険者が手を上げます。


「おう、ならちと来てくれ」


 近くに来た冒険者から話を聞いたギルドマスターは、大きなため息をつきながら少女へと顔を向けます。


「沸点低すぎんだろうがおめぇ」

「ちょっと脅しただけだし」

「ちょっとの脅しで魔法なんか使うんじゃねぇよっ! それと椅子から降りやがれっ!」

「…………」

「何べん言ったら分かるんだおめぇは」

「…………」

「おい、人の話を聞けってコラ。何ゴソゴソやってんだおめぇ」

「折れたペンの代わり探してる」

「折れたっつーかおめぇが折ったんだろうがっ!」

「そうだっけ?」

「あー、もういいっ!」

「おい、お前とお前、そこの2人の様子みてやれ」


 指示を受けた職員が少年達の所へと向かうのを見ると、騒ぎを見ていた冒険者達へと近付き話しかけます。


「おめぇらも笑って見てねぇでちっとは助けてやれよ」

「いやー、ここに慣れるにはちょうどいいかなと」

「ちょうどいいじゃねぇだろ。ったく、次からは止めろよ? わかったな」

「「うーい」」


 冒険者達のやる気のない返事を聞いたギルドマスターは少女の所へと戻ります。


「ちょっと来い」

「なんでー」

「なんでじゃねえ、いいから来い」


 文句を言う少女の襟首をむんずと捕まえると、ずるずると少女を引っ張っていきます。


「はーなーせーよー」

「うるせぇ」

「暴力だー、暴力はんたーい」

「てめーが今その暴力をふるったんだろうがコラ」


 ずるずるとギルドマスターに引き摺られたまま、少女は奥の部屋へと連れていかれました。


「あーらら、お説教コースだなありゃ」

「だな」

「つか誰も助けてやらねーのなあの2人」

「いやお嬢の暴れるトコちょっと見たかったし」

「てめーもいい性格してやがんなあ」

「あいつ等心折れてなきゃいいけどな」

「あれで心折れたらココじゃやってけねぇんじゃね?」


 冒険者ギルドというものは、ギルドが置かれている地方や、集まっている冒険者達によって色々と特色が出ます。また中には冒険者達による決まり事などもあるようですが。どうやらここでは「受付の少女を怒らせるな」というのがその決まり事のひとつのようです。

 少年達は教えて貰えなかったようですが…。

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