俺と恵さん 1度目だから初めてです
1話 入学式
「申し訳ありませんでした。今日は優様の晴れ舞台でしたのに、お1人にしてしまって」
入学式を終えて、家に戻ると恵さんがいきなり頭を下げていた。
「ど、どうしたんですか?」
俺は困惑する。
恵さんは艶やかな黒髪ショートヘアーが、古き良き日本人を示すかのように美しく、ややツリ気味の目は大きく澄んでいて、メイド服にしては短めのスカートから見える足は細いが肉感のある白い太ももがあらわになっている。
スタイルも悪くなく、とても大きいというわけではないが、メイド服の上からでもわかるほどには胸もある。
そんな人にいきなり覚えもないのに頭を下げられては驚くのも無理はないだろう。
「今日は優様の晴れ舞台を写真に収めねばいけませんでしたのに、まさかの重い日が当たってしまって、長時間立つことができなくて……」
「本当に大丈夫ですから!」
「優様は緊張でずっと立ちっぱなしでお疲れだったと思いますのに……」
「ちょっと目線がおかしいですね」
頭を下げているので顔の向きはやや斜め下になっているのだが、目線が明らかに俺の股間になっている。
「本当に申し訳ありませんでした。罰として1週間自慰を禁止します!」
「自由にしてくれればいいんで! 本当に好きにしてください」
恵さんはとても優秀なメイドだが、若いころからとても性に関することに興味が強かった。
父さんや母さんの前ではできるだけ控えているようだが、俺の前では全開である。
まぁそれを込みにしても、面白いから別にいいんだけど。
2話 友人を呼びづらい家
「押切君の家ってメイドさんがいるくらい大きい家なんだって?」
入学してしばらく経つと、俺の家のことを知って話しかけてくるクラスメイトも現れた。
「大した家じゃない。メイドはいるけど」
これは本当である。5人しかすまない家を豪邸にしても、単純に掃除が面倒なだけである。
代わりにいろいろなところに遠出するので、小さい別荘がたくさんあるのが押切家の形である。
「でもメイドさんがいるってすごいよね~」
とは言ってもおつきのメイドがいるというのはやはりインパクトが大きいようで興味は尽きないようである。
まぁそのメイドが1番面白いんだが。
「そんなにすごい豪邸ってわけじゃないぜ」
横から声をかけてきたのは、菊井という男子生徒。
中学時代から付き合いのある友人である。
あまり俺の家柄とかを気にしない気さくな男である。
彼と仲が良くなったのは、恵さんが関係している。
中学時代に菊井を家に呼んだ際に、恵さんが好き放題したのである。
~3年前~
「ただいま」
「おかえりなさいませ、優様、そちらの方は?」
「友達の菊井です」
「菊門様ですか?」
「き・く・いです」
「失礼したしました。それではご案内いたします」
17歳の彼女は相変わらずの暴走っぷりで、いきなり初対面の13歳に下ネタをはいていた。
「すげえな。本物のメイドさんで、しかもあんなに若くて、美人なんてうらやましい」
先ほどの言葉の意味を分かっているのかいないのか、目の前のメイドに興味津々であった。
「どうぞ、フライドポテトでございます。ちょうど15時なのでおやつとして作りました」
「あ、ありがとうございます」
菊井はそこそこマイペースな人間だが、緊張していた。
13歳にとって17歳と言えば、高校2年生にあたるのでかなりお姉さんであり、優みたいに普段からあっていなければ、美人である彼女を目の前にして、落ち着ける男子はいないのである。
「ソースもお好きなものをお選びください。2種類ございます。1つはケチャップソース。もう1つは、マヨネーズがお好きな優様のために作った特製ソースでございます」
「こっち旨そうだな。俺は特製ソースで食べるぜ!」
菊井はマヨネーズソースベースのソースでポテトを食べる。
「お、うめえ」
「恵さんおいしいですね。名前はなんていうんです?」
恵さんは料理が上手で、よくお手製の料理を作ってくれていた。
「はい、優様の専用スペシャルマヨネーズソース。通称優様のスペルマソースです!」
「ブッ!」
ポテトを思いきり吐き出してしまった。
「ネーミングどうなってるんですか!」
「ご心配なく。きちんと優様のあれと粘度も色も合わせてあります。優様のあれが薄いと思われる心配はございません」
「そんな心配はしてません! 片づけてください! というか、いつ見たんですか!」
ソースを恵さんに持たせて、キッチンに戻させる。
そして机を見ると、菊井が机に突っ伏していた。
「だ、大丈夫か?」
食事中の問題発言に気持ちが悪くなったのかと心配した。
「あ、あの人面白すぎだろう。あんな美人なのに、発言がひどすぎるだろう」
思ったよりもはまっていた。そして、菊井とはかなり仲良くなったのである。
ただし、あのネーミングは許さない。百歩譲って許すとしても現物に合わせるとかさすがにつらい。
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