第2話 アリスという名の女の子


「君は本当にアリスなのか?妹の」

「そうだよ。お兄ちゃん。DNA鑑定してもらう」

妹は、僕が幼い頃に、死産した。

それは、間違いない。

アリスは、僕は最近になり、勝手につけた名前だ。


「そうそう。ありがとう。お兄ちゃん。素敵な名前をつけてくれて」

「どうも」

少女は、にっこりとほほ笑む。


「じゃあ、君は僕のこと知ってるの?」

「もちろんよ。当てようか?」

「ああ」

外れるだろう。間違いなく・・・


「西田秋隆(にしだ あきたか)。高校3年生。

4月26日生まれ。O型。

身長167センチ、体重50キロ

趣味は・・・」

「ああ、もういいよ。全部正解だ」

「びっくりした?」

「ああ」

でもまだ、わからない・・・ドッキリか?


「パパとママと、もうひとりのお兄ちゃんの事もわかるよ」

「えっ」

「パパの名前は、一(はじめ)。50歳。仕事は自然保護員で、現在は海外赴任。

7月9日生まれのA型で、趣味はゴルフ・・・」

正解だ。


「ママは智美。50歳。専業主婦。パパとはお見合い結婚。

6月25日生まれの、O型で、趣味は手芸・・・」

正解だ。


「もうひとりのお兄ちゃんは、夏雄。高校1年で今は寮生活。

8月18日生まれのA型で、秋隆おにいちゃんよりも、やや大きめ」

正解だ。


「信じてくれた?お兄ちゃん」

不安は残るが、信じるしかないようだ。


「で、アリスはどうして、ここに来たの?」

「妹が家に帰ってきたら悪いの?」

「そうじゃなくて、もう単刀直入に言うと、どうして僕の眼の前に存在しているの?」

傷つくかもしれないが、もう率直に訊くしかない。


「実はね。神様に頼んだの・・・」

「えっ?」

「私も少しでいいので、家族の中にいたいって・・・」

「うん」

「そしたら、OKしてくれたの。私嬉しかった」

少女は微笑む。


「なら、僕一人の時じゃなく、全員がいる時に来ればいいのに」

「それじゃあ、混乱するし、それに・・・」

「それに?」

「秋隆お兄ちゃんだけだもん、いつも会いに来てくれるの・・・」

「そっか」

僕は、息をついた。


「で、その容姿は?」

「お兄ちゃんの好みだよ。」

「えっ」

「ママは髪の長い女の子は嫌いみたいだけど、お兄ちゃんは好きでしょ?」

「うん」

「じゃあ、お兄ちゃん。しばらくよろしくね」

少女・・・いや、アリスは手を握ってきた。


とても・・・温かかった・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る