俺と恵さん ページ16がよく見えない

54話 迷信




「優様! 私の胸はやわらかいですよ!」




「急になんですか!?」




いつも意味の分からない恵さんだが、今日もおなじみである。




「二の腕と胸の柔らかさは一緒と聞きました! ですが私の胸はもっとやわらかいです!」




「それは迷信ですよ」




恵さんは、けっして筋肉質とは言わないが、身長があって、家事を普段からしているから、体のしまりがいい。




腕に触ったことがあるが、無駄なぜい肉がなかった。ちょっと柔らかかったくらいかな。




「そうですか、誤解があってはいけないので不安でして。優様に手で胸に触ってもらったことはございませんでしたから、優様が間違えていそうなら触っていただこうと思いました」




間違えとけばよかった!




「そうですよね、同じ情報源に、エッチな人は髪が伸びやすいってあったので、私の髪が伸びにくいのですから、世間の人はどのくらいエッチなのかと」




ああ、それは迷信だ。事実だったら、恵さんはロングヘアーであるべきだ。




「ほかにもあったんですか? 全部迷信だと思いますが」




「はい、寝ている人をまたぐと、その人がえらくなれないとありました。ですが、奥様は寝ている旦那様をよく上からまたいでいました。でも旦那様はえらくなりましたから」




聞かなきゃよかった!






55話 体調不良




「ズズッ」




「恵さん、どうしたんですか?」




「だいちょう、体調をちょっと崩しまして:




「大丈夫なんですか?」




「ええ、ちょっとだけ風邪っぽいだけで、だるさも熱もありませんし、今日は早めに寝かさせていただければ。申しわけありませんが、食事だけはつくりましたので」




「大丈夫ですよ、ゆっくり休んでください」




「クシュン!」




恵さんがくしゃみをして、ちょっとだけ鼻から出てしまう。




一瞬だけ見えてしまったが、デリカシーのためにも見なかったことにしよう。




「も、もうしわけないです、鼻から精液が出たみたいになってしまって」




体調不良でも絶好調か!




「本当にやすんでください」




「が、がんしゃします」




これは感謝してるんだ。鼻声なだけ……。




白い液が顔についた状態で、顔射とか言ってはいけない。




「どうてい今日はお役に立てないので、休みます」




到底だな。偶然偶然。








56話 必ず順番通りとはいかないものである。




「恋愛におけるABCは有名ですけど、あの順番は納得がいかないんです」




「ABCですか? キス→体に触れる→行為の順番の奴ですよね」




「ええ、そのあと、DEFになっているそうです、妊娠→結婚→家族です」




「何か変ですかね?」






「はい! 個人的には、BがAより早いとも思えますし、DからEはできちゃった結婚になります。私としては、B→A→C→E→F→Dが妥当な順番だと思います」




「……そうですかね。俺はB→A→E→F→C→Dがいいんですが」




「優様はロマンチストですね。結婚初夜が理想ですか……。結婚と婚約は違いますよ……。我慢できます?」




「Cは流れもありますけど、本当に愛を確かめ合えてるなら、Cを焦らなくてもいいと思うんです」




「やっぱり16歳の優様には余裕がありますよね………。晩婚化も進んでいる世の中では、Cはやはり焦るんだとおもいます。20歳の私でもちょっと不安がありますから」




「恵さんはまだまだ若いですよ」




「ありがとうございます、優様もできる限りは理想を持っていてください。くれぐれも変な順番にならないように……。特に、E→Dとか、B→A→Dとか、周りの人が聞いたら楽しまれるかもしれません」




「そんな面白い人はまずいないと思いますが」






57話 恵さんソング






「1人でも、ふたなり~♪」


「2人でも、竿姉妹♪」


「3回目でも潮吹き♪」


「4つでも、ゴム♪」


「5リットルでも、ローション♪」


「6度目でも、中だし♪」


「7枚でも、ハメどり写真♪」


「8件目でも、キャバクラ♪」


「9回目でも、獣姦♪」


「10歳でも、イチモツ♪」




俺がキッチンの横を通るときに、聞こえてきた歌である。


俺は何も聞いていない。






58話 夢




「はぁ、将来のことが不安です」




恵さんがちょっと黄昏ていた。




「どうしたんです?」




「はい、私にもやりたい夢はあるんです。でも私が叶えるのは難しいと思いまして、むなしい気持ちになりました」




ポーカーフェイスで、美人な恵さんには、けっこうため息を吐きながらうつむいている姿は絵になる。




「優様……?」




それを眺めていたら、恵さんが俺に目を合わせてきた。




いかんいかん、見とれてしまった。心配になって声をかけたのに、俺が心配をかけては。




「恵さんは結構スペックが高いんですし、かなえようと思えば叶うんじゃないですか?」




「いえ……、私の夢は世間に顔向けできるとは言えないので……。私のわがままみたいなものですから」




「わがままでも夢ならいいんじゃないですか?」




「いえ、ご迷惑をかけるわけにはいかないので、我慢します。絶対に無理ですから」




「そんな、儚いことを言わないでください」




「……優様……」




見つめあって、恵さんが少しだけうるっとした目で俺を見てくる。お。珍しくいい雰囲気。




「私の夢をすでに把握されているのですね……」




え、もしかして、恵さん……。俺と同じ気持ちを……。




「私とても暑がりなので、下着を『履かない』という夢があるのですが、外出することも多い私がそのような状態で外に出て、万が一事故がありましたら、押切家に迷惑をおかけしますから、かなわぬ夢です」






期待した俺がバカでした。

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