とあるギルドの受付嬢 (ある世界でのお話)
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第1話 その受付嬢
大陸の西にある王国、その王国の南に一つの町があります。側に迷宮があるその町は、冒険者の町とも呼ばれ冒険者達で賑わっています。
「ふう、やっと着いたな」
「ああ、冒険者になるならやっぱりこの町だからな」
街道へと繋がる北の門から2人の少年が町へと入ってきました。
「やっぱギルマスが元Aランク冒険者だしな」
「ああ、とっととギルドへ行って登録しようぜ」
冒険者達の間では知られた話ですが、この町の冒険者ギルドのギルドマスターは元Aランクの冒険者です。この国の冒険者ランクはSからFまであり、Aランクの冒険者ともなるとかなりの実力を持った冒険者となります。そのAランクの冒険者だった者がマスターをしているギルドとなると、やはり冒険者を目指す少年達には憧れとなるのでしょう。
少年達は目指すギルドへと着くと、少し緊張しながらギルドの中へと入りました。ギルドの中にいた数人の冒険者らしき人達が少年達へと目をやります。
「やっぱ緊張すんな。まずは受付だよな、どこだ?」
「んー、あそこじゃね?」
「んじゃそこに…っておい。なんで受付にあんな女の子が座ってんだ」
「あ? ほんとだ」
「まあいいや、受付だろ? 可愛い子だしあそこに行こうぜ」
「おう」
ギルドに入ると、正面に受付らしきカウンターがあり、何人かのギルド職員がそこに座っていました。その職員の中に、金色の髪をした小柄な可愛らしい少女が座っています。冒険者ギルドという場所には不釣合いなその少女は、ギルドの中でも特に目立っていました。
「おい、あいつらお嬢んとこに行くみてーだぞ」
「あ、マジだ。いいのかほっといて」
「いいんじゃね。ちと様子みようぜ」
少女のもとへと向かう少年達を見た冒険者達が何か小言で話しています。
「あ、あのー」
「はい、何か御用でしょうか」
声を掛けられた受付の少女は、とてもかわいらしい声で返事をします。
「俺達冒険者の登録をしたいんですけど」
「初登録ですか?」
「そうっす」
「わかりました。ではこちらの用紙にご記入を願います、書ける範囲でかまいませんので。それと字は大丈夫ですか?」
「あ、書けます」
「ではご記入をお願い致します」
冒険者を目指す人の中には読み書きが覚束ない人もいるため、一応少年達に確認をを取った後、少女は用紙とペンを差し出しました。
「(なあ、普通の女の子だよな? なんで受付やってんだ)」
「(知らねーよ)」
少年達は用紙に記入しながらもコソコソと会話をします。少女はそれを特に気にする様子もありません。
「(あ、耳みろよ耳)」
「(あ?)」
「(エルフだよエルフ)」
コソコソと会話を続けながら少女をチラチラと見ます。
「(あーエルフか。見た目の年じゃないってことか)」
「(そうそう。だから受付やってんだよ)」
「(なるほどなあ、だから見た目子供でも出来るって事か)」
その言葉を聴いたとたん、少女は少年の持っていたペンを奪い取り、少年の目の前で両手でへし折りました。
「ねえ、誰が子供?」
少女はその可愛らしい声にドスをきかせながら少年達に詰め寄ります。
「誰が子供なの? これでも貴方達よりは長く生きてきたつもりなんだけどなあ。それにこんな美少女目の前にして子供とか何言ってんの貴方達」
近くにいたギルド職員から「自分で美少女って言った」という声が聞こえますが少女はまったく気にしません。
「それともう一つ、あたしはエルフじゃない、ハーフエルフよハーフエルフ。耳よく見なさい、先が少し丸いでしょ。そのくらい分かりなさいよ、バカなの? あ、バカだっけ?」
「い、いやエルフとか始めてみたし俺ら。てかバカバカ言うなよ、受付が冒険者にそんな口きいていいのかよ」
少女の剣幕に押されていた少年達が言い返します。
「なんで人を子供呼ばわりした貴方達に丁寧な対応しなきゃならないのよ。それに貴方達ってまだ冒険者でもなんでもないでしょ。生意気な口きいてると〆るよ」
「〆るってなんだよ」
「そうだよ、ギルド内での暴力は禁止なんだろう。そ、そのくらい知ってるぞ」
「…へぇ」
少女は椅子に立ち上がると少年達に不敵に笑いかけ、パチンと指を鳴らしました。そのとたん少年達の足元が氷に包まれます。
「ねえ冒険者になりたいんでしょ? ちょうどいいわ、あたしがテストしてあげる」
少年達の足元を覆っていた氷が徐々に上へとあがっていきます。
「ひっ、ちょ、ちょっと待って」
「た、助けて」
少年達の助けに少女は耳も貸しません。
「あっはっはー、泣けっ、喚けっ、そのまま「うるせーぞコラっ!!」
その時受付の奥にあるドアが怒鳴り声とともに開き、スキンヘッドに口ひげを生やした男ががこちらに顔を見せました。
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