俺と恵さん 8歳で性に目覚める
27話A ワイン
「申し訳ありません。私だけいつも飲んでしまいまして」
恵さんは先日20歳になったのでお酒を飲む。
ワインがお気に入りのようで車に乗らない日は毎日飲んでいる。
父さんたちは、仕事の付き合いで飲む程度で、それを知り合いの人も知っているため、あまり貰い物でもらうこともない。
だからこれは恵さんが自分のお金で買っているものであり、わざわざ俺に了解をとらなくても勝手に飲めばいいのだが、ほぼ毎回言ってくる。
「恵さんはお酒強いですよね」
毎回1本新しいワインを開けて飲み切るのだが、ちょっと頬が赤いだけで、話し方もしっかりしている。
下ネタも冷静に言う恵さんが、酔ったのも見てみたいとは思う。俺に気を使って、酔うほどは飲もうとしないから、4年後に一緒に飲めるといいな。
「どうかされましたか?」
俺が恵さんが飲んでいる姿を見て、手が動いていなかったので心配されてしまった。
「い、いえ。俺も早く飲めるようになるといいと思っただけです。4年たてば恵さんと一緒に飲めますからね」
「そうですね……。楽しみにしておきます……」
なんとなく恵さんは嬉しそうだった。父さんたちはお酒飲まないから、なんだかんだ1人で飲むのはさみしいのだろう。
「もしよろしければ、4年後飲める熟成ワインを旦那様に頼んでおきましょうか? ちょっと私では購入できませんので」
「ワインは寝かせれば美味しくなるんじゃないんですか?」
「いえ、それは本当に高級なワインだけです。あとはすぐ飲んでしまったほうがいいです。私の飲んでるワインは1000円もしないのがほとんどです」
「そうなんですか」
「女子も同じです。レベルの高い女子は年齢を重ねても、より熟成されていきます。ですが、私のように、安い女はきっとあと数年もすれば、味が落ちてしまいます」
「いいえ、そんなことありませんよ。恵さんは十分高級ワインですよ」
それはいつもの恵さんの冗談に聞こえたが、なぜかすぐに突っ込んでしまった。
「ふふ、ありがとうございます。今日のワインは少し強かったみたいです。ちょっと失礼しますね」
軽く会釈して、恵さんは俺から離れていった。
うわ、恥ずかしい。なにかっこつけたこと言ってんだろ。
27話B 恵サイド
「優様……、4年後も私を傍においてくださるのですね……」
私の飲んだワインはよく飲みなれているワイン。酔うほどではない。でも体はとても熱かったのです。
あんな笑顔で、私とお酒を飲むことを楽しみにしてくださるなんて……。
優様は素敵な方ですから、たまに学校に顔を出しに行くと女子の方にもお友達がいらっしゃるのはよく拝見します。
こちらは邪魔をしているつもりではありません。優様の相手は、おそらく旦那様が選んだ方との縁談になります。
ですから、ちょっとだけ釘をさしています。優様を好きになってもらっては困るので……。
というのは建前で、私がちょっとやきもちを焼いているだけです。
優様を育てたのは私です。ですから、ある程度は私も優様の相手を選り好みする権利はあると思います。
それはそれとして、ちょっと優様が言ってくれた言葉がうれしすぎて、冗談めいて、ワインと自分をたとえてみました。
そしたら、またほめてくれて……。うれしすぎますよ……。嘘をついて部屋に逃げ込まなかったら、とんでもなくだらしない顔を見せるところでした。
ありがとうございます優様。一緒にいられる今を大切にさせていただきます。
28話 チキュウ
『地球を守っていきましょう!』
テレビでもポスターでも本でもよく聞くワードである。
だが、俺はこの考えかたはあまり好きではない。
「どうかされましたか?」
俺が難しい顔をしていたので、恵さんが心配そうな顔をする。
「いえ、地球の保護について考えていただけです」
「えっ」
ずいぶん意外そうな顔をしてきたな。俺がこういうことを考えるのが変なのかな。
「正直、チキュウを保護しようなんて、考え方が間違ってますね」
「ええ、それは同感です。チキュウは保護してくれているんですよね」
「恵さんもそう思いますか」
俺も同感だ。地球を俺たちが守ろうなんて考え方がうぬぼれている。
「正直、チキュウを巻き込んで絶滅しても、全宇宙から見れば、大した問題じゃありませんよね」
「ずいぶん大きな話ですね。もちろん全宇宙から見れば大したことではないと思いますが」
「結局チキュウの問題っていうのは、俺たち人類がいかに長く生きていけるかという、俺たちのセイシの問題なんですよね」
「ええ、優様には、セイシのことだけ考えていただければいいです。私にはセイシのことはわかりませんが、チキュウのことならお任せください。結構自信あります」
「恵さんはチキュウが良ければ、セイシについては考えないんですか?」
「セイシは興味はあるんですが、私にはどうしようもありませんから……」
「そうですね。セイシのこともチキュウのことも、俺たちがみんなで考えていかないといけませんね」
この時の会話がかみ合っているようでかみ合っていなかったことがわかるのは、もう1度この話をすることになった1週間後であった。
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