俺と恵さん 9分我慢できるなら早漏ではない
29話 ストロー
「恵さんはストローを使いませんよね」
ワインはアルコールだから、当たり前だが、ほかのジュースを飲むときもストローは絶対に使わない。
ごくまれに、外に食事に行っても、ストローは使わない。
食事の作法は丁寧で上品なのに、飲み物を飲むときは、グラスを傾けて飲んでいる。
別に下品には見えないが、ストローで吸っているほうが、グラスを持たなくていいし、水滴が垂れたりしないから、より上品に見えるのに。
「私はストローは使いません。奥様も使われていないでしょう」
そういえば、お母さんも使ってなかったな。どうしてなんだろう。
「ストローを使わないことはマナー違反ではありませんし、口をすぼめて飲み物を吸う行為は、口元に皺をつくって、肌の老化の原因になります。私も若くありませんから、お肌のケアはきちんとしておかないといけませんから」
恵さんの肌は実にきれいだが、涙ぐましい努力をしてるんだな……。
他にも顔を枕に押し付けないように、絶対あおむけで寝てたり、首にしわを作らないように、下向きで携帯電話を見たりしない。
特に顔のケアに気を使っているようである。やはり目に留まるところは気になるのか。
「ですが、たった1つ問題があります」
「何ですか?」
「将来的に、フェ○チオをしてあげなければならなかったときに、相手がバキュー○○ェラチオを望まれたときに、吸引力が足りないという不安があるのです」
それはそうなってから考えてくださいと言っておいた。
ちなみ参考までに俺の意見を聞かれたが、俺にはそのフェチはないとも言っておいた。
30話 肉まん
肉まんは実にうまい。
夏でも場所によっては売ってるし、安いので買い食いもしやすい。
学校帰りのコンビニは店長の意向か、夏でも肉まんを置く。
聞くところによると、近くの会社の会社員がよく買うらしい。
どうも社長が暑がりで、無駄にオフィス内が寒いから、温かいものが売れるらしいと、いう話をしているのを聞いた。
「優様、ちょっと作ってみましたので、どうぞ」
そんなある日、恵さんがおやつに肉まんを出してくれた。
「あ、ありがとうございます」
「優様がよく食べられているようなので、手作りしました」
買い食いもいいが、単純に肉まんが好きなので、多めに買って家で食べることもあった。
そういう場合は、恵さんにあらかじめ連絡して、おやつは無しでいいと言っておく。
「いただきます、あ、ピザまんですね」
俺は結構いろいろ買うが、ダントツでピザまんが好きである。マヨも好きだが、ケチャップも大好きなのだ。
それを知ってか、かなりケチャップ多めのピザまんだった。
「おいしいですね。俺好みです」
「優様の好みに合わせて作りました。ケチャップ多めのピザまん。略して、『ケチャマン』です! 今の私と同じ状態です」
それを聞いて俺の租借する口が止まる。
「どうされましたか?」
「ちょっと……、整理していいですか?」
「ええ、私は生理中ですが」
「ああ、やっぱりそういうことですよね」
「これからも言っていただければ、優様の好物をおつくりしますね」
言葉と仕草はとても可愛らしくてうれしかったが、しばらく肉まんを食べるのはやめました。
31話 ピュアな気持ち
「純粋なのって大事だと思います」
「急に何ですか?」
恵さんが買い物をしてきた帰りに、ちょっとテンションが低い状態で帰ってきた。
「実は、牛タンが試食コーナーにありまして、大人気でいろんな人が食べていました」
「それはすごいですね。皆食べたがるでしょう」
牛タンは俺も好きだ。肉の臭みも少ないし、脂も多くなくて、食べやすい。
「ええ、それはそれは皆さまがおいしそうに食べておりました。皆さま笑顔でほおばっておられました。牛とのディープキスを楽しんでおられました」
「えっ……」
それを聞くと、確かにそうではある。
「それを思ったときに、私はなんと汚れているのかと思いました。そこにいらっしゃたのは小さいお子様ばかり。そんなことを思って食べている子供がいるはずもないでしょう」
「たぶん、大人でもそんなことを思う人は少ないと思いますけどね」
大人子供関係ない。そんなことを思う大人が多い社会には、たぶん牛タンという食べ物は流通しない。
しかし、さすがの恵さんも、子供が周りにいると罪悪感を感じるのか。
「私はピュアではありません。透明できれいな心を失いました」
珍しく落ち込んでいる。何かフォローしたほうがいいか。
「優様のカウパー氏腺液のように透明な心を取り戻したいです」
「恵さんはそのままでいいと思いますよ」
というより、戻せない気がする。
32話 平等
『天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず』
俺はこの言葉が好きである。
平等を謳う言葉だが、ただ単に平等を訴えるだけじゃなく、学問を学ばないと差が出るというきちんとした理由も書いている。これは素晴らしいと思う。
父さんもお気に入りで、食事のときによく聞いた覚えがある。
「私も気に入っております」
恵さんが一般教養をきちんと学ぶのも、この言葉が影響している。
「つまり騎乗位は、女子の方が知識が豊富ということですね。人の上に人が乗っていますからね」
余計な知識もたくさんついてしまっているのはどうかと思うが、基本的に物事は、知っていないよりも、知っていることの方がいいことが多い。
恵さんの場合は、それを全部口に出してしまうのが問題なのである。
牛タン事件のことを考えると、外では控えているようだから、別にいいが。
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