俺と恵さん 2つある女性の山

3話 文明の利器




「優様、本日はお迎えに上がりますので、裏門でお待ちください」




恵さんは自分の車を持っていて、天気が悪い日は時々迎えに来てくれる。




自分の足で動くのが好きらしく、天気がいい日は車に乗らないが、車に乗る場合は電話であらかじめ連絡をくれる。




基本的には電話を使うのはこのパターンだけで、たいてい俺が家にいる時間は恵さんは家にいてくれるし、緊急の要件でなければラインでもいい。




そう思っていたとある日、電話を見ると、恵さんからの着信があった。




「ん? どうしたんだろう?」




今日は天気も晴れで、よほどの用事はないはずである。




気になって電話をかけてみる。




「もしもし? 恵さんどうしたんですか?」




「はぁ、はぁ…………優様」




電話から聞こえてきたのは、苦しそうな恵さんの声だった。




「な、何かあったんですか?」




「はぁ……、はぁ……」




特に何も言わない様子に体調不良にでもなっているのかと思い心配になった。




(恵さん……)




今家にいるのは恵さんだけ。それに普段ポーカーフェイスな彼女は調子が悪くても言い出さないだろう。




それに朝気づけなかった自分を反省しながら、家までの道を急いだ。




「恵さん、大丈夫ですか?」




その間も、心配で電話をし続ける。




「はぁ……、もう……、だめです……」




「恵さん! 頑張ってください!」




そして電話で励ましながら、家に到着する。




「恵さん! 恵さん!」




家に着いたが、恵さんの部屋はかぎが掛かっていて開かない。




「ゆ、優様、優様のお部屋に入ってください……」




電話口から恵さんの指示がある。俺の部屋に薬でもあるのか。




「は、入りましたよ!」




「そ、それで、ベッドの上に座っていただいて……」




「はい」




「ズボンを下して、いつものように自慰をしてください!」




「はい、わかりましたって、何でですか!」




勢いでズボンのベルトを外しかけたが、我に返ってやめる。




「はぁ……。満足しました……」




「何してんですか?」




苦しそうな声は、いつの間にか満足げな声になっていた。




「はい、ちょっとオナニーをしていたのですが、物足りなくて……。優様の声が欲しくなりまして……。ですが私だけ気持ちよくなるのは申し訳ないので、テレホンセックスを体験していただこうかと思いまして……」




途中から俺は話を聞いていなかった。面倒くさくなったので、その日俺は恵さんと一言も口を聞かなかった。






4話 アンパン




「さ、昨日は申し訳ありませんでした。どうかしておりました」




さすがに1日無視していると、反省したのかしおらしくなっていた。




「まったく。心配したんですよ。おふざけは俺が笑って許せる段階までにお願いします」




「はい。では朝食をどうぞ」




今日の朝はパンである。




恵さんの作るごはんはおいしいが、俺はパンも好きである。




はじめは市販のものを買っていたが、恵さんはパンも作れる。さすがである。




「アンパンを作ってみました。よい餡子が手に入ったので」




アンパンは人気のあるパンとは言えないが、恵さんが作ればおいしいに決まっている。




「アン!」




パァン!




「です。どうぞ」




恵さんが喘ぎ声のような声をあげて、自分のお尻を叩いて、急に『です。どうぞ』と言い出した。




「何してるんですか?」




「アンパンって言っただけです」




「もう1回いいですか?」




「あぁん」




パァアン!




「ですが?」




「ですが? じゃないですよ」




「ちょっと叩きすぎて気持ちよくなって、私のまんっが反応してしまいました」




「何を言ってるんですか?」




「あぁん!」




パァン。




「まんっ」




年上の女性だが、グーで殴った。いろいろ大切なものに喧嘩を売った気がするためである。






5話 確かな筋からの情報です




「旦那様が、大きい仕事を成功させたそうです!」




「本当ですか?」




「確かな筋からの情報です」






「今年の梅雨は雨が少ないそうです」




「本当ですか?」




「確かな筋からの情報です」








「優様は早漏ですね」




「なぜそう思うんです?」




「優様の裏筋からの情報です」






「最近太った気がします」




「なぜですか?」




「私の筋からの情報です」








6話 ヨーグルト




「飲むヨーグルトはおいしいですね」




俺は飲むヨーグルトが好きである。朝寝ぼけていても楽に飲めるし、のどもそこそこ潤うので、楽だからである。




「私も好きなんですけど……」




恵さんが少し元気がなさそうである。




「どうしたんですか?」




恵さんは朝が弱いというわけではない。だがヨーグルトを目の前にすると少し食事のペースが落ちる。




「この飲むヨーグルトって、見た感じは精子と変わらないと思うんです。もしかしたら誰かいたずらで入れてないかと思うとちょっと心配で、いつも慎重に飲んでます」




くだらなさ過ぎて、突っ込む気にもならなかった。




「優様! なぜですか?」




その日は何事もなかったのだが、そのあとしばらく経って急に朝注意された。




「な、何ですか?」




「ちゃんと前振りしたんですから、私の飲んでいる飲むヨーグルトに、優様のヨーグルトを入れるチャンスだったでしょう!」




「何を言ってるんですか?」




俺たちの飲むヨーグルトは、500ミリリットル入りの紙パックタイプで、俺は1回で飲むが、恵さんは2回に分けて飲む。だから、恵さんの飲んでいるのがどれかはわかるようになっている。




「……それどころか、私のさしてあるストローを吸った形跡すらないなんて……。それでも16歳の男の子ですか!」




しばらく恵さんは、飲むヨーグルトを飲むのは禁止にした。




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