20××年 夏休み -16-

 ゴーン、ゴーンという鐘の音が鳴り響く。

 愉快なBGM、花火をお楽しみください的な内容のアナウンスが流れ……

「始まったわ!」

 どどーん! と、何かが爆発でもしたかのような音が聞こえてきて、陽子が子どもみたいに顔をパッと輝かせた。

 一方で俺は、足下が何だかふらついているような気がして、一人首を傾げていた。

 花火って……揺れるくらいすごかったっけ……?

 気のせいか?

「きゃあっ!?」

 ――気のせいじゃなかった!

 二発目が打ち上がったかと思いきや、陽子がすっ転んだ。

 地震でも起きたかのような、激しい横揺れ。

 バランスを失い、倒れそうになっているオッサンを支えてやるが、俺もこけそうだ。

 何が起きているんだ。と、眞姫が目で問いかけてくるが、俺にもわからない。

 それよりも……

「何か焦げ臭くないか!?」

俺は思わず叫んだ。

 火薬の臭い? それにしては何かがおかしい。

「ま、まさか」

 陽子が何かに気がつき、窓のほうへと転びながらも走って行く。

 もたつく手で鍵を外し、勢いよく窓を開ける。

 ――広がっていたのは、地獄のような光景だった。

 ホテルからは、ランドを一望できる。

 そこには、花火を楽しむ人などいなかった。

 突如起きた爆発に、逃げ惑う人々しかいない。

「どうなっているの……」

 目の前でいとも簡単に崩れていくランド。

 陽子は、呆然としていた。

 俺だって何が何やらだ。

「オイ、俺たちも早くここから出ないと、ヤバくねぇか」

 眞姫に俺はそう言ったのだが……

「……その必要はない」

 ――なぜか、オッサンが返事をした。

「これは……彼からの指示だ」

「は? 彼……?」

 彼ってまさか。

「……どういうつもりかしら。私は破壊してほしいなんて、一言も言ってないわ」

 外に目を向けたまま、陽子が静かに言う。

 部屋の真ん中には、いつの間にか黒ずくめのあいつが立っていた。

「どういうつもりも何も、お前のために盗むなど一言も言ってないだろう」

 待ってました!

 俺と眞姫は安堵から、顔を見合わせる。

「日之旗陽子。お前の正体を暴きに来た」

 怪盗フェイクのお出ましだ!

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