第3話  兄として出来る事

「で、アリス」

「何?お兄ちゃん」

「君は、この世界での常識はわかるの?」

アリスはこの世に生を受けていない。

なので、この世の常識を知らないのは、当たり前だ。


「大丈夫だよ、お兄ちゃん」

「えっ」

「全部、勉強してきたから」

「そっか」

安心していいのか?


「もし、分からないことがあったら、お兄ちゃんが、教えてくれるでしょ?」

「ああ」

「ねえ、お兄ちゃん」

「何?」

「私、お兄ちゃんの手料理が食べたい」

「いいけど、たいしたもの出来ないぞ」

「嘘」

「えっ」

僕は驚いた。何故嘘だと言える。


「私、向こうから見てたよ。お兄ちゃんの料理はすごく美味いって。

男にしておくにはもったいないってt」

「そうか、わかった。美味いもん食わせてやるからな」

僕は腕によりをかけて手料理をふるまった。


レトルトやインスタントは、一切なしだ。

スーパーのお惣菜もない。


テーブルに広げた。

「うわー美味しそう。食べていいの?」

「ああ。冷めないうちに」

「いただきます」

アリスは、美味しそうに食べていた。


僕はそれを眺める。

(本当に、この子がちゃんと育っていたら、こうなっていたのかな)

そんな事を考える。


ジリリリリリ


その時電話がなった。

「あっ出るよ」

「いいよ。お兄ちゃん。私のほうが近いから」

アリスは、止める間もなく電話に出た。


「はい、西田です。

えっ、間違いないですよ。

あっ、秋隆くんのお父さんですか?

初めまして、私は秋隆くんのお友達の、江家(えや)アリスと言います。

いつも、秋隆くんには、お世話になってます。


いえいえ、私がおせっかいをしたまでですので・・・


そんな、秋隆くんはとても、紳士です。


今後とも、よろしくお願いします。

では、失礼します。


秋隆くんに、変わりますね。

えっ、いいんですか?


分かりました。では、お仕事お疲れ様です」


僕は、ボー然とした。


「テレフォンマナーがすごいね」

「でしょ?お兄ちゃん」

「そんな事まで、学んできたんだ」

(ずっと、そばにいたんだよ、お兄ちゃん)


アリスが小声でつぶやいた言葉は、耳には届かなかった。


「親父、何だって?」

「愚息をよろしくだって」

「そう」


僕は明日からのアリスの事を考えていた。

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