第8話 今日だけは・・・
アリスが来てから、一週間が経とうとしている。
アリスが言うには、今日が期限のはずだが・・・
「アリス」
「何?お兄ちゃん」
「いや、何でも・・・」
さすがに、口に出せなかった。
「お兄ちゃんの、言いたいことはわかるよ。
お兄ちゃんの思っている通り、私は今日の24時に帰ります」
「えっ」
「神様が、順延は認めてくれなかった・・・残念だけどね・・・」
出会いあれば別れありというが、さすがにショックは大きかった。
アリスが向こうで、幸せに生活しているのはわかった。
祖父母にも可愛がってもらっているので、安心した。
「お兄ちゃん、最後にわがままお願いしていい?」
「何だ、何でもいいぞ」
「私、お兄ちゃんとデートしたい。」
「デート?」
「兄と妹ではなく、男と女として・・・だめ?」
「わかった。いいよ」
「ありがとう。お兄ちゃん」
アリスは、出来る限りのおしゃれをしてきた。
髪型といい、服装といい、僕の好みに合わせてくれた。
玄関を出ると、アリスが腕をからませてきた。
「えっ?」
「恋人はこうするものなんでしょ?秋隆くん」
「秋隆くん?」
「今日は、ひとりの男と、女だよ」
その日は、アリスとのデートを楽しんだ。
デートといっても、映画とか遊園地ではない。
いわゆる、ウインドウショッピング。
アリスはとても、楽しそうだった。
僕も、この時間が少しでも長く続く事を願った。
でも・・・・
時間だけは、いかなる時も平等に流れる。
晩御飯までに、家に帰らないと・・・
今日はいつもよりも、ご馳走を作ってやるか。
「お兄ちゃん」
「えっ」
「今日は私が、手料理をふるまうね」
「でも」
家に帰った瞬間に、兄妹に戻った。
今更だが・・・
ここは、お言葉に甘える事にした。
でも、アリスは悪戦苦闘している。
初めてなので仕方ないが、ここは任せる事にした。
そして、アリスの料理が並んだ。
「さあ、食べてお兄ちゃん」
アリスは微笑んでいる。
「いただきます」
僕は頂くことにした。
お世辞にも美味しいとは言えない。
でも、なぜだかとても美味かった。
アリスが作ったのは、僕の好物ばかりだ。
それだけで、嬉しかった。
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