20××年 夏休み -8-
「おい、凜王。わかってたんなら黙って見てないで教えてくれよ。おかげで恥かいたじゃねぇか」
「何のことだ?」
帰る途中で文句を言ったが、何もわかっていなさそうだったので諦めた。
「凜王、許してくれ。君に迷惑をかけるつもりはなかったんだ」
そんな俺を眞姫は押しのけ、すたすたと歩く凜王の機嫌を取ろうと必死である。
「――ええい、どいつもこいつもうるさい! そんなことはどうでもいい! さっさと帰って計画立てるんだろ!?」
珍しくお怒りの凜王さん。
俺と眞姫は大人しく「はい」と返事をした。
「あら……三人そろって帰宅?」
古本屋に着くと、優雅にミツバさんがアイスティーを飲みながら、雑誌をめくっていた。
いつ見ても店番をする人の態度ではない。
「次の標的について話し合う」
「次? まさかこの間言っていた遊園地じゃないわよね?」
「そのまさかだ」
嘘でしょ!? と、彼女は叫んだ。
やっぱ無茶っすよね。
言ってやってくださいよ~ミツバさん~
「何で宝石じゃないのよ!?」
そっちかい!
「つまんない! 何てつまらないの! あんたって男は! センスがない!」
「うるさい……」
凜王は鬱陶しそうに顔をしかめる。
この言われよう。
よっぽど宝石がよかったのか。
「ミツバさん。俺が凜王にこの話を持ちかけたんです」
眞姫がぐいっと前に出る。
こいつ、ちゃんと敬語とか話せるんだ。
「眞姫ちゃんが? どうして?」
「実はランドの経営者の娘が、同じクラスで……」
眞姫は一連の流れを彼女に説明した。
すると、みるみるうちに宝石を連呼していたミツバさんが大人しくなっていったではないか。
「そんな子がクラスメイトにいるなんて、やっぱりお金持ち学校はすごいわね!」
一体どこで納得したのかよくわからん。
「面白い発想だとは思っていたのよ。しっかりやんなさい」
こうしてようやく、俺たちはミツバさんから解放されたのだった。
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