俺と恵さん 最終話

95話 ばれる






「お、おい。優に恵さん……」




「あ、父さん、母さん……」




時計を見ると、時間は17時。いつの間にか3時間もたっていた。




どれだけお互いに夢中になっていたのか。それでもまだしたりないくらいなのに。




必死に抑えているが、まだ続きをしたい。もっともっと恵さんが欲しい。




「あなたたち、いつからそんな関係に……」




「ごめんなさいお父さん! 俺ずっと恵さんのことが好きだったんです。だから、ほかの人と付き合うなんて考えれらません! わがままは承知してるけど、恵さんとずっと一緒にいたい!」




「ゆ、優様を許してくださいませ! お見合い相手にご迷惑をおかけするなら、私は優様の前に二度と現れませんから!」




恵さんが珍しく大きな声で話す。そんな声でたんだ。




「嫌だ。恵さんがいないなんてもう考えられない! お父さん、俺を感動してくれてもかまわない」




「なんてことを! 私が出ていきます」




俺と恵さんの押し問答を父さんと母さんはずっと無言で見ていた。何を言われるのだろうか。




「はっはっはっは! やっとか!」


「ええ、今回でもダメだったらどうしようかと思いましたよ」




まさかの笑顔だった。え? やっとって何?




「恵も奥手なんだから。ずっと私にも相談してきませんでしたから」




望さんもいる。いったいなんだ?






「父さん? これはどういうこと?」




「どうもこうも、お前たちが両思いなのは見ていればわかったさ」




「2人とも、お互いにお互いしか見てないもの。好きあってるのなんてすぐにわかったわ」




あきれ顔で見られた、え、ばれてたのか? じゃあ恵さんも知ってたのか?




ふと恵さんを見ると、恵さんも驚いていた。恵さんは気づいていなかったのか……。




「よかったよかった。やらせたくもないお見合い作戦は反対だったが、母さん、君の言うとおりだったな」




「恋愛関係は女性に任せてくださいよ。追い詰められれば、絶対に優は動くと思ったもの」




「恵も求められれば断りませんよ。奥様の作戦は完璧でしたね」




大人3人で盛り上がっているが、こっちの2人は拍子抜けであった。






「え、つまり、恵さんを好きになっても問題ないってこと?」




「だれが問題と言った。お前の好きな人と付き合えばいいだろう」




「で、ですが、家柄のいい人と結婚せねばいけないのでは?」




恵さんが質問する。




「そりゃあ家柄のいいお嫁さんをもらえば、有力な会社とのパイプも作れるし、資金援助ももらえる可能性はある。だが、それは義務ではない。それくらいのハンデを覆す覚悟さえあれば、パートナーは最も相性のいい相手を選ぶべきだ」




「だから、優と恵さんはばっちりだと思うわよ。恵さんは優のフォローに関しては、もう知らないことはないもの。全部任せられるわ」




「私も優様なら安心です。変なことばかり言いますからね」




これは……つまり。




「恵さ……」




俺が言い切る前に、恵さんが俺の胸元に抱き着いてきた。




両手で俺の背中を思い切り抱きしめ、顔を胸につけて。




「恵さん?」




「ゆ、優様……。私は本当に……」




恵さんが泣いていた。こんなに弱弱しく甘えて泣いている恵さんは初めて見た。




「ほら、恵さんを安心させてあげなさい」




父さんにそう言われて俺のすべきことを思い出す。




「恵さん、俺は恵さんとずっと一緒にいたいです。結婚してください」




告白を通り越して、プロポーズした。だが、どうせ同じことである。もう俺のパートナーは恵さんしかいないのだから。




「……はい」












俺と恵さんは俺の高校卒業とともに、結婚した。




でも恵さんの下ネタ好きも変わらないし、俺も大して変わらない。






強いて何かを言うのであれば、『恵さん』が『恵』になり、『優様』が『あなた』になったくらいかな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺と恵さん ポンポヤージュ66 @standwing

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ